7包囲網からの離脱と面倒事になりそうな出会い
アースは1番近いダンジョン都市に向け森を移動して、小川を見つけ食事後の休憩していた。
タロとジロは最近、交代で影で休憩している。
御飯の時など呼べはすぐ出て来るが2匹が揃うのは食事と僕が休憩か眠る時だ。
今の夜は地面で寝ている。
タロとジロが強くなりチリチリ程度の魔物を寄せ付けないのと、ゾワゾワする魔獣からは近づかれる前に2匹を影に入れ、全力で逃げるためだ、
今まで近付かれる前に逃げるので追いかけられたことすらない、そのせいでレベルも上がらないけど。
(アースがこの間の囮の一件からかなり心が成長したみたいだ、タロとジロがいる事で、今までの護られる側から護る側に成ったからかも知れないな)
食休みを取り移動を開始したのにタロもジロもどちらも影に入らない、2匹共鼻をヒクヒクさせ辺りの匂いを嗅いでいた。
(警戒はしていないが何かの匂いを気にしているみたいだな)
(僕の感覚にも反応無いし危険は無いと思うけど)
タロが地面の匂いを嗅ぎ始めた。
ジロは周りをキョロキョロしている。
タロの嗅いでいる地面を見ると血の跡があった。
「タロ、ジロ、血の匂いの主を追え」
(アース、感覚では危険はないんだな)
(危険な感覚はまだないよ、傷を負った物が危険がないのか死んでいるのかは分からないけど、タロとジロの反応だと近くにいると思う)
タロとジロが、高い崖近くで匂いを見失ったらしく、行ったり来たりを始めた。
「タロ、ジロ、どこまで匂いがある?」と、聞くと。
崖の壁近くまで行き、ジロが「オン」と吠え、タロは壁に鼻を着けてから「ウォン」と吠えた。
どうやら壁近くで匂いが消えるが、壁の土の中から匂いがするらしい。
(タロが鼻を着けた崖の壁の中から人の気配が有るから声をかけてみる)
(駄目なら諦めるしかないな、この土質だと掘れば生き埋めになり助け出すのは無理だ、自分から出て来てもらわなければ助けられん)
「誰かいますか、僕の獣魔が血の匂いを嗅ぎここまで来ました、誰かいるなら返事をして下さい、出来る限りの事はしますよ」
「・・・返事はないか、タロ、ジロ、行くよ」
タロが鼻を着けた壁の土がモコモコ動き、手が出て来て、
「助けて、ここよ」と言い、手で地面を叩き始めた。
手を握り「どうすればいい?」と聞くと
「引っ張り出して」と言われ、
手を引っ張ると引きずられる様にして泥まみれの女性が出て来た。
「助かったわ、小さい穴が有ったから中に入って回復魔法を使って傷を治し体力を回復しようとポーションを飲もうとしたら穴が崩れて、咄嗟に顔周りと外寄りにあった右手だけは土魔法で埋まるのを防いで、魔族に見つからない様に魔法で入口に壁を作り、空気穴を開けて仲間が目印に気づいて来てくれると思い待っていたけど誰も助けに来なくて、自分では抜け出せなくて、ウエーーン、もう死ぬんだって、ウエーン、エッ」
口を塞ぎ静かな声で
「泣くな、こんな逃げ場がない場所で大声で泣くなんて死にたいのか?」
何とかなだめ泣き止まらせ、休憩した小川まで戻り水浴びさせた。
彼女は身体の泥を落とした後、服を自前のアイテムボックスから出して着替え終えたいたが、こちらに近寄らずタロとジロを見て怯えていた。
「防具はどうする?見た所かなり破損してるみたいだけど?」
「諦めます、あのー、・・・その2匹のシャドウ・ウルフですが、えっと、あなたの獣魔との事ですが、人に、私に噛み付いたりはしないですか?」
「知らない人と一緒に行動するのは初めてだから分からないな、でもあなたを見付けたのも、あなたの血の匂いを嗅いだ時に敵意を見せずに、僕を案内したから、大丈夫だと思うよ」
こちらに迷いながらもゆっくり近づいて来た。
近付いても大人しく伏せをしながら尻尾を振る2匹をみて、嬉しそうな顔になり。
「私はダンジョン都市ライス登録の冒険者、イリーナです、職業は剣士です、助けてくれてありがとうございました」
「僕は狩人のアース、この子とこの子が獣魔のタロとジロ」腰を落とし2匹を撫でながら紹介した、2匹は尻尾を振りながら擦り寄って甘えた。
「アースさんとタロちゃん、ジロちゃんは仲が良いんですね、
テイマーとは違い、狩人の獣魔契約は心を縛れ無いので、契約者に敵意を持つと、契約違反の痛みを耐えて契約者を殺し、自分も死ぬっていう獣魔もいると聞いたので安心しました、
処で、私が、撫でても大丈夫ですか?、撫でたら噛まれますか?」
「タロ、ジロ、イリーナさんがお前達を撫でたいって、どうする?」
2匹はイリーナに尻尾を振りながら近付き伏せをした。
「撫でていいんですか、撫でますよ〜」と嬉しそうに言いながら2匹を撫で、優しく「ありがとうね〜、私を見付けてくれて、本当にありがとう」と、抱きしめた。
「助けて頂いた謝礼は、ライスに着いたら必ずお支払いします」
「謝礼なら今あるお金の中から無理がない金額でいいよ」
「えっと、今手持ちが無いので、今回の調査の依頼料の7割の金貨70枚をお渡ししますので、ライスまで一緒に行ってもらえませんか」
「金貨100枚の調査依頼って随分高額の報酬だけど何の調査?」
「連絡が途絶えたダンジョン都市ウィートの調査です、もし私が死んだ時に冒険者ギルドに情報を持って行けば金銭が貰えるはずですから聞いてください」
「分かった、聞くよ」
「ウィートですが壊滅していました、街は魔族の獣軍に占領され、魔族はダンジョンの周りに集まっていました。
ウィートの住人はダンジョンに逃げ込んだみたいです、籠城してる人達が外のゴブリンに攻撃を仕掛けないのでなかの戦闘職の人数はかなり少ない様です。
ダンジョンマスターである主人の証が城の中で食べ残しの遺体から見つかり死亡が確認されました、
ダンジョンモンスターの排出が入り口付近に成っているのも確認しましたから、継承はされていません、
ウィートのダンジョンは、今は攻略されていないダンジョンと成りました。
貴族の騎士による都市への介入が可能です。
ゴブリンについてですが、複数のタイプの新種を多数、確認しました。
新種のタイプは、
足が速く槍を投擲してしばらくすると回収できる狩人タイプ、
魔法を使い仲間の強化をする支援魔法使いタイプ、
黒い肌で音を消しナイフで急所を攻撃してくるアサシンタイプ
背負い籠を背負って両手に盾を持った軽戦士タイプです。
他にも、今までも確認されていた戦士、剣士、魔法使い、投擲士も多数いました。
上位種も複数いて、ノーマルゴブリン以外は完全に統率され指揮されていました。
ノーマルゴブリンは集団で纏まりダンジョン入り口に陣取って動かない様です、たまに10匹程度の集団にしてボブゴブリンにつれだされていました。
上位種か進化種はいるはずですが確認できませんでした、建物内にいると思われます。
以上がウィートの状況と占領している獣軍の調査結果よ」
「立て籠もってる人達が持ちこたえてる間に、冒険者の手で取り戻せると思う?」
「無理ですね、奴らは軍形態を解除しません、パーティー単位で各個撃破は絶対に不可能です、
倒すには集まるまで時間はかかりますが、大規模な騎士団で一気に叩くしかないですね、
私達パーティーは上位でしたが、城で主人の死を確認して、城の高台からダンジョンの入り口付近からの転移排出を確認して、上位種や進化種の確認をするために少しだけ近付いたら、
アッというまに狩人タイプのゴブリン10匹に気付かれて攻撃され、
足にケガをした戦士が囮を買って出て私達を逃したのに、
グス、
すぐに出口に回り込まれ、見付かる前に隠れたのすぐに見付かり攻撃され、
何とか外に逃げ出て、馬に乗ろうとしたら馬にデバフをかけられて追い付かれ、馬を捨てて隠れてもすぐ見つかり、
仲間の魔法使いがいつの間にかいた黒いゴブリンに首を刎ねられ、
皆んな散り散りに森に逃げたけど、私は投擲槍を脇腹に受けて、仲間だけに分かる目印をつけながら、小川を見つけ、傷を洗い薬で手当してできるだけ遠くに逃げて、
穴に隠れて・・・後はあんな感じに埋まってました」
「もしかして目印って何かの匂い?」
偉そうに胸を張り、「ええ、甘い匂いの痺れキノコの粉末よ目印以外に剣にまぶして使ったりするわ」
「タロとジロは川に入る前の血の匂いと一緒に会ったその匂いを追跡したみたいだな、処で、聞いていいのかわからないが仲間の名前は明かせ無いのか?」
「えっ、えっと、・・・その辺は、・・・話せる様になったら話します」
「イリーナ、自分の名前は明かしちゃったけど、よかったの?」
冷や汗を流し、目を泳がせながら、
「・・・・、名前なんて、言っていません、イリーナって誰ですか?」と、必死に無かったことにするつもりの様だ。
(アース、可哀想だから聞き間違えにして新たに名前を聞け)
「勘違いでした、改めて名前を聞いてもいいですか?」
「わ、私は、ナタリー、ただの剣士よ」
(ただの剣士ではないって言っているようなものだな、仕事はギルドの特殊な職員って辺りかな)
「剣士のナタリーさんだね、分かった、僕は狩人のアース、また何処かでお会いしましょう」
「えっ、待って一緒に行かないの?」
「はい、話を聞いて別々の方が安全そうなので、情報はナタリーさん名義で気が向いたら手紙で報告します、
報酬はあなたがライスに着いた時に神殿にアース名義で預けて下さい、貰えなくてもいいのでこれでお別れです」
「では」と言って歩き出した。