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3.姫様の従姉妹
姫様の訓練を、身代わりになって受ける理由はないように見える。
だが侍女をクビになった場合、今の彼女は冒険者として、生計を立てるしか生きる術がない。だから出来るだけ強くなっておきたいと思い、身代わりとして訓練を受ける事にした。
ー訓練場ー
訓練場には、姫様にどことなく似た女性がいた。
たしか彼女の名前は『センティーレ・アンセマム』。姫様の従姉妹だ。
「センティーレお姉様、何故ここにいらっしゃるのですか?」
「私も今日は一緒に訓練を受けます。よろしくお願いします、リリス。今日は弓の訓練ですよ」
そう言うと、彼女は弓を構えて遠くの的目掛けて、矢を放った。矢は的の中心に刺さった。
「お姉様、お見事ですわ」
流石に身内だったら分かるだろう、と思ったが意外とバレないものだ。
姫様の従姉妹でも彼女の変装を見破れないという事が、素直に嬉しかった。
そう思った時、彼女は意識を失った。