4.女子力(物理)と女子力(魔法)
彼女は姫様として出場する。要は影武者である。
こういった大会に参加する人間に貴族や王族を良く思っていない者も少なからずいる。身代金目的の誘拐等の可能性があるのでこうする事になった。
本物の姫様は、王族から依頼を受けた【冒険者のルーシェ】として参加する事になった。
彼女も姫様も、王宮魔導師が身につけている法衣を着ている。
魔導師にとってこの法衣は、この国で一番良い装備だ。魔法耐性が上がるのはもちろんのこと、物理攻撃や弓などの投擲系の攻撃も殆ど通さない優れものだ。
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1回戦、2回戦は難なく通過。
対戦相手二人を一回ずつ殴っただけで、勝利した。
対戦相手があまりにも弱すぎるような気がする。
「つまらないわ」
「どうしてですか?」
「私が魔法を撃つ前に、あんたが殴って戦闘不能にしちゃうからよ」
「それは姫様が『全力でやりなさい!』って言ったからです」
「次は私に譲りなさいよ。手出しはしないでね」
「わかりました」
三回戦の対戦相手は、いかにも戦士という格好をした男と、これまたいかにも武闘家の格好をした男だった。
「楽勝じゃない」と姫様は呟いた。
間合いを詰められなければ、姫様の魔法だけでも勝てると思う。
だが、あの2人が身につけている防具が気になる。
「あの2人が装備している防具は、見た事のないものです。魔法を連射するのは控えて下さい」
「手出ししない約束でしょ?」
嫌な予感がしたから、そう言ったのだが…。
試合開始と同時に姫様は、対戦相手2人に上級魔法を連射していた。
その魔法に対して戦士は盾で、武闘家は手甲でガードするようにした。
魔法が盾と手甲に当たった瞬間、魔法が全てこちらに跳ね返ってきた。