表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢の世界で侍女として生活する私  作者: Section chief
3章
30/96

4.モブ顔の男

よく考えてみれば、こんな事態になるまで6人の兄(シスコン)達が黙っていないはずだ。兄達は度々彼女()の元を訪ねてきていた。だが、自動人形(オートマタ)が盗まれる数日前から城には来なくなっていた。この時から所在を探っていれば、良かったと後悔している。


ニイ兄様もこうなるのが分かっていれば、すぐにでも父の悪行を公表して糾弾するはずだ。そうなっていないということは、自動人形()を人質にとったうえで、6人全員がどこかに幽閉されているか、最悪の場合殺されているかもしれない。


兄の安否を考えていたら、モブ顔の男が話しかけてきた。



「先程、エランジェルイトの姫様とお話されてましたよね?」

「ええ。貴方は?」

「申し遅れました。錬金国家(アルケミー)・名誉男爵、モーブ・チーチオと申します」



さっき姫様が言っていた協力者の1人のようだ。この男どこかで見た事があるような気がするんだけど、思い出せない。



彼女()の名前はセブネス。一応貴族だけど、訳あって家名をいう事はできない」

「訳ありですか。まぁ冒険者には多いので私は気にしません」

「それはありがたいです」

「ああ、そういえばエランジェルイト国で、数ヶ月前に出た大会、あの姫様は魔法を一切使わなかった。魔法で有名な一族なのに…」

「なんの話ですか?」

「あの時に一緒に出場していた冒険者の女の子、いや本物の姫様を庇って魔法を全て受けた姫様は貴女ではないかと」



この男、どこまで分かっているのだろうか?



「あの時の姫様と冒険者のコンビを、私たちは警戒してました。まともに戦えば勝てなかったかもしれなかったので」

彼女()には関係がない話ですよね?」

「私は2人の闘い方や動きの癖を、相棒は魔力の匂いを覚えていたんです」



優勝した2人のうちの1人か。今の話から、もう1人も近くに潜んでいると考えた方が良さそうだ。



「…この事をネタに脅すのですか?」

「そんな事をするつもりはないです。ただ知り合いなら、あの姫様の協力者になって欲しいと思って…」

「はじめから彼女()は、(彼女)を救出しに来てますから、その辺はご心配なく。それと貴方と貴方の相棒は冒険者でしたよね?」

「はい。それとここだけの話、相棒も一緒に来てます」



やはり、相棒も連れてきていたか。



「それなら彼女()から依頼を出します。貴方と相棒の方の報酬併せて金貨20枚で」

「随分と報酬が良いですね」

「かなり危険ですし。契約書無しの先払いで」



彼らのおかげで儲けられたし、報酬は高めにしてある。



「契約書無しとは…。私達が裏切る事は考えて…なさそうですね。それで依頼の内容は?」



彼は驚いていた。当然である。冒険者ギルドを通さないで依頼を出したり受ける場合、正式な契約書などをを作成していないと後で色々と問題が起きる。だから普通は契約書を作成するのが一般的なのだ。

だが、今は紙とペンを持っていないし、取りに戻る時間もない。

それに彼らが裏切る事はないだろう。そんな事すればエランジェルイト国を敵に回す事になるし。



「ナナ・サリシュの6人の兄の所在と生存が確認できたら、救出をお願いします。…もし死亡していた場合、可能なら亡骸の回収を依頼します。彼女の兄の匂いのついた物は持っておりますので」

「…普通は本人の救出をお願いしますよね?それに何故、彼女の兄の物を持って…君はまさか!」

「それ以上の詮索はしないで下さい」



彼女()は青・黄・緑・茶・白・黒、6つの色の狐面と金貨20枚を袋から取り出した。

この6色の狐面は、兄達が彼女()に「御守りに」と持たせたものだ。装備する事で情報を隠蔽する効果があるらしい。


彼は、彼女()から受け取った6つの狐面と報酬を自分の影ができている場所へと置いた。「約束通り、報酬は全部貰うよ」と声がして、それらは消えた。



「相棒を影に潜ませていたので、君から受け取った品を持たせて、会場の外に出しました。すぐにでも解決してくれると思います」

「ありがとうございます」

「それじゃ試合で、会いましょう」



モーブさんは去っていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ