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32英雄の卵とキャラバンとの話し

「イリーナは寝ちゃったね」


(無理も無い、今回の戦いは命懸け、それも分が悪い方のな)


(主人、この雌、英雄の卵ですね、多分ですが主人に会わなけれは割れる前に死ぬ確率の高い大器晩成型です、あと少しで成長期に入ります)


(イリーナは今でも強いよね、今から伸びるの?)


(おそらく、そうなります、単に今の雌の強さは努力の結果だと思います、


 因みに主人は、・・・異常です、攻撃力は低いのに何故かワイを倒す、あり得ませんでっしゃろ、失礼、有り得ません、


 主人のステータスには何か在ります、見えない何かが)


(つまり、・・・


 僕のステータスを僕の許可無く見たんだな、


 そしたら自分がどう見ても負けるわけないから何かある事にしたいんだな)


(あっ、間違いでした、嫌、イャダァー、インベントリに入れな)


「しばらく反省してろ」


(あいつ、馬鹿だな、あいつが鑑定を持っていたのは驚きだが、自爆するとは、本当に馬鹿だな)




「タロ、ジロ、村はどこまで外壁が出来た?」


「ウオーン」「オンオン」


(このイメージは余り進んでない様だな、ヤル気もあまり無さそうだ)


「当然だと思いますよ、神殿騎士長は、僕を殺して今回の買い占めの肉を売り捌いたら逃げるつもりでしょうし、もう受け入れる都市は何処にも在りませんけど、


 部下は記憶の欠落していて、欠落した記憶対象がいる、確認したらその環境になると記憶障害で物事が忘れがちになるらしいです、進む訳が無いですよ、村長を任せたハゲハンターに申し訳なくて」


(週一で行う物資の配達と連絡時の4日後までにどこまで出来ることやら、その時に村長に何か差し入れしてやれ)


「4日後が見ものですね、僕が健在で現れ、次々に買い占め犯が捕まってる事を話したらあのクズがどんな顔をするかな、


 また周りの反応がおかしいのに気付いても、契約で記憶が消えているかも知れないから仲間にも相談もできない、ザマーミロだ」


(クロは不寝番をさせるから出しとけよ)

「うん、分かった」

 クロをだしてやるとぬいぐるみモードになり敬礼した。


(不寝番ですね、頑張ります)


「クロ、よろしくー」

 そう言って眠りについた。




 あのセリフ、「ザマーミロだ」は我が前の世界で召喚されてから覚えた嫌味に言われた言葉、王国の王子にぶつけ返した言葉だ。



 子供を後ろに隠す王子夫婦に言ったあの言葉「他人の子供は人質にしようとして死なせておいて、自分の子だけは大切か、安心しろ、お前らみたいに子供を先に殺す様な事はせん、一緒に、死ねー」燃え上がる王子と家族「我と同じ子供を守れぬ苦しみを味わいながら死んでいけ」燃え崩れるのを見たあと「ザマーミロだ」・・・(アースに我の身体の、魔王の影響が有るのかもしれん)



(主人の父さん、主人のあの性格は魔王の身体の影響では無く、主人の今までいた周りの人の影響だと思いますよ)


(クロは何でそう思うんだ)


(子は親に似る、私の親は弱気を挫き強気に媚びうるが信条でした、ワイもその考えを引き継ぎ、強くなっても変わりませんでしたから、多分です父さんではなく、親代わりの神官さんと狩人の師匠の影響だと思います、父さんは全く全然関係無い、です)


 気不味い沈黙が続いて。


(クロ、励ますフリして、我とアースの繋がりを全否定したな、貴様は我が念話だけで何にも出来ないと思っているのか、アースが寝ているならこの身体は元々我の身体、貴様をインベントリの中に入れるのくらい容易いのだぞ)

 ぬいぐるみモードのクロを掴みインベントリの入口を開けた。


(御免なさい、言い過ぎました、イヤーダー、中は嫌だー)

 入れるのを止め入口を閉じた。


(クロ、お前は我と同じサポートだが絶対的に我が上だ、わーすーれーるーなーよー)


 敬礼して(はい、肝に銘じました)と直立した。


(お前は本当に弱気を挫き強気に媚び売る性格だな、そういう所は嫌いでは無いが、アースはお前の主人、アースより強い奴が現れたからと言って裏切るなよ)


(その辺は大丈夫です、主人が寿命で死ぬまでの年数は、主人が殺されたらワイは何も感じられないあの地獄の時を過ごさなければ成らなくなります、


 身体が壊れ死ぬより辛いです、


 ですから裏切りはあり得ません、今は特に楽しいですから全力でお使いします)


 その後は暇だったのか、サポート同士話しが弾んだ。




 翌朝早く、都市ライスの門が開くと同時に中に入り神殿を目指した、


 本来有るはずの、朝から門の前に出来る順番待ちの列も無く、神殿区に来た市民が異変を感じ取り不安だ表情を見せ始めた。


 神殿はまだ開いていなかったので、警備の聖騎士に昨日の夜に襲われた事を話し、鎧と魔剣以外の装備を剥ぎ、死体と魔剣、持ち物に有った依頼書を渡し後の処理をお願いして、串焼きと肉を売る準備に取り掛かった。


 準備と言っても、テーブルとお金を入れる袋、ダミーの袋を出すだけだが、準備を始めるとすぐに買うための列が出来た。


 手伝いの子供と警護の聖騎士が揃い販売を開始した。


 列を見て慌てて何処かへ行く者の気配を父に覚えて貰い、その日の販売は何事も無く終了した。


 夕方、キャラバンの皆さんが泊まっている宿に話を聞きに行った。


 宿の人に伝言して、食堂で肉の無い夕食を食べて待っているとキャラバンの皆さんが食事に来て、隊長だけが僕達のテーブルにやって来た。


「今日の取り引きの話しをする前に、夜に君達の後に門から出た冒険者が何か君達に失礼な事をしなかったか心配だったんだが、何もなかったみたいで安心したよ」


「魔物使いを含めた5人の冒険者ですか?」


「あっ、あぁそうだ、ライスが元のホームだと聞いたので、ゴブリンの露払いに先行してライスに行ってもらい、帰りも同じようにお願いしていたのだが、別の依頼が出来たとキャンセル料を払われ断られたんだ、


 昨日の夕方に君達の後を追うように門から出て行ったと聞いて

 気になっていたんだ」


「そいつらなら、襲って来たのでキッチリ倒して聖騎士に引き取ってもらいました」


「え?、倒した?、彼等は討伐依頼の達成率で定評があるAランクのパーティーなんだが、倒した、のか?、いやそうじゃなくて襲われたのか、・・・すまなかった、我々の依頼ミスだ、


 キャンセルできない様に行き帰りで1つの依頼にすれば良かった、


 そうすればキャンセルでは無く失敗になるので冒険者は評価の落ちる失敗を嫌うため迷惑をかける可能性が少なかったのに、本当にすまなかった」


「もう謝らないでください、彼等の口調だと報酬が破格だったらしいので、失敗になったとしても受けていたと思います、


 それより肉の契約はどうなりましたか?」


「やはり難癖を付けて買い値を下げて来た、契約通りでないなら他に売る所があるから契約違反でいいなと言ったら、渋々契約通りで買い取っていったよ、我々の出来るのはここまでだ、我々は明日ライスを出る、成功を祈っているよ」


「ありがとうございます、皆さんも気を付けて、あいつらお金を取り戻す為にキャラバンを襲いかねない状態ですから」


「注告は感謝するよ、だが、これでも手練れのキャラバンだ、襲ってくるなら、逆に返り討ちにしてやるよ」と笑い。


 しばらく食事をしながら僕達からはウィートにいるゴブリンの情報を、彼等からは、各都市の場所やその周りの村の場所を聞き地図を書いていった。





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