34絶望と希望
朝寝る前に脱いだ鎧を着て2人で外に出ると常連さん並んで以外はいなかった。
「やはりそう来たか」
「悪い噂を皆んな聞いて来なくなったのかな、今までのデマはすぐ消えたのに」
「この都市は駄目かもしれない、思ったより堕落させられてる、販売は早く終わりそうだから売り終わったら村の様子を見に行こう、村長に謝らないと」
「アースくん、なんか落胆させてるみたいでごめんなさい」
「気にしないで、だいたい予想通りだから、本当に常連さんが最後の希望になったね、あの人達が来なくなったら踏ん切りが付くんだけど」
「・・・、私、顔見知りに話して来る、苦手だけど話して来る、この都市を助けたくてやってるって話してくる」
「無駄だと思うけど頑張って、この都市で僕はイレギュラーだと思う、そのイレギュラーは弾かれる、例え他の都市の常識だとしてもね、聖騎士様、僕をどう思いますか」
「絡まれたからといって、殺すのはどうかと思うな、罪にならないから正当防衛なのは分かるけど」
「ね、これがこの都市の常識」(もう末期なんだよ)
「常連さんが買いに来なくなる前に何とかする」
(イリーナも何となく分かってるじゃないかな、この常連さんもいずれ買いに来なくなるのを)
(アース、無駄かも知れんが足掻かせてやれ)
(主人、崖っ淵なのをなぜ民衆に話さないのですか?)
(話したら混乱の渦に僕達も飲み込まれる、最悪は理不尽な責任を押し付けられ集団に殺される、現状の話しが少しでも出たら都市を出て行く、
これはトップ2人にも話した決定事項だ、イリーナが付いて来ないなら置いて行く、可哀想だがそれが選択なら諦める)
(主人、人は愚かですね、主人を見ていたので分かりませんでしたが)
(クロ、愚かな指導者を長にすると群が全滅する、動物も人も同じだ、駄目な群れからは早く離れろ、これは師匠の言葉だ、今言い付けを破ってやってる、だから、潮時は変えない)
(何でみんな買いに来なくなったの、何で?)
冒険者ギルドに入り会話を聞いて唖然とする。
「あの串焼き屋の肉は古くて臭いらしいぜ」
「あの串焼き屋はケチで贔屓しやがる、買うなよ、買った奴は仲間じゃない」
「あのガキと女に冒険者が何人も殺された、ちょっと絡んだら殺す危ないやつらしいぜ」
(アースくんの言う通り、この都市の冒険者は駄目だ、でも)
「この都市はぬるいのよ、
私は黙って犯されろって言うの、
黙って殴られても抵抗するなと言うの、
2対5で脅され、警告しても笑って襲って来たのにやり過ぎ、野盗の様な行動にやり過ぎ、
巫山戯るな、私は見捨てるわ、こんな都市、
まともな冒険者達、早くこの都市から出た方がいいわ、野盗の仲間が沢山いるギルドに居ると野盗の考えに染まるわよ」
(商売に公平な商人ギルドなら)
結果は同じだった、アースの悪い噂、串焼きの悪い噂、肉の悪い噂。
(何で今までは悪い噂も出所を抑えすぐ消えたのに、何で今回はこんなに広がるの、買いに来た人達も何で嘘の噂を信じるの、何で)
「アースくん、何でなの何でみんなは嘘の悪い方の噂を広げるの、何で普通の値段で高い品質の肉を売ってるのに、悪い噂が立つの、何で警告までしてるのに襲われた私達が悪く言われるの、何でなんでなの?」
「他から来た者は他所者、他では考えられない考え、行商人、ハンター、冒険者、他の都市から来た奴は厳し過ぎる、もっと楽に考えよう、楽する為なら邪魔者は排除しよう、俺様の言うこと聞いていれば甘い汁が吸えるぞ」
「でも、市民は?、何で暮らしが苦しいのに美味しいものが食べれないのに、何で?何で苦しめる偉い人を非難しないの?」
「楽だから、考えずに生きていられるから、楽しみながらの危険より、ただ安全に生きていたいから、
長は長になるのに偉そうな事を言い、長になる時に言った事を誤魔化し、話しをすり替え、権力を使い黙らせる、
チカラは与えてしまってからは取り上げるのは難しい、段々周りを騙し懐柔して騙した長は上に上がって行く、
ある程度上がったらもう終わりだ、長に壊されるまでそのままか誰かが立ち上がるか、
ただ下まで腐れば立ち上がれずに崩れて終わりだけど」
「アースくんは賭けてみてくれたんだね、下まで腐っていない方に、まだ望みは消えてないんだね」
「かろうじて、でも多分消える最悪の形で」
「私がさせない、消させない」
「神殿区の僕達では無理だ、なる様にしかならない、傍観するしかない、イリーナ、精一杯笑顔で売ろう、イリーナにそれが出来たらそれだけで僕の苦労は報われる」
「分かったわ、笑顔で売るわ、次の方どうぞー」
「聖騎士様、今の会話を聞いた感想は?」
「我々の考えは甘いのか?、他の都市では通用しないのか?、だが他から来た神殿騎士長達は!、まさか話の中の長は神殿騎士長とその直属の神殿騎士の事なのか?、
いやそんなはずは無い、神殿騎士長は民の為に命掛けで魔物と戦い、都市を守ってくれている、ありえ、るのか?、
そう言えば他から来た大神官様が厳しい事を言っていたがワザと厳しく言っていたと思っていたが、あれが常識だとしたら我等聖騎士は魔物と定期的に戦っていないのはおかしい事になる、
そうなると聖騎士は神殿騎士長が言ったシンボル的な者では無く大神官様が言った自分で考え民を守るために先頭に立ち戦う者という事になる」
「それが他の都市の常識です、聖騎士は神殿騎士長より立場は上、個人独自で動けて罪を裁ける者です、
罪が無い者も質問して回答を迫れる権利があります、あなたは今の話を聞いて立ち上がりますか?、
あぁ、僕は神官見習いです、地方へ行く神官になる為に役職の権利は知っています、何なら今の権利や立場の件を大神官長に聞いてくださいその方がハッキリします、
後、大神官長様にアースが最悪の事態になりそうだ、と伝えてください」
「分かった、ちょうど交代も来た、伝言を伝えるのと君の言った聖騎士の立場を確認して来る」
(アース、今の聖騎士が波紋になればまだ望みはあるな)
(イリーナと僕の話しを聞いて、神殿騎士長の教えに疑問を感じるならまだ望みが有るかも、過去に来た大神官様に感謝だね、
聖騎士は大神官長に質問は出来ない、だから聞けずに違和感だけを残し厳しく言われたと解釈してたんだね、
聖騎士の立場云々は質問ですら無いけどね)
(娘、まだ望みが出て来たぞ、新たな広がりそうな希望だ)
(私、頑張る私達を信じてもらう為に笑顔で話し、私から話しかけて希望を繋ぐ)
(頑張れ、僕も頑張るから)
その後に列は途切れたが、イリーナが笑顔で客引きをして、常連さんが他のお客さんを連れて来て、イリーナの客引きできたお客が常連の知り合いでとまた並ぶ人が増えていった。
(アース、審議眼を使ってこう質問して肉を買えたら家族と食べますか?と、食べると答えたら信用できると思わない?)
(分かったよ、不本意だがその条件で肉を売るよ)
(やったー)
この分なら近い内に仲良くなっても僕だけに依存はしないかな。
その後、笑顔で話し肉の販売を許可したお客さんに嬉しそうに肉の部位を父に聞きながら説明していた。
そう、父に聞きながら。




