第5話
第5話
特記するような事も無い旅路、ただ前を向きながら歩き続き、気付けば太陽の勢力は地に落ち月が空高く私を見下ろしていた。
等と、少しらしく無い感想を抱きながら歩く私は、名も知れぬ山道を登っていた。
山と言っても自動車道に沿って歩いているだけなので、地面のアスファルトを辿って行けば、余程の事がない限り道に迷い遭難する事も無いだろう。
とはいえ、碌な光源も無くただ暗いだけの道は、どれだけ強大な力を手に入れようとも底知れない不安を私にもたらしていた。
そんな不安に包まれていた私の後では、待ち望んでいた光源が音を立てて近づいていた。
所謂自動車という奴は、私の後ろから法定速度という概念すらも置き去りに出来るような速度で山道を飛ばし、危うく私を空高く舞い上げるところであった。
すんでのところで、法面に張り付いた私の後ろを瞬く間に通り過ぎてて行く自動車は、何事も無かったかのように視界から消えて行った。
ここ最近で一番心臓の鼓動を感じながら、道に戻り再び私は旅を続ける。
しかし、そんな私の脳裏に焼き付いて離れない光景がある。
それは、先程すれ違った、車内で行われていた凶行である。
すれば違うその一瞬、理由は分からない、ただ
"見えてしまった"
それだけである。
そこでは、一人の女性が複数の男性に組み敷かれていた。
その光景を私は初めて見るものではあったが、これから何が行われるのかは誰かに説明されなくとも充分に理解していた。
しかし、私には一切の関係が無く何より一刻も早く山道を抜け出たしたい私はそのまま道に沿って歩み続けようとした。
そう、たとえ"ソレ"を行おうとしているのが昨夜、偶然にも顔見知りとなったあの男達だとしてもだ。
私にとってそれは、一切の原動力となりはしない。
どうせ気が向けばいつでも殺せる、疲れている時に無理にちょっかいを出しに行く必要は感じない。
だから、
私は、私自身をそう納得させ、そのような行動を起こそうと奮闘していた。
それなのに、この身体は私の意に反して動こうと...
いや、既に行動を起こしている。
気持ちが悪い。
私の意思を引きずるかのように身体一人でに動き出す、まるでどこに向かうべきなのか理解しているかのように。
気持ちが悪い。
そして、その目的地点は私自身、既に理解していた。
目的地が私の頭の中で理解できない手段で映し出されている。
私の身体は、脇目も振らずにその場所を目指し続ける。
私の事を構う事などせずに...
なんだか、グダグタしてきてる気がする...