第9話
第9話
まだ僅かに残る不快感と共に、静かに部屋に戻る。
風呂で時間を使いすぎてしまったのか、残念ながら中にいる人間達は活動を始めていた。
部屋に戻った私を3人は、驚愕に満ちた表情で出迎える。
一瞬の睨み合いののち、3人の1人...松本が声をかけてくる。
「お、おはようございます。目が覚めたら姿が見えなかったので置いていかれたのではないかと心配してしまいましたよ。
朝風呂でしたか、良いですね。」
「実際に置いていくつもりだったけどな...」
不快感もそのままに声が出る。
その言葉一瞬身を固める男達。
そんな様子も気にせず荷物の元に私は向かい、
「着替える...」
一言だけ告げ、障子で彼らとの間に壁を作る。
・・・
その後は最悪であった。
お互いに一切の会話もなく、ただ淡々と行動をするだけだ。
それだけならまだ良い。
今尚も彼らは私の後をついて来ている。
バイクのサイドミラーから後ろの様子を伺う。
無線で何かを話しているらしく、時折互いの視線を合わせたりハンドサインを送りあったりしている。
(ここでも仲間はずれか)
軋む音がする。
折角の旅行、何故私はこんな気分にさせられているのか...
放っておいてくれれば良いものを、何故彼ら必要に私の後をついてくるのか...
昨日まであんなに心地よく感じていた風は、体の芯までを冷やしていくようだ。
目を奪われる様な壮大な景色は、再び空っぽになりつつある心の様に代わり映えなく通り過ぎていく。
美しかった世界が再び私を否定していく。
それは、私が何者であるのかを忘れさせないかの様だった。
結局、あの後は何処にも寄る気にはなれず一日中バイクを走らせていた。
こうしていれば、最後には1人になれるだろうという期待もあったが、それも意味ない事であったとサイドミラーが告げている。
給油以外、一切止まる事なく走り続けた結果、日も落ちきり暗闇が支配して尚、何処へともなく走り続ける4人の姿がそこにはあった。
そんな状況を変えたのは、私自身では無く追従を続けていた3人の方であった。
彼ら突然速度を上げると、走行中の私のを囲う様に走り始め終いには私を無理やり停車させるのだった。
このまま縁を切ってやろうと考え、乱暴にバイクから降り顔を向け文句を言おうとした瞬間、私は地面に倒れ込んだ。
正確には、"押し倒された"だ
私の上には3人の一人でありリーダー格らしき松本が今まで見せたことの無い笑みを浮かべ私に告げた。
「男と相部屋しといてこの対応なく無いですか?
私はてっきり同意という意味かと思ってましたのに、これでは生殺しの様なものですよ...
丁度人気もありませんし、この様な場所ですが失礼させていただきますよ...」
笑顔が私を見下ろしていた...




