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26擬態と崖っ淵

 今僕達は工房の控え室で魔装を装備して身体を動かし邪魔な部分がないか確認中だ。


 僕もイリーナも動きに問題無いことを確認した。


 黒刄丸の鞘だが白から色を変えれるらしい、変えれる色は白と黒と灰と茶にそれらをまだらにも出来た。


 今はクロは頭の上に在る?居る?、こいつ、控え室に入り作った物を装備して上にいつもの革鎧を着て、問題無い事を確認した途端にぬいぐるみの様になり、頭の上に陣取った。


 今のクロの姿は卵を横にした様な頭に垂れた耳、大きな黒目に小さな鼻と口、体はポテッとしていて短い手足が付いている。


 本人曰く、この姿で頭の上に居ると殺傷力は無いが、相手の攻撃を手を伸ばし弾く防御と索敵に特化した形態だそうだ。


「イヤーン、可愛いー、触らせてー」


(動物好きのイリーナなら、そうなるよね)


(主人、主人以外がワイに触ると最悪は死ぬけど、触らせるか)


「イリーナ、こいつは魔装だぞ、触るって意味分かってるのか?」


「ウッ、そうだった可愛くても呪いがあるんだった、ねえ、チョットー、何とかならないの、何とかしてー」


「そのうちに裁縫スキルを習得してクロそっくりのぬいぐるみを作ってみるからそれまで我慢しろ」


「私に裁縫スキルが有れば作れるのに、過去に必死に料理と裁縫を習得しようと努力したけど、何故か料理をすれば、焼けば炭、煮れば黒い何か、蒸せば破裂、茹でれば具材が溶ける、まさに呪い、裁縫は・・・不器用過ぎて着れないものしか作れない、悪夢だった、どうせ私は、ブツブツブツ」


「またか、またトラウマか、ハー」


(戻るまで放置だな)


「えーと、イリーナの鎧下と鎧は問題無さそうだな、剣と盾は、あの様子だとまた後での確認になるな、イリーナ、悪いけど先に寝るぞ、駄目だアリャ」





 昼前に起きた。


「イリーナ、おはよう・・・・何だ、まだ落ち込みから戻ってなかったのか、イリーナ!、イリーーナ!、串焼き売りに行くぞ」


「ハッ、えぇ、行きましょう、アース、家事ができない女の子は、嫌い?」


「別に嫌いじゃないぞ、好きにもならないが」


「ヤッタ、グハ、好きにもならない」


(娘、他で好きにならせればいいんだ、頑張れ)


(そうですね、他で好きに・なら・せ・れ・ば、・・・私が女として好きになってもらう所、何処?)




 考え込むイリーナを押しながらいつもの場所に来て、インベントリで調理した串焼きを鞄から出した様に見せかけ販売して行く、


 いつも買っていく常連にだけ肉の販売を打診して行った。


 信用できる人への転売も補充の追加も問題ない事を説明していく、子供には”知り合いの大人も一緒に来ればその人にも売るよ”と伝えた。



「もしかして、これが露天販売をした本当の訳」


「正解、市民の中で信用出来る人にだけ売る、街の中には敵もいるけど、周りの人が味方になっている状態で邪魔をすれば周りから袋叩きになる」


「子供は大丈夫?」


「子供は、先ずは家族、次にご近所、親戚や知り合いになるけど、売るのはあくまで今までの常連だけ、新たな客には肉は売らない、子供が危険と感じれば安い肉を買う伝手が無くなるのを恐れ周りの誰かが勝手に守るよ、量は安全を考えて狙われる危険を伝えて売るよ」


「目の前での転売は許すの?」


「許すよ、だだし、常連の知り合いに限ってはね、”一緒に来ればいつでも売りますよ”って伝えてね」


「信用できる小売りをする人を得るための露店だったのね、これなら肉を敵に渡らせ難く市民には広げられるね」


「市民の中の敵は、焦って何かをやらかせば市民の敵なのが周りに知られる、家族ごと都市では爪弾きにされて生きて行けなくなるな、


今まで周りに苦湯を飲ませ、自分達だけ甘い汁をすすってたんだ、この際都市から居なくなった方がいい」


「どうやって市民の中のクズを排除するのかと思っていたら、街の方は街の人達自らの手で処罰させるのね」


「今回は上手く誤魔化しても、羽振りが良かった人が急に悪くなれば疑われるし、性格が悪ければ怪しまれ周りに見張られボロがでれば周りに通報され衛兵に調べられる、今回の件に関わっていたら間違いなく奴隷落ちだね」


「私、アースくんの恋人で良かったわ」


「・・・パーティー、解散していい?」


「チョーシに乗りました、御免なさい、仲間として頑張ります」


(娘とは付き合わないのか?)


(無理して明るくしてる間は駄目だ、もし僕が死んだら、今なら落ち込むだけだけど、恋人になって僕が死んだらイリーナは壊れて戻れなくなる、イリーナがもっといろんな人と触れ合い僕が死んでも一緒に泣ける友ができてから考える)


(成る程、分かった、もうこれ以上は言わん)




 皆んなが心待ちにしていたキャラバンは襲撃を返り討ちにして昼過ぎにやって来た。


かなり少ない数の襲撃で被害は無かったらしい。


(僕達を殺した後に合流する殺し屋が来なかったから数が足りなかったのか)


(ということは殺し屋は粗方排除されたのかな?)


(おそらくはそうだ、ただ、今回腕利きはいなかった、まだ仕掛けて来るぞ都市区と神殿区の門は審査が厳しく鳴ったから都市区に殺し屋はいないな、こっち側に潜伏して機会を伺ってるんだろ)



 キャラバンのもたらした肉はまたしても買い占めが有り、肉は相変わらず高値で取り引きされていた。




 キャラバンが宿泊していた宿屋に挨拶しに行った。



「こんにちは」


「おう来たか、肉の買取だが、案の定、持ち込んだ肉の買い取り量を制限された、だが今回買い取った街の商人達が3日後に同じ量の買い取りを保証するとの契約で2割の手付け金を貰い、更に滞在費を商人持ちにして引き下がったが、これで良かったか」


「問題無いですが、商人ギルドが買い取れない場合はどうなるのですか?」


「契約上では商人が買い取り出来ない場合は手付け金は返さずに肉の神殿施設内での販売を許可させた、あいつらはどうせすぐには売れないと言って馬鹿にしやがった」


「金額はいくらになりますか、売れない場合は有り金全部で買えるだけ買います」


「手付を引いた値段でうるよ、足りない分は後日の支払いで売ってやる、あいつらは命がけで荷を運ぶ行商人を鼻で笑い馬鹿にしやがった、


 実はな、今回の君の計画が失敗した時は、以前からライスの商人ギルドの買い占めの関与と職員の態度の悪さが問題になっていて、他の都市の行商人はライスの商人ギルドが責任を取るまで行商人が寄らない事になった、


 我々キャラバンが最後の行商人だ」


「この事は商人ギルドには言いましたか?」


「いや、言わない、後日、神殿と領主、それと各ギルドの責任者に手紙で通達されるはずだ、ライスの民は国から弾かれ各都市との移動と取引は終わりだ」


「やっぱり、そうなりましたか、キャラバンの来る頻度が減っていたのでもしかしたらとは思ってました、次が無い事をトップの2人に伝えてもいいですか?」


「構わないが、トップが変わっただけでは駄目だぞ、今回の犯人と責任者全員が皆が納得する処罰を受けなくては隔離と流通の再開はありえないとの見解だ」


「分かりました、買い占め犯とそれを許した都市を事が済むまでの罰を与える、その様に伝えます」


 僕は急いでこの事を大神官長に伝えるべく神殿に急いだ。




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