第12話
第12話
静寂の中にありながらも不気味な存在感を持つジェノサイダーは、何をするでも無くそこに立ち尽くしている様に見えた。
そんな静寂を、平穏を、破る轟音と閃光が辺りを染め上げる。
付近の基地よりスクランブルで上がった作戦機による一撃であった。
一斉に放たれた多数のミサイルは、寸分の違いも無くジェノサイダーに向かって行き、一切の例外なく展開したフィールドによって迎撃された。
しかし、そこから休む間も無くもう一撃が加えられる。
しかし、またも迎撃される。
一度に放たれる数はたいして多くは無いが、代わりに休む事無く五月雨式に着弾するそれが、何を目的としているのかは想像に難くなかった。
そうして稼がれた時間により、全ての準備が整う...
空には無数の作戦機、大地には鋼鉄の獣が息を潜める。
それは、嵐の前の静けさを感じさせた。
『周辺戦力の展開完了‼︎ これより、作戦を第二段階に移行する‼︎』
無線機より声が届く。
それを合図にその場全ての兵器が雄叫びを挙げる。
待ち望んだその時、恐れていたその時、成さねばならないその時の訪れである。
空では、作戦機による対ロ攻撃(対ロボット攻撃、この場合は対ジェノサイダー攻撃を示す)が開始され、大地では簡素に隠匿された陣地より砲撃が開始される。
巧妙に計算されたそれらは、全てが同時に弾着する。
巨大な影が爆炎に包まれる。
(この攻撃も大半が迎撃されているだろうな...)
遠くに見える弾着点を見ながら私は、そんな悲観にも似た感想を持ってしまい、それを振り払うためにも軽く頭を振る。
そこに敬礼と共に報告が来る。
「岡元准尉‼︎上空の作戦機、並び特科による攻撃が開始されました‼︎」
「了解、こちらも目視で確認した。では、これより我々も所定の通り行動を開始しましょう。」
指示を出し、全体に行き渡るやつ否や、周りを囲む車両より聞こえていたエンジン音がより大きく唸りをあげ始める。
その音は、こちらを急かすかの様な、その指示を心待ちにしているかの様に感じられた。
全車の行動準備完了の報告を受け、覚悟を決める。
息を一つ付き、マイクボタンを入れ、渾身の力を込めてその言葉を放つ。
「全車、前進‼︎」
言うが早いか、エンジンの唸りを高らかに大地を揺らして我々機甲師団は行動を開始する。