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夢の世界で侍女として生活する私  作者: Section chief
2章
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12.商人ギルドへ

休暇5日目



さて、今日は商人ギルドへと向かう。販売経路がないのでどうしたら良いのか相談しようと思ったからである。


商人ギルドへ入ると、受付には猫の獣人の女性がいた。



「ごめんください」

「何の用にゃ?ここは子供が来る場所じゃないにゃ。子供は帰るにゃ」

「話ぐらい聞いてくれてもいいんじゃないですか?」

「紹介状はあるのかにゃ?」

「…ないです」

「だったら、帰るにゃ」



紹介状が必要なのか。それなら仕方がない。姫様にお願いして何とかしてもらうか。そう思い彼女()は入り口の方へと向かおうとした。



「なんだい、騒々しい」



奥から老婆が出てきた。



「あんたは確か…」



老婆は驚いていた。この人確か城の中で見た事があるような。そんな事を思っていると、「ついてきな」と言われた。


ギルドマスター執務室と書かれた部屋に通され、椅子に座った。



「姫様の侍女の名前は確か…」

「ナナ・セリシュと申します。それで貴女は?」

「リッコだ。一応ここのギルドマスターをやっている。紹介状も無しに何をしにきたんだい?」



王宮からの使いだと思われているのだろう。



「公務ではなく個人的な事なので、また日を改めて伺います」



立ち上がり扉の方へと向かおうとした。その時、「待ちな」と言われた。



「貴族の出身なんだろ?」



クリス姫か王様から聞いたのだろう。



「…ええ。ですが親から勘当されてしまいましたから、元ですけども。それが何か?」

「貴族の娘が勘当されて商人になるのは、よくある事じゃ。それでどんな商売をする気なんだい?」



この世界では、貴族の娘が勘当されると商人になるのはよくある事らしい。嫌な世界だ。


彼女()は、自作の扇風機と魔石を不思議な袋から取り出した。本体の裏の方に、雷属性の魔石をはめ込んだ。


この魔石のことだが、彼女()は魔力操作ができないわけではない。あくまでも苦手なだけだ。時間さえかければ魔石に魔力を入れる事もできる。ちなみに、彼女()は7属性全て使える。

一昨日、依頼を受けてくれる冒険者を待ちながら、魔力を魔石に入れる内職をしていた。何とか起動できるだけの最低限の魔力を貯める事が出来た。



魔石をセットして電源を入れるボタンを押した。扇風機は周り、数十秒で魔石の色は透明になり停止した。



「発想はいいんじゃが、燃費が悪いの」

「それは魔力量の問題なので、しっかりとした方の魔力ならもっと持続すると思います」

「そうか。それともう一つ疑問なんじゃが、他の属性の魔石を入れた場合、どうなるんじゃ?」

「動かないように設計してあります」

「なるほど。風量は調整できるのか?」

「はい。ここのカバーを外して風属性の魔石を一つ入れると『中』、二つ入れると『強』になります。もちろん風属性の魔石以外では起動しないように設計してます。対応した魔石を持っておりませんので、お見せする事はできませんが…」

「嬢ちゃん、空の魔石を今持っとるかい?試したくなった」



彼女()は、透明な魔石を3つ袋から取り出し渡した。



「ガットちょっときな」



入り口の方に向かって叫んだ。猫の獣人がすぐにきた。



「何か用ですかにゃ?」

「用がなきゃ呼ばないよ。この魔石に雷属性の魔力を入れな」

「わかりましたにゃ」



ガットに一つ魔石を渡し、ギルドマスターは二つの魔石に風属性の魔力を入れた。



「終わりましたにゃ」



ギルドマスターに【魔石(雷)】を渡したガットは、扇風機を観察していた。



「これはにゃんだ?」

「黙って見ておれ」



ギルドマスターは雷属性の魔石をセットし、ボタンを押して起動させた。



「快適にゃー。今日みたいに暑い日に欲しいにゃ」

「魔石をセットしたいから少し離れな」



ガットと呼ばれた猫の獣人は、扇風機の前から動こうとしないので、ギルドマスターが無理やりどかして、風属性の魔石をセットした。



「風の強さも変えられるのかにゃ!?」



ガットは驚いていたが、ギルドマスターは無視して彼女()に話しかけてきた。



「今すぐ商人ギルドに入会してもらうよ」



ギルドマスターは書類を二つ渡してきた。



「こっちが入会手続きの書類、そんでこっちがこの製品の特許申請用の書類じゃ」



書類にサインし、今後の事について話し合った。商人ギルドにも口座があり、特許料は、そこに入金されるそうだ。




防火樹などの樹木はここから遥か東の国、錬金国家(アルケミー)という国の近くにある樹海でしか採れない。しかも、そこの生物はとても強くて、冒険者もなかなか立ち入らない。


原材料の事を考えると、扇風機(この魔道具)を購入できるのは今のところ、貴族や商人といったお金持ちだけになってしまう。



「製法を公開して良いんじゃな?」

「はい」

「しかし話を聞く限りとても簡単な作りをしている筈なんじゃが、何故か真似できる気がしないの…」

「こういったものを作るのは初めてです。素人にも簡単に作り出せるのですから、プロの方ならもっと良いものが作れると思います」



電気の代わりに魔力を使ってはいるが、向こうの扇風機とそう変わらない作りだ。

向こうでもこっちでも、扇風機を作ったことのない私が作れるのだから、大体の人は材料と製法さえ知っていれば作れると思う。

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