第5話
戦闘も本格化してきました。
第5話
私が、今の状況に辟易している間にも自衛隊による火力集中は続いていた。
されど、その一切の攻撃をものともしないエグゼイーターを見た現場の自衛官達は深い絶望に打ちひしがれていた。
「敵、依然健在!損傷は見受けられず‼︎」
「くそぅ、マジでバケモノかよ...」
「噂に聞く、開発中の新兵器とやらは助けに来てくれないのかよぅ...」
「バカッ、有るか無いかも分からん噂を頼りに戦ってんじゃねぇよ!」
現場の自衛官より、悲鳴にも報告と共にあまりの事態にオープンチャンネルで交わされる希望的観測による現実逃避迄もが通信を流れ始め、情報が錯綜を始める。
既に周囲の人工物の悉くは瓦礫に成れ果て、それでもなお何事も無かったかの如く悠然と佇むジェノサイダーを前に、司令部は頭を抱えながらも作戦を次の段階へと進めた。
航空機による爆撃、地上部隊による砲撃等による一斉攻撃だ。
我の打撃力不足をただひたすらに手数で押し、敵の自由を一切許さない作戦であった。
しかし、元よりその総戦力に若干よ不足を感じられる各種自衛隊。
この様な作戦を取れば、近い将来確実に打つ手が無くなるのは目に見えていた。
その為、消耗戦ではあるが早期にこの脅威を排除する必要があると言う状態に今の彼らは晒されていた。
現在、国内の某所では近い将来現れると予測されていたこのジェノサイダー、特にエグゼイーターと呼ばれるタイプ脅威に対抗する新兵器の開発を数年前より行なっていると言う噂は司令部の面々も聞いていたが、この段階になっても一向にそれらの音沙汰がないのを見るにあくまで噂は噂に過ぎなかったのだろう。
いや、もしかしたら存在はするが未だに出撃させる決断出来ていないだけと言う可能性もあるが、その噂の真否を知るであろう統合幕僚長や総理大臣の口は固く閉ざされたままであった。
そんな悲嘆に満ちた空気の中、自衛隊による新たな攻撃が始まった。
ひたすらに遠距離より我の火力をぶつけ続けるだけという作戦とは呼べない様な物ではあるが、それでも世界各地の戦闘で少なくない効果を見せた効果的な戦術の一つで有るのもまた事実であった。
至らぬ点と言えばただ一つ、我の手数の少なさである、その一点だけでも、彼らはこの戦いにおいて圧倒的に不利であるとも言えるのだろう。
そんな絶望感の最中敵に動きがあった。
それは一瞬の身震いより始まった。
そして、新たな局面の始まりであり、この戦いの決着を予感させるものでもあった。
・・・
私の願いはは単純明快、今この状況の終わりである。
そして、それを行う為の力も選択肢も、今目の前にあるのであれば、それを使わない者はきっと...いや、決していないのだろう。
そして私もまたその選択を選ぶ一人なのである。
故に私は選択し、望む通りの結果を眼前に繰り広げた。
自らの身体の周囲に、見えない何かが高速で動き回るのを感じる。
それは、自分の身体の周囲を高速で動き回りその加速を強めていく。
次第にそれが、なんらかのエネルギーだという事を私は何故だか理解できた。
更にそのエネルギーは、膨大でしかも無数に自分の身体の周囲を覆い、更に速度をつけて回っていた。
そしてとある速度に到達したエネルギー塊達は、目に見える形として砲身の様な物を私の周りの何も無い筈の空中作り出した。
既に見慣れ始めた爆炎に包まれた背の高い視界内、そこに映る表示には、新たに
"80口径500㎜超電磁砲"
と出ている。
そして、その次に現れたのは文字通り私の視界を埋め尽くすかのように迫り来る大量のミサイル、砲弾等の害意であった。
私はそれら迫り来る脅威全てに強い嫌悪感と拒絶の意を示すと、虚空よりその砲身のみを出した私の電磁砲群はその全てから砲弾を撃ち出す。
放たれた数多の砲弾は、私に迫る全ての害意を見事に擊ち落とした。
そして更に、視界内表示されるのは私に強い害意、いや悪意を向けてくる有象無象の敵の数々が小さなモニターとなって同じ様に視界を覆い尽くす。
それを見て、これを潰せば私はこの悪夢より解放されるのではないかと感じた。
しかし、今の武器では地に這う敵ににしか私の意思が届かず、空を舞う敵を静かにする事は出来そうになかった。
もっと遠くの敵を殺せる強い武器が欲しい。
もっと多く殺せる手段が必要だ。
そう強く願うと幾つかの砲身は虚空へと消え、再びエネルギー塊が私の周りを蠢く。
そうして姿を見せたのは、私の願いを叶える事が出来る、新たな武器であった。
途中で出て来る固有名詞、「我」は自衛官全体を指し示しています。