43チッと貴族にされた
アースは今私は怒ってます!、という態度でクロが話す新たな魔装内の魔獣の言い分を聞いた。
「するとなにか?、元神殿騎士長が使っていた魔装は素材としても狩人の僕では使えないって事なのか?」
(えーと、元の魔獣なんですが、なんでも平原が縄張りで自分を倒せるのは突進を受け止める力か、避けて打撃を与えられる力がある者てそれ以外の者には負けても素材として使えないらしいんです)
(するとなにか?、今回はイレギュラーの間違えで仕える者の職種は本来は決まってるって事か?)
(ハイそうです、どうも最後の一撃で主人を剣士だと勘違いしたみたいでして、でも間抜けですよねー、剣士なら鎧を貫通して心臓を貫ぬいた筈なんだから、フゥ、まったくもって非力な狩人を剣士に間違うなんてねー、アッ)
クロの耳を掴み持ち上げて、
「非力な職で悪かったな」といいながらブン回し、地面に叩きつけた。
アースに狩人を貶す言葉は禁句なのに、クロはまったく学習して無いな。
(アース、ならばイリーナに使わせよう、剣士だし使えるかもしれん)
(ぞーじまじょう)アースに踏まれ顔が潰れながらクロは同意した。
「チッ、最悪でも剣は放置で鎧で使われた皮だけ使おうと思ってたのに、その皮ですら馬鹿みたいに重いんじゃしょうがない、まったくもって使えない魔装だなー、頑丈でも重いんじゃ皮の意味が薄れるじゃないか」
(うわー、主人、自分のスタイルに合わない魔装と分かったら態度悪ぅー)
「魔装内の魔獣を助けるためにリスク覚悟で近付いてワザワザ直にどどめを刺したんだぞ、少しぐらい嫌味を言わせろよ、まったく」
(兎に角、イリーナが使えれば盾役にもなれて戦力増強出来る、使えなければ使える奴と契約して仲間にすれば良い壁が出来るんだから良しとしろ)
(うわ〜、父さんも相当外道な思考の持ち主ですねー、この魔装を貰うイコール、あの雌以外なら打たれ役の壁に決定なんですね)
(クロ、この魔装の感じだと余程のレベルでなければ移動速度の遅い重い装備の鈍重戦士だ、どー頑張っても壁役だろ、
それ以外は大剣だけを持ってカウンター狙いの戦士しか出きない、つまり、後衛の攻撃力が無ければ成り立たない役所、つまりどう足掻いても壁だな)
(成る程、守ってもらう間に、主人が殲滅するんですね)
「エッ、壁しか出来ない重戦士なんか要らないよ、足は遅いし、動きは鈍いから狩りの邪魔になるし、
壁職で仲間にするなら使えない魔装は重要部分だけの皮鎧の盾戦士かな、まともに受け止めるよりは、速い動きと盾で受け流して勢いを殺すセンスがある仲間がいいなー」
(そんな有能な人が狩人がリーダーのパーティーに入る訳が無いでしょ、頭の中は大丈夫ですか?)
「アンだとー?、今、なんか言ったかー?」とクロの顔を両手で掴み雑巾を絞るように絞った。
(なんじもいっでまぜん、ずいばぜん、がおがじぎれますから、がんべんじでぐだざい、ぼうどうに、ぼんどうにじぎれじゃいまずー、グゲ)
「しばらく潰れたままインベントリに入って黙ってろ」
(クロは学習しないな、処でタロとジロは何処に行ったんだ?)
「元の縄張りに行ったみたい、何だか大切なモノが有るみたいで先に行ってるから後から来て欲しいって」
(大切なモノ?、どんなモノだ?)
「イメージとしたら、家族?かな」
(アースがリーダーだから狼の群は無いな、2匹にそれぞれつがい出来て子供を孕んだのかもしれないな)
「なら、タロとジロとはここでお別れかもね、僕より家族の方を大切にしてほしいからね」
(まあ、成るように成るだろ、別れても影移動が有るから呼べは会えるだろ)
「そうだね、契約をわざわざ切られなければ、いつでも逢えるよね」
(多分だがタロとジロは獣魔のまま家族の安全を確保したいんだと思うぞ)
「それなら嬉しいんだけどね」
ライスに戻り大神官長に元神殿騎士長の討伐の報告をした。
僕とイリーナは領主である公爵(王族との血縁関係がない時は侯爵になる)から名誉騎士を拝命した後、僕は名誉貴族では1番上の伯爵にまで一気に陞爵した、
発表は明後日だそうだが何故発表前の段階で陞爵をしたのかは教えてくれなかった。
(何か訳は有りそうだな)
(確定ではなく言えない事、つまりは厄介ごとが権力を振りかざしやって来るのかな?、
難を逃れた貴族の残党辺りですかね、まあこれで外でなら金装飾の馬車に乗ってる最上位貴族以外は疑わしい奴を先制で殺しても言いがかりを付けられることはなくなりましたけど、なーんか上手く使われてる感が嫌ですね)
(まあ、今回だけは許してやれ、元々アースが自分で蒔いた種だ、しっかり根まで刈り取りまでしてから他の都市に行くとしよう、
他の都市でも有効な立場を得たのだから得したと思ったほうが気が楽だ)
因みに名誉貴族はギルドを辞めた時に他の都市に引き抜かれない為の処置であり、名誉貴族に成ると他の都市の貴族にはなれなくなる、代わりに僅かだがギルド経由で給料が貰える様になる。
この貴族の位は他の都市でも有効で下の位の無礼に対しての無礼打ちが許され、神殿区から都市区への移動も自由になる、
つまりは神殿区の者が都市区に入る為に通る区間に有る門の通行料や都市区に居る間にかかる案内者の費用も無く、事前の許可の必要も無くなる。
神殿区の住人が都市区に入る為に必要な同行者の監視が無く、都市区の貴族用の宿にもいつでも泊まれる様になる、人目も気にせずに劇場などの娯楽施設へも入れる、飲み食いと仲間内の賭け事以外の娯楽の無い神殿区の自由民には特別な特権なのだ。
幼いアースにはまだ分からない様だが。
「イリーナは男爵だったっけ」
「そうだね、でもすぐに名誉伯爵夫人ですけどね」
「うっ、そ、そうだった」
「帰ったら、都市区でデートして、お、お、お泊り、し、し、しましょう」
「・・・、どもるなよ、まだ子持ちになりたくないから無理」
「ウー」
(アース、この世界に避妊魔法(ストッープ、有るけどイリーナにバレるまでは内緒で、やったら立場が逆転しそうだから言わないで)了解)
都市を出て邪魔なゴブリンを倒しつつ建設途中の村に着いた。
「キャー、可愛いー、あのコロコロしてるのはタロとジロの子供?、抱いても良い?」
「タロ、ジロ、イリーナに子供を抱かせても良いか?、・・・、座った状態で1匹ずつなら抱いてもいいってさ、甘噛みするから口元には手を出すなよ、子供でも魔獣だからな」
「了解しました!」
「子供達も歯が痒いだろうから甘噛み用に、クロ、行ってこい」
(なんでー、潰れた顔のままやっと外に出られたと思ったのに、そこは動物の骨でいいでしょ、何でワイなんですかー)
「今は魔獣の骨しかない、硬いから魔獣の骨はまだ早い、クロなら噛み応えも有るし千切れてもほらアレだし」
(アレって何ですかー、ワイはこのぬいぐるみモードでは痛覚が有りますから噛まれてる感覚が有るんですよ、結構痛いんですよ)
「ぬいぐるみモードのお前は、そうゆう役目だから」
(そうゆうって、どうゆい役目なんですか?、アッ、耳は引っ張らないで、左右で反対方向で引っ張りあわないでー、首振って引っ張らないでー)
「子供達に念話は繋がって無いから聞こえてないぞ、大丈夫だ、子供達に魔装を壊すほどの力は無いから安心して遊ばれてろ」
(イヤー)
(アースはこの間の事をまだ怒ってるんだ、罰だと思って諦めろ)
(もう言いませんから)(アースはクロとの念話を切ってる、諦めろ)
「可愛いー、このモフモフでモコモコしてて、ポテポテした動きは保護欲を掻き立てるわー」
「タロとジロが村を守るから子供達を村の壁の中で育てるのを許可してほしいそうなんだけど、なんか良い方法はない?」
(完全にワイの事は放置ですかー、イヤー舐めるのもイヤー)
(哀れなヤツ)
「村の住人の獣魔にするか、意思の疎通が母親達と子供達と出来れば、住人以外の人の獣魔でも村の住人と街道を通る人を危害を加えなければ襲わないと獣魔は誓い村は掟として誓えは契約になるはずだよ、
テイマーの冒険者がそれで稼いでいるって話しを聞いたことがあるから総合ギルドで確認して見て」
「オッ、有力な情報をありがとう、村が出来る前から契約を出来るかも確認ついでにライスに戻って聞いてみるよ」
「私も行くわ、おそらく馬鹿男爵が待ち伏せてると思うから、アースと私が自分と同等か上になると自分が準男爵、つまりは世襲できない貴族に落とされるらしいの、だから名誉騎士爵の内に難癖つけて無礼うちにするつもりみたい」
「なるほど、周りを囲み脅しをかけて、僕達に先に武器を抜かせて無礼打ちか、馬鹿だな、外で全滅させれば身分なんか意味ないのに」
「多分だけど、私達が武器を構えたら、男爵はすぐライスに逃げ込むと思う」
「そして、僕達がライスに入ったら無礼打ちか、既にこちらの身分の方が上だから、ワザと逃して無礼打ちにしよう、ムカつくから貴族風に仕返しして殺そう」
「そうね、私は正しい貴族は好きだけど権力を持つ意味を間違って解釈してる貴族はダーイ嫌いだからその話しに乗るわ」
「それじゃー行きますか」
「行きましょう」
2人はフル装備になりライスに向かった。




