41罠張りと世界の不思議
元神殿騎士長にまんまと包囲網を抜けられ1本分の薬も使わせられずに振り出しに戻った。
僕は再びウィート方面に向かい移動を始めたのだが、今度は元神殿騎士長が距離を置いて付いて来た。
僕はたまに止まり元神殿騎士長との距離をクロに確認させ、気づかないフリのために足音を立てずワザと尾行されないようにに移動した、
疑われずについて来させる為に、奥深くに誘い込む為に。
(ふん、今度は出し抜けだな!、あのガキはまだ自分が見付かった事に気付いてない、この距離なら流石に気付けんらしい、
しかし、感知出来るのあのガキ1人だ、もう1つの攻撃して来る存在がいるとしたら俺の感知より上の存在を隠すチカラが有るようだ、
まぁ、有り得んな、あらかじめ設置した罠の類いだろう、ならば襲う場所をこちら決めれば、あの攻撃は無い、
あのガキ、ウィートを目指しているのか、あー、そう言えばガキの故郷らしいから心配で見に行くのか、あのガキは何かしらのスキルでゴブリンに感知されないようだからな、
あの歩き方は俺を警戒しての動きだな、
先回りして隠れ近付いた所を仕留めてやる、ある程度の距離に近付いて仕舞えば狩人など相手にならんからな)
元神殿騎士長は、アースを索敵範囲に入れながら先回りすべく迂回してウィートに向かった。
(主人、あの男、主人がウィートに向かってるのにやっと気付いた様です、主人の後を付けるのを辞めてウィートに先回りすべく移動を開始しました)
(了解、奴に感知外に行かれないようにしながら移動するよ、止まったら教えて、タロとジロに周りのゴブリンを集めてもらうから)
(集める必要は無さそうです、ゴブリンアサシンがあの男を追いかけてます、居る場所は正確には分からないようですが回復魔法の残り香で追ってるみたいですから、他のもすぐ集まりますよ)
(奴が僕を待ち伏せする為に止まったらそこを襲撃場所にして、もう1度仕掛けるよ、奴を休ませたくないけど、奴が隠れたら、周辺の採取に見せかけてドデカイ彼奴だけが掛かる罠を仕掛ける、後は僕用の彼奴が追えない逃げ道も念の為にいくつか作ろう)
(アース、それだけの用意をしていたら丸一日はかかるぞ)
(クロをとことん使えば半日以下で終わるよ)
(笑顔が怖い、ワイはどんだけこき使われるんですか?、魔石が無いとワイはあんまり継続して動け無い、あっ、そう言えばあの男が倒したゴブリンの魔石がイーパイ有りましたね、あの魔石の分だけワイはこき使われるんですね)
(分かってるじゃん、クロは魔石が有れば疲れ知らずだから助かるよー、前回の僕の許可無しで魔石を食われた時は頭にきたけど、なかなか便利に進化したから許してあげんだから感謝してよね)
(あれで許したんですか?、しっかり虐められ・・・許して頂きありがとうございました)
(ウンウン、分かればいいんだよ、分かれば、あとしっかり働けよ、魔石を食べるんだから)
食べた分を働かされるから、寧ろマイナスなんだけど。
(なんか言いたそうだね、クロ、立ってる者は)
(師匠でも使え)
(分かればよろしい)
(うー、主人は鬼だー)
歩きながら父と罠の種類を相談した。
前の父が大柄だったので自分の引っ掛かった罠を伝え、それを参考に考え。
途中クロが自分が居た縄張りに今から仕掛ける罠を仕掛けられた時にどうなるか考え、これだと仲間を守れないと落ち込み。
もうクロは守れないだろ〜が、と父がツッコミを入れて更に追い討ちを掛けて落ち込ませていた。
どうやら人が村にしなかった縄張りは残った動物や魔獣が進化して新たに縄張りにする決まりらしい、だからそこへ行き後釜の仲間に色々と仲間を守る手段を少しでも教えたいらしい。
(後で寄るとしよう)と、伝えたら凄く喜んでいた。
移動中朝に成ったのでイリーナに連絡してお互いの現状報告をした。
イリーナだが、どうやらクロの言っていた成長期に入ったと喜んでいた、昨日の1日の森での訓練で無音移動や魔力隠蔽を習得、今日は投擲と弓のスキルを身につける為に訓練するから成果を期待していて、とっ言っていた。
(アースと森を歩いた時に後少しで習得しそうだから成長期と関係無いんじゃ無いか?)
(ワイもそう思います)
(((・・・)))
(まぁ、明日の連絡で慰めてヤロウ、そうしよう、うんうん)
アー、慰めるつもりは無いな。
あー、主人、イジル気、満々だー。
しばらくして昼頃に元神殿騎士長が止まった。
(主人、あの男が止まりました、すいません近くに小川が在るのでもう少し近付かなければ正確な場所は分かりません)
(止まっているなら辺りの散策して罠を仕掛けるぞ)
(こんな離れた距離に仕掛けるんですか?)
(クロ、アースはワザと見付かりここら辺まで追わせるつもりだ、タロとジロも呼んで罠の場所を教えておけ、彼奴がタロとジロの方を追うかもしれん、罠の場所を把握して罠に導けば1回はまともに引っかかり少しは削れるかもしれん)
(なら、僕とタロとジロを追う為の視界確保をする為に斬りそうな枝をスイッチにして罠が作動する様にするね)
(主人、罠のスイッチの掛け方がイヤラシイ)
(罠は相手との化かし合い、何気無い行動でえげつない罠を作動させる、更に逃げたり避けたりした先に更なる罠を仕掛ける、これが強い奴を仕留めるやり方だと教わった。
実際、強者は1つ目はだいたい躱す、2つめで隙を突ければ少しのダメージ、3つ目から5つ目までで仕留められない奴は、罠だけではまず仕留められない)
(罠で仕留められない奴はどうするんですか?)
(狩りなら逃げる、どうしても仕留めなければならない時は自分を罠の一部にして入り仕留める、今回は罠だけだと通用しそうもないから最初から僕を罠の一部として攻撃していく)
(そうだな、彼奴はただ設置しただけの罠では傷すら付けられんだろう、罠は攻撃の一手段として本命はアースの槍だな)
至る所に罠を仕掛け、そこまで行く為に逃げるルートにも布石を用意して奴が罠に掛かり易くする工夫もした。
(主人、あの男の周りのゴブリンが匂い有る場所であの男が見付からないので散らばり始めました)
(不味いな、また集める必要があるな)
(大丈夫だよ、指揮官タイプは近くに居るから敵の場所さえ教えればすぐ集まるさ、クロ、頼んだ罠は出来た?)
(あとは主人が仕掛けるだけです、でもこの罠では殺せませんよ)
(バカだなー、殺せる程大きな罠に、あの感知系の化け物が引っ掛かるわけないだろ、ゴブリンに攻撃させ僕等が隙を突く為の足止めだよ足止め、仕留めるのはクロと僕の槍だよ)と言いながら罠を仕掛け始めた。
(クロ、アースの考えが分かったら、引くぞー、物凄い他力本願だからな、美味しい所取りの)
(まあ、逃げる為の罠が有るのでワイ的には不服は無いですが)
予め決めていた場所に夜までに罠を仕掛けきった。
(では、少し寝ますので見張りを宜しく)
そう言うとスースーと寝息を立て始めた。
(父さん、主人、本当にこの状況で寝ましたよ)
(我が子ながら図太いのか、仲間を信頼してるのか分からんが、どちらにしてもアースの師匠は凄いな、罠の仕掛け方や布石を聞いてなければ我でも簡単に騙されそうだ)
(人間って怖いですね、力では無い怖さが有りますよ、今ならワイが主人に倒された事に納得出来ました)
(そうか、処で何でアースはクロを槍にしなかったんだ?)
(あー、知らないんですね、魔装は武器は剣以外は許可されないからです、剣も投げたらある程度の距離に離れたらアイテムボックスに戻り直ぐには取り出せません)
(何か?すると魔装での遠距離攻撃は出来ないのか?、だからアースの矢や槍は魔法金属なのか!)
(そうですよ?、常識ですよ?)
その後の話しで、創造神は人類に、魔法以外の強力な遠距離攻撃を絶対に与えないという事は分かった。
しばらくの間クロにこの世界の事を聞いた。
ドラゴンにスライムについてと、罪についてだ。
ドラゴン、空と標高の高い場所はドラゴンのものだそうだ、大型の鳥は死滅、飛ぶとドラゴンに死ぬまで追われる為に飛行魔法も失われ、空を飛ぶ乗り物は必ず落とされる為に使われなく成ったそうだ、
因みにこの世界のドラゴンは不死である高さ以上の場所に何処にでも現れ攻撃して来て、通用する武器や魔法も無いそうだ、つまり高い所には行くな、と言うことらしい。
あと、この世界の虫などの小さい生き物はゴブリンが探し出して餌にされた為に死滅か巨大化して凶暴化する事で生き延び、それにより壊れた生態系のバランスを取るためにスライムが生まれたそうだ。
因みにこのスライムだが核を持たない魔法生物で普段は水で有機物の分解する時だけ魔力を帯びて現れ、攻撃しても何も得られず、生きている者には無害なので、今は見かけてもあそこに死体があるのかなーぐらいの反応になるらしい。
罪は都市の中での犯罪にだけ付き、罪人は都市には入れない、罪は外で人殺しをしても付かない、たが善行は罪を消す作用があるそうだ。
外で罪が付かない理由は、亜人や人のフリをする魔族と勘違いが有るかららしい、つまり、壁の外は何でもあり。
後でアースに聞いたが、その中で敵は殺しつつ仲間と如何に助け合うかが重要だそうだ。
父とクロの話しが終わった頃、アースが仮眠から起きて、いよいよ作戦が開始された。




