6.アズモディア国に行く前に
次の日
「お父様、しばらくの間、私達は行方不明になった公爵令嬢を探しに行きます」
「…何か掴んだのか?」
「ええ。アズモディア国に売られた奴隷の中に彼女らしき人間がいたっていう噂を聞いたわ」
昨日、城に来ていた行商人から情報を得たと、姫様が言った。流石に王様に黙って国外に行くのは色々と問題がある。なので、アズモディア国に行く事を、一応言っておく事にした。
王様に報告しておいて後から何かあったら『王命で動いていた』という事にしてしまおう、という無茶苦茶な魂胆もある。
「本当は行かせたくないが、黙って行かれるよりはまだ良いか…」
王様はため息をついた。
「それは理解したが、この3人目の私の娘は一体…」
「彼女が作り出した魔道具にございます」
彼女も姫様もこの場からいなくなると、姫様は不在となる。
姫様と彼女の顔は似ている。なので自動人形の顔を少し変えて、身代わりをさせる事にした。
「ナナよ、クリスを守り其方も共に無事に帰還しろ。これは命令だ」
「承知いたしました」
この後、姫様と彼女は冒険者ギルドへと向かった。
「侍女の私が冒険者を雇ったという形にします。流石に公務以外で他国に入るとなると、姫様の身分だと不都合なので」
「分かったわ。貴女も気おつけなさいよ、公爵令嬢であるとバレないようにね」
他国の貴族が入国したとなると警戒される。彼女には、貴族や王族と知り合いもそんなにいないので、バレる事はないと思うが、一応警戒しておくとしよう。
「分かっております。それと冒険者を1人雇う依頼をしました。流石に私だけだと不安なので」
「それで此処に来たのね。依頼を受ける人がいるのかしら?」
冒険者ギルドの中で待っていると、ビキニアーマー姿の女性が来た。どうやら依頼を受けたのはキャトスさんのようだ。
「どうして、姫様がいるんだ?」
「わ、わわわわ私はルーシェよ」
姫様は顔を逸らし否定した。動揺しすぎだと思う。
「ナナ、こいつ姫様だよな?」
「ええ。そうですよ」
「何でバラすのよ!とうより何でアンタがいるのよ?」
下手に隠すと依頼を受けてくれなさそうなので、正体を明かす事にした。
「久しぶりに冒険者ギルドに顔を出したら面白そうな依頼があったんで受けた。商人ギルドから丁度アズモディアに行って、あるモノを買い付けてこいって、言われてたしな。ナナが護衛の依頼を出してたんで、目的地も同じだし、ついでにこの依頼を受ける事にしたんだ」
キャトスさんなら強いし身元も確かだ。裏切る事もないし問題はない。
「護衛対象は同行者と書いてあったけど、ひ…この子でいいんだな?」
「はい。自分の身は自分で守りますから。それと契約期間ですが、特に決めませんが大丈夫ですね?」
「ああ。俺の方も何日かかるか分からないしな。それじゃ急いで出発するか」
「コイツも貴族家の人間よ!他国に行くとなると問題だらけじゃないかしら?」
「たしかに俺は貴族家の人間だけど、名ばかりの貴族だ。それに、商人ギルドに所属している事や冒険者として、他国に名が知られてるし問題はないだろう?」
商人ギルドの依頼や冒険者として護衛の依頼を受けたのなら、問題はない。
「ええ。仕事として入国する分には問題かと」
姫様は納得していないようだった。