13.クリス姫の戦い
二回戦第2試合
パボーネ・キャトス。
エランジェルイト国の王族の親戚で、闘技場の運営をしている貴族。年齢は私より3つ上だったかしら?
私は彼女の事をこれぐらいしか知らない。初対面の時に彼女とは、派手な喧嘩をしてそれ以来話したことがない。喧嘩の原因は正直覚えていない。
「あんたが参加してるとはね」
彼女が参加した理由を知りたかった。
「こういった祭りには参加しないとな。それよりも一国の姫様が、たかが一貴族の娘の為に動いてる事が不思議なんだが?」
「うるさいわね、悪い!?」
「悪いとはいってないだろ」
「…あの子をどうするつもり?」
ここは重要である。優勝者は彼女の身柄を自由にできるのだから。
「闘技場で剣闘士として戦わせる。冒険者ギルドでの活動記録を見たら、結構強い事が分かったからな。侍女にしとくのが勿体ない」
「そんな事させないわ…」
何としてでも勝たなければと思った。
試合の開始とともに、光属性の魔法弾を連射した。だが、彼女は刀で魔法弾をはじき、軌道を変え躱してきた。
そして一気に間合いを詰め、斬りかかってきた。私はそれを杖で受け止めた。
「Aランク冒険者は伊達じゃないわね」
「あんたが対近接の戦闘ができると思わなかった」
刀から炎が出た。
杖は【防火樹】という火の耐性がある木を使っているが、少しの時間しか持たないだろう。
彼女を闘わせない為に闘技場を潰す事なんてしたら、国民が城を攻めるだろうし…。
『「私の侍女として働きなさい!断るという選択肢は貴女にないわ。あと、貴族としての本当の名は名乗らないようにした方がいいわね。私から後で別の名を与えるわ」』
何故か、彼女と最初に会った時に言った言葉を思い出した。そういえば、別の名前を与えてなかったわ。
『「侍女として仕える条件に初級魔法が使える事というのが、ありますが…」
「魔法が使えれば仕事が効率的に出来るというかだけの話よ。魔法が使えたって、仕事がしっかりできない子もいるわ。貴女は魔法が使えないのに、他の人よりも良い仕事をしてる。だから貴女は、できる事をやれば良いの」』
ある日、侍女募集の広告を見た彼女が私の元へ来た時の会話を思い出した。
できる事をやる…。
諦めるわけにはいかない。
私は杖に魔力を全力で流し、魔法を放った。
「うわぁーー」
パボーネ・キャトスは壁へと吹き飛んでいった。どうやら彼女は気を失ったようだ。
杖は消滅し、私の両手は焼け爛れてしまい使い物にならなくなった。回復魔法を自分に使ったが、回復力が鈍く治るまで時間がかかりそうだ。
「次の試合に間に合うかしら…」
錬金国家の名誉貴族が棄権したのには何か理由がある。彼の目的は彼女の救出の筈だ。棄権したという事は、救出の目処が立ったと見て良さそうだ。
だけど、まだ私は棄権するわけにはいかない。完全に彼女を助け出して身柄を確保した訳ではないから。
それに次の対戦相手、セブネスが何処の貴族か私には分からない。私は幼少の頃から他国の貴族や王族とお茶会の誘いに参加してきたが、彼女の事は全く知らない。
彼女は、ナナを助けに来たと言っていたが、どこの国の誰だか分からない人に託せない。
絶対に勝たなければ…。
腕が動くようになってから魔力回復薬を数本飲み、回復魔法を使い火傷を完全に治した。試合を見ている彼女に余計な心配はさせたくないから。




