2.武術訓練の影武者
ー姫の部屋ー
今日は週1回ある姫様の武術訓練の日である。
「姫様。また武術の訓練をせずに、城を抜け出すのですか?」
「退屈なのよ。それに私には魔法があるから、武術は必要ないわ」
「退屈だからといって、毎回抜けられていては困ります。それに魔法が使えない状況に陥ったら、どうなさるおつもりですか?」
姫様は暫く黙ったあと、彼女から視線を逸らし言った。
「…その時に考えるわ」
「それに、毎回抜け出されては誤魔化しようがないです」
「最近サボっても怒られてないから、うまく誤魔化せてるようね。どんな手を使ってるのかしら?」
「それは教えられません」
「まぁいいわ。それじゃ今日もよろしくね」
「お待ち下さい、姫様!」
姫様が部屋から退出した。
彼女はすぐに姫様が召している服に着替え、姫の髪色と同じ髪色のカツラをかぶり、自分で作った化粧道具を使い化粧をした。
侍女になった頃は『姫はお花を摘みにいっておられます』などで誤魔化していたが、流石に毎回同じ理由にする事はできない。
そこで考えたのが、自分が身代わりになるという事だ。
姫様と彼女の背の高さはほぼ同じで、体型は姫様より彼女の方が部分的にスレンダーだ。部分的にスレンダーな所は自作の道具を入れて誤魔化している。
私は、眠る前に化粧の仕方や化粧道具、声帯模写のやり方など色々と調べた。どうやら、私の世界で得た知識は、こちらの世界に持ち越せてるようだ。知識を持ち越せたお陰でどうにかなっている。
姫様が訓練をしている間、侍女は姫様の訓練を見守っていなければならない。
だから彼女が姫様になっている時は、
「あの侍女には、私から別の仕事を命じてるわ。彼女を探したり、仕事の内容を聞かないようにしなさい!」
と言って、誤魔化す事にした。