第6話
今回、次回と人によっては少し不快な表現があります。
ご了承下さい。
(今更かなぁ?)
第6話
身体は疲れる事無く、精神だけを異様にすり減らしてたどり着いたその場所は、普通ならば決して自動車で通ろうとは考え付かないような細い道を曲がりくねりながら進み続けた先にある森の中にある木に囲まれた小さな広場であった。
そこには先程私を自主的に法面に跳ねあげさせた懐かしい車が止まっていた。
外から伺うその車は、定期的な小刻みな振動を繰り返し、私にその中で何が行われているのかを容易に想像させ、私の行いが無駄に終わった事を悟った。
それでも尚、周りに人の気配が無いかを確認し、私は車に忍び寄る。
車内から微かに聞こえる生々しい声や音が、より私に無力さを与える。
そのまま立ち去れば良いものを、どうやら私はこの状況でも中にいる人間を助けようととしているらしい。
中の様子を伺う為、窓から頭を出そうとも考えたがあまりに危険過ぎるので諦めた。
どうしたものかと車を眺めていると、暗闇に慣れ始た視界が突如、極彩色に支配された。
突然の事に尻餅をつき、出そうになる声を辛うじて抑え込む。
一呼吸置いてなんとか落ち着き、目の前...いや、目の中の状況を整理する。
それは、所謂赤外線映像というものだろう。
その赤外線映像が何故か、車内を見下ろした形で私の目の中に映し出される。
勿論今の私はしゃがんでいるし、そこまで座高は高くはない。
とはいえ、疑問ばかりを浮かべても仕方がない。
何より私は、身の回りで起き続ける超常現象に一々驚くことに疲れていた。
更には、その赤外線の視界の中で行われているのはまごうことなく犯罪行為であり、私がその凶行を止められなかった事実に私の身体は酷く落胆している。
それら問題を抱えながら、私はどうしたものかと頭を抱える。
追い付いたはいいものの、だからと言って何をするかは特に考えていなかったからだ。
そもそも、私の意思で来たのかすらも怪しいこの状況、積極的に介入する気も起きない。
されども身体は意味もなく熱を持ち、拳をにぎりしめる。
口の中は鉄の味だ。
しかし、そんな葛藤は他所に今もまた状況は動き続ける。
彼女も彼らも、そして私自身にも新たな状況が繰り広げられる。
それが、決して望まないものであったとしても...
今回は、二話連続で投稿させて頂きます。