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正義のHEEL  作者: include
選ばれた、始まり
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第3話

エグゼイーターの初登場です。

第3話


私が彼女に続く様に避難所へと駆け、避難所まであともう100メートルにまで迫った時、突如なんの前触れもなく空が歪み辺り一面が闇に覆われた。


そして、一息置いたその時、虚空より何かが現れ私たちの頭上に降り注ぐ、そして辺りを一掃したのちに現れたのは巨大な何かである。


いや、私は、私たちはそれがなんなのかを知っている。


その姿は赤黒く光沢に包まれており、両肩の間に人間ならば存在する筈である頭は存在しない。


ここ数年でひどく見慣れる事となったその姿は、間違いなく我々人類の天敵であり、捕食者である選ばれしもの、


「エグゼイーター」であった。


先程の降り注いだ攻撃より、奇跡的に生き残った人々はそれを見上げ、何も出来ずに、ただ見上げているだけであった。


そして避難所の扉は、未だ避難する事が出来ていない私たちの事を尊い犠牲だと言わんばかりに閉められ、私たちはこの先の運命を知り絶望を抱く、



深く深く深く深く深く深く深く深く深く深く深く深く深く深く深く深く深く深く深く深く



ただ、ただ黒い暗い冷たい何が心を支配する。

周りに立つ人々は泣き、喚き、逃げ惑う。


私のそばに立つ彼女もまた、その例外ではなく、先程私を心配してくれた優しさなど端からなかったかの様に顔を歪め、当てもない何処かへと走り出す。


するとエグゼイーターは正面を私のいる方向に向けながら大地に足を下ろした。着地地点付近にいた人々がどうなったかは伝える必要もない。


地に足を着いたエグゼイーターは、唐突に腕を伸ばし、何かに向けて右の手を差し出した。

残念ながら、その手の先にあるものを私は見る事が出来なかった。


何故ならばその先にあるものとは、


この私自身なのであった。


それは私の前に手を止めた。

まるで私に何かを迫る様な動きだ。


その手は、何処かのアニメの様に手のひらを上に向け私に乗れと催促しているのでは無く、私の左側の地面に縦に手を降ろした。


それはまるで"何か親しいものに握手を求めるかのごとく"の様にも見え、または"目の前にいる貧弱な生物を戯れに握りつぶそうとしている"様にも見えた。


私はそれの手に包まれ、左の半身を暗闇に右の半身を先の攻撃で爆発した様々な残滓に照らされていた。


人は死ぬ直前に走馬灯と言うものを見るらしい。


だが今の私の脳内を支配するのは楽しかった過去の思い出では無く父と母の顔、私の周りにいた様々な人々の顔、

顔、


顔、顔顔顔顔


顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔


顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔


顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔


そう、ひたすら顔であった。


今まで、私の人生でなんらかの関わりがあったであろう人々の顔が脳裏を流れる。

見知った顔から、誰のものか思い出せない顔まで、いくつもの顔が流れ去る。


そしてその顔は全て"笑っていた"


全て私に対して笑いかけていた。

私が行ってきた様々な事前活動において助けられてきた人々でなのだろう。


皆が私に対し笑顔で微笑んでいた。


・・・

・・・・

・・・・・



「何故、お前たちは幸せなんだ」



ふと声が出た。誰に聞かせるつもりがあったわけでもない、だが自然と声が出た。



「貴様たちの幸せは何で得ている」



声が続く



「貴様たちは自らの手でその幸せを得ているのか」

「貴様たちの幸せは誰から奪い取ったものではないのか」


何故だろうか、言葉が止まらない。止められない、止めるつもりもない。


「誰かの犠牲の元に幸せを得てきたのでないのか」

「それなのに何故笑っていられる」

「その幸せで何故誰も助けない」

「何故自らの幸せで満足している」


そうだ、何故誰も自らの力で幸せにならない。


何故、他者の犠牲で幸せを得に行く。


どうしてその幸せで誰かを助けない


その幸せを維持するためにさらに他者を犠牲にする。


何故その幸せの犠牲に目をそらし続ける。



「「どうして誰も俺を助けない...」」

どうして、

どうして、

どうしte

どusit...

d...

...




「もう、たくさんだ」




そしてわたしの全身が影に覆われた。



辺りには重く響く音と共に、エグゼイーターの右手が力強く握り閉められた。

その右手の中に一人の人間が居たことなど、誰も見ていなかった。


エグゼイーターがその場で立ち上がる。空には突き抜ける様な青と、そこにいくつもの飛行機雲がこちらへ向かって伸びていた。


人々は皆、私の足元で最期の時まで必死に生きようと逃げ惑っている。


私...?


そう、これは私が見ている光景だった。


私は今、地上高50メートル近くの目線でこの世界を見渡していた。

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