6.一月後
一月後、またあの世界へと行く事が出来た。
向こうの世界の事などすっかり忘れていた頃だった。
「ここは?」
起き上がって辺りを見渡した。ここは彼女が使っている部屋のようだ。ぼーっとしていると扉が開いた。
来訪者は姫様だった。
彼女を見るなり、走ってきて抱きついてきた。
「やっと目が覚めたのね…」
姫様は泣きながら言った。
「姫様…ご心配をおかけしました。私はどのくらいの時間、眠りについていたのでしょうか?」
宮廷魔導師10人による回復魔法の連打により傷を回復させた事、それでも彼女は一月ほど意識を取り戻さなかった事、あの日の次の日から姫様は公務に復帰した事、彼女は病気ということにして、誰とも面会させなかった事、これら全ての事を知るのは、姫様と王様、侍女長と騎士団長だけだという事を姫様が話してくれた。
「私のせいで貴女を危険な目に合わせてしまったわ…。ごめんなさい…」
「姫様が頭を下げる必要性を感じないのですが…。影武者として当然の事をしたまでです」
「いいえ…。貴女は忠告したわ。だから…」
「姫様が悪いわけではありません。1回戦目と2回戦目に、私がでしゃばりすぎたからです。それに私は目を覚まして、姫様とこうして話してるのですから…」
姫様は暫く泣いた。彼女は泣き止むのを待った。