21貴族とキャラバン
街道に近い森を移動しつつ動物を狩り肉を確保、魔獣は現れなかった。
「変じゃないか?」
「何が?、危険な感じはしないわよ」
「・・・、感知系のスキルが有るのを聞いていないけど、やっぱり持ってたのか」
「えっ、アッ不味・・・・何のことかしら?」
「別に聞かないよ、僕も言わないし」
「それで、何が変なの?」
「魔獣がいない、森はかなりの数のゴブリンを狩ったから分かるけど平原にいないのはおかしい、警戒の鳴き声もないから、僕らから逃げてる訳でもないのに、変だろ」
「確かに、変ね、静か過ぎるわ、広い縄張りを持つ魔獣が居たけど寿命で死んだのかしら、それとも群れで縄張りを広く作る魔獣が縄張りを荒らした何かと戦ってるとかかな?」
アースは高い木に登り辺りを確認した。
「アッ、後者だ、誰かが襲われてる、あっ騎士だ!、離れて在る馬車の飾りからすると貴族か、街道に在る馬車は無人だな、
しかし何で草食魔獣の群れに襲われてるんだ?、アレ?、馬車のかなり後方にキャラバンが居るな、
キャラバンには魔獣が行ってないな、よいしょっと」
木を降りてアースは休憩を始めた。
「アースくん、助けないの?」
「何で?、あれは自業自得、草食魔獣の群れにチョッカイを出して、反撃されて、やられてるだけ、
キャラバンも助けてないしキャラバンにも群が行ってないから助ける必要ないよ、助けたいなら、どうぞ」
「あの馬車は貴族だよ、謝礼が貰えるよ」
「まともな貴族ならね、あの貴族はまともな貴族ではないよ、
草食魔獣の群れにちょっかいをだしたら襲われる、そんな当たり前の知識を勉強してない貴族、つまりお頭が足りないぼんぼんだと思う、
助けたらロクなことにならない」
「見捨ててあのキャラバンの人達が後で責められない?」
「問題無いね、外では自分達の荷物以外は守る義務がない
だから責められないよ、
それに、あの貴族は草食魔獣の群れの怒りを買った、確実に皆殺しになるから文句も証言も無い」
「何で手を出したのかな?、草食魔獣は近寄らなければ襲って来ないのに」
「大方、肉を得る為に草食動物のハンティングのつもりで攻撃したんだろ、そうでなければ縄張りを空白にする手柄の為に、群れの中心に居るボスでも倒そうと近付いたか、
後者なら知らなかったんだろ、ボスが死んでも次の奴がボスになるから、群れでいる魔獣を倒すなら時間をかけてはぐれた個体を狩り、数を減らしていくか、大人数で一気にやるかだけど、どちらも割に合わない事を、
前者なら長期に渡って腕利きのハンターが多数いるし、後者なら物凄い人数の犠牲が出る、
草食魔獣の群れは近付かなければ攻撃して来ない、逆に1度でも警戒範囲に入れば囲まれて群れに追われる、
普通は威嚇されて近寄らないのに、それすら知らない馬鹿はほっとけ」
「馬車と馬と装備を後で貰っちゃう?、素材にすれば分からないよ」
「キャラバンの対応しだいだね、放置して行くなら使える物は回収しよう」
「終わったみたいね、街道から離れて草原に戻っていくわ」
魔獣の群れから距離を取りつつキャラバンに向かった。
キャラバンに手を振り、ハンターとランクが表示されたタグを見せながら近付いた。
「そちらに被害はありましたか?」
「無い、そちらは?」
「無いです、何で、ああなったか見ました?」
「俺達が見た時は、馬車から離れた所で襲われてたな、やらかしたんだろう」
「やっぱりそうですか、回収はしますか?」
「しないよ、騎士の装備は重くて使えないし、あの馬車を運んでも貴族に取られるだけだ、馬をこちらが貰っていいなら残りはどうぞ」
「交渉成立で、今からライスに向かいますか?」
「向かうぞ、この件での報告か?」
「いいえ、僕らもライスに戻りますから、僕から報告しておきます、それとは別件なんですが、肉はどれ位ライスで販売しますか?」
「ライスで買い占めがあるって聞いて、嫌がらせの為にかなりの量仕入れて来た」
「一括で売るつもりですか」
「何だ、回し者か」全員が剣に手をかけ始めた。
「いいえ、潰す方です、僕にも手持ちがあって、ハンターのギルドタグと串焼き販売許可証を今から見せて証明しますから、肉を買えるだけ売って欲しいんです」
「君か、買い占め規約違反を潰す為にライスに残っているハンターは、この間来たキャラバンに君のことはきいてるよ、我々は隣の都市リーフの商会のキャラバンだ、理由を聞いて肉はかなりの量仕入れて来た、計画を聞かせてくれ」
計画を話し、内容に不備が無いか話し合った。
やはり問題は黒幕だった、神殿騎士は基本味方なのが前提だ、だが敵となると逃がされて失敗するかもしれないと言われた。
村に行かせる神殿騎士にまともな神殿騎士と変えられて行かせられたら君が危険になると言われたが、もしそうなっても決行する事を伝えた。
キャラバンは今日は野営地で一泊して、明日昼頃にライスに入ると予定だと言われた。
騎士と貴族の装備と馬車に荷物を貰い帰りに向かった。
いよいよ明日だと意気込み、ライスの近くに来ると、いつも出入りしている門へ続く草原の草影や藪の中に複数の人の気配が広い範囲にあった。
「僕達への待ち伏せだね、どうするの?」
「僕達を確実に殺すつもりだな、まさかの多数のフルプレート装備の待ち伏せ、あいつらに弓矢は効かないなどうしようか、まさか2人相手にいきなり数と重装備で来るとは思わなかったな」
全員仕留められるかなー?、逃げられたらゴブリンの所為に出来ないし、警戒されたくないしなー、
仕方がない、まずはこちらを発見してもらってから森の奥におびき寄せてから、少しずつ仕留めるしかないか。
「イリーナは人にキッチリとどめを刺せる?」
「奴らは盗賊と同じ、キッチリ殺せるわ」
「上等!、よし、タロ、ジロ、おいで、・・・来たな、ヨシヨシ、先ずは僕が囮になって森の中に引き込む、
イリーナはタロとジロと一緒に森で僕を追って来た奴を仕留めて、僕は走り抜けたあと、後ろから援護する」
「囲まれそうになったら森の奥へ後退しても、いい?」
「この辺の森に魔獣もゴブリンも居ないはずだし、居ても僕が排除するから安心して後退して下さい」
(よし、やるかー)




