表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
正義のHEEL  作者: include
雑考した、その日
17/31

第8話

今回は長くなってしまいました。

よろしくお願いします。

第8話


どれだけ時間が経っただろうか。


私は穴を掘っていた。


深く、広い穴だ。


道具等は存在しない為、犬のように自身の手を使いひたすらに掘り続けていた。


背後では、やる事を終えた男達が私を見下ろしながら何かを吸い、談笑していた。


私は今、これから自らが収まる為の穴を男達に命じられてひたすらに掘っていた。


辺りは未だに夜の帳に支配され、顔を上げて周りを見回しても数本の木が見えるだけでその木々の後ろもやはり暗闇だ。


よそ見をした私にの後頭部に、蹴りが飛ぶ。


その勢いで、穴の中に突っ伏した私はそのまま起き上がらない。


起き上がろうとも思えない。


それを見た男たちは、面倒くさそうに舌を打つと私の首に括り付けてあるロープを強く引き、私の身体を強引に起こした。


身体が起き、休む事を許されないと知った私は仕方なく穴掘りの作業を再開する。


そうして夜は更に更けていく...



------------------------------------------


この男に穴を掘らせ続けて1時間近く経った。


先程、この男と再会した時は酷く驚いた。


周りには仲間や警察の気配もなく、この男は昨日から何ら姿を変えず着の身着のままで山を登り俺達を追いかけてきやがった。


どうやって俺たちがここにいる事を知ったのかは解らないし、追い付いたところで何をするつもりだったのかは知らないが何にせよ見られてはまずいものを見られた。



だから、殺す。



それだけだ。


手順は簡単、今までのように散々嬲って抵抗する意欲を無くしてから自身の手で墓穴を掘らしてそこで殺す。


幸い、新しい車に一通りの道具は積んであるので殺した後の処理も行える。


だから、嬲り、蔑み、殺す。


それだけだ。


そう、それだけの筈だ。


今までと何も変わらない、今まで何度も行ってきたつまらない手順だ。



それだと言うのに何だ、この言いようも無い焦燥感は...


今すぐここから離れたい、こんな訳の分からない男から早く縁を切切りたい。


女との続きを楽しみたい。


運良く手に入った上物のブツもある。


俺に媚び諂い、思うがままに動く三下供だっている。



だから、ここから離れたい。

そうだ、そうに決まっている。

そうでなくてはならない。



いや、本当は分かっている。


既に俺の周りにいる三下は今にも泣きそうな顔で辺りを不安そうに見回している。


膝なんか明らかに震えていて、乾いた笑いがこみ上げてくる。


しきりにソワソワと身動ぎしては、俺に視線を合わせようとしてくる。



まるで、



"何かに怯えてここから立ち去りたいかのように..."



何かに耐えきれなくなってであろう三下の一人が遂に動いた。



しかし、それは俺の予想を最悪の方向で裏切るかたちだった。


そいつは、穴の中にいる"男"を強引に引き釣り出すとその"男"に変わって自分が穴の中に潜り込んだ。


すると、その様子を見ていた他の三下も我先にと穴の中に潜り込んでゆく。


瞬く間に穴の中は、怯える男供ですし詰め状態となる。


一方、穴の中から引き釣り出された"男"は地面に這いつくばり動かなくなった。


しかし、もはや俺達にはそんな男の動向などに構っていられなかった。


膝が笑う、汗が噴き出る、手先の感覚が薄れ、平衡感覚が崩れ今にもその場に膝をつきそうになる。


この感覚を俺は知っている。


今までの人生でも、僅かな機会ではあるが確かに経験したことがある。



これは、恐怖だ...



でもどうして?


俺たちは何におびえている?


”男”はノソリと起き上がるとふらつく足で俺の後ろへと姿を消した。



怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、こわいこわいこわいこわいこWあいKおわIkoわいこわい...



頭の中が恐怖に支配される。何かがいる。


そう、まさに、俺の後ろに、今。


しかし、振り向くことができない、できるわけがない。


俺の体は、すでに俺の言うことなど聞く耳を持たず、只いたずらに筋肉を硬直させ続けている。



穴の中の三下たちは、決して動こうとしない。

顔を上げようとしない。



決して広くない穴の中で我先にと蹲り耳を塞ぎ、目を閉じている。



グシャリ( ・・・)



突如として、


うしろでおとがきこえた。


今まで聞いたことがないような音だ。


それなのにその音がどのようにして奏でられたのか容易に想像ができた。


おれは、このおトは恐らく、人間がもっともふ快に思う最ていのおとなのだろうとおもえた。


もうだめだ。たすけてくれ。


しにたくない。


やめてください。やめてくださいやめてくださいやめてくださいやめて、くださ..いや...




・・・「う"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"っ」



暗闇に絶叫が響く。


渾身の力で声を出す。


俺を支配する恐怖への最後の抵抗だ。


幸いなことにこの行動は、非常に効果があった。

身体を支配する不快な恐怖はかろうじて体を動かせる程度には薄まり、筋肉の緊張もわずかに和らいだ。


暫くの間、荒く激しい呼吸を繰り返す。


三下たちは変わらず穴の中から動かない。


何人かがストレスによる嘔吐をしたらしい、わずかに汚らしい匂いが鼻をつく。


その匂いにつられて胃の内容物を辺りにまき散らす。


暗闇のせいでどこに吐いたのかは分からなかったが少し体が軽くなり元気も出てくる。


どうにか体が動くうちに車にに戻り早くここの場所から離れたかった。



その時の俺は、この場から離れるということだけに脳内を支配され今までに他のものに目を向ける余裕を完全に失っていた。


そして、背後に感じた”人類の天敵”への恐怖もだ。



振り返った俺を待ち受けていたのは、今までで最も暗い影であった。


それは全長、優に50mに至るであろう巨人の影であった。


そうか、俺の後ろにはこんなものが佇んでいたのか。


恐怖の元凶を確認した俺は、いやに冷静にその現実を受け止めていた。



違う、おれはれいせいにこわれてしまっていた。

今回も諸事情により連続投稿とさせて頂きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ