18友と毒舌
(というわけだ、娘、分かったか?)
「何でそうなったのか疑問は残るけど、アースくんの現状は理解はしたわ、
要は、強い父と合体して強くなったけど、父がケチって大して意味が無かった、ってことでしょ」
(グッ、痛い所を、クッ、かっ、かなり強くはなったのだ、攻撃系は上げなかったが他は超人レベルだ、ただ魂の能力が低く人外レベルまで上げられなかっただけで)
「えっ、何、僕が悪いの?、違うでしょ!、
魔物達が持つ角、爪、牙、それとゴブリンとかの生態武器が父の想像より強過ぎただけでしょ、
だから人類は武器と防具で強化して対抗してると思っていたんだけど、違うの?」
「違わないわ、ラノベのカッコイイ勇者みたいじゃないけど」
(娘、五月蝿い!、アース、アースの意見は正しい、正しいのだが、我は悔しいのだ!、
全てを奪ったあの女神に我の行動をまんまと出し抜かれたみたいで、
世界を破滅させた我に対して、恨みが消えても我が消えない様に存在意義を用意されていた事が、
あの世界であやつが何故その考えを実行出来なかったのかが、・・・悔しかったのだ)
「その話しは置いといて、チカラは結局はこれでよかったんだと思うよ、僕は」
「私も、そう思うわ、だってこの世界の人類は罪を償う為に生かされてる罪人なのよ、馬鹿みたいなチカラは神からの排除対象になると思うわ、だって神が直接チカラを震える世界なんだもの、
ただ不思議なのは、その罪人であるはずの人類なのに、過去の英雄達のみんながみんな強い支配欲が無いのよね、少なくとも過去に強いチカラをもった暴君はいないのよ、
これって神がワザとやってるのかな?」
(娘、その推測は当たってるかもしれんな、英雄は創造神様が適した転生者を転生させてるのかもしれんな、
管理神は人類に絶望して、新たな調整種として仲間を大切にする動物を人型の魔物、亜人として強く進化させて誕生させた、
しかし人類同様に家族には優しいが、他は同種でも敵対した状態からのスタートになった)
「父さん、だとしたら、創造神様は分かっていて、管理神様は知らなかったのかな?、
強い魔物は同族に優しくてもチカラの支配でしか群れないのを、
知性が有り1匹だと弱いから仲間を作り、強い者も1人では生きられないから仲間に優しくできる、賢い者は強い者が仲間の為に知恵を求められるから必死に考えるのに、
前の世界も、上手く行ってる方が少なくてブラックが数は多かったんだから仕方がないけど」
「フーン、やっぱりイリーナさんは僕の前では馬鹿なフリしてたんだ」
「違うの!、最近までは深く考えたら、壊れそうで、潰されちゃいそうで、あまり考えない馬鹿になろうって、そうしないと耐えられそうもなくて、
アースに出会ってからなの、だんだん頭がハッキリして来て、考えるのを止めるのをやめて、最近やっと元の自分になったの」
「ごめん、本当にごめんなさい」
「許します、感情の無い駒から人に戻してくれたアースくんだから、許します、だからこれからもよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
2人笑いながら握手した。
今まで仲間はいたが、この世界での初めて秘密、疑問、
恐怖を打ち明け、受け入れてくれた友が出来たのが嬉しくて2人は泣きながら笑った。
この後2人は今から作る装備に付いて話しながらタロとジロと遊び撫で回して戯れた。
(この面子は賢く優しいが、口さがない者しかいないのか、自分もそうだから言わんが、タロとジロが癒しだ頼むぞー)
「クゥーン」無理
「クゥー」嫌
2人でライスに戻ると門兵に呼び止められ、兵士長から明日の神殿で行われる会議に出席して欲しいとお願いされた。
兵士長曰く、キャラバンが立て続けに来るのを、隣の都市にウィートの壊滅とゴブリン獣軍の情報を伝え、ウィートの周りの都市との共同討伐の伝令をした騎士達が帰りに確認したそうだ。
「いよいよね」
「そうだね、準備と敵は把握されてる、後は破産させて止めだ、肉が高値で売れていない連中には今回のキャラバンが予算的にまだ来て欲しく無いのは分かってる、
おそらくキャラバンが売る生肉の全てを買い取れず、その為にキャラバンに妨害工作を仕掛けるだろう事も、失敗したら期限を決めた契約を結んで買い取るだろう事も、
僕の串焼き屋の間接的な邪魔を諦め、僕へ実力者が言いがかり付けそれを理由にして、闇討ち、暗殺なんかの直接攻撃してくるだろう事も、プププ、そうしたらこっちの物だ、
芋づる式に審議の場に引きずり出して、クズな行いを後悔させてやる」
「アースくんのこうゆう時の顔は、魔王ポイよね、
普段は幼くて可愛い感じで、頑張る時は凛々しい勇者、全部いいけど、
魔王顔の時を見ると、本当に私はあのままクズでは無くて良かったって思う、
もし私がクズでアースくんを敵に回したらクズなら必ず引っ掛かるアースくんの罠から逃げられそうもないもの」
「それって、褒めてる?、怖がられてる様に聞こえるんだけど、それを予測できるイリーナさんも大概だと思うけど」
(アース、流石は我が子だ、もう勇者でも英雄でも魔王でも行けるな、我はどれでもない家庭持ちの一般人になって欲しいが、
まぁ。チカラある者の定めじゃ、もし権力者に厄介ごとを無理矢理に押し付けられそうなら、全〜部捨てて厄介ごとを抱えていない都市へ逃げればいい)
(僕も一般人がいいです、今回の厄介事に首を突っ込んだのは尊敬する師匠が嫌がる、狩人やキャラバンや行商人の遣り甲斐を馬鹿にする行為だからです、
わがままな欲望の代償をキッチリとクズ共に払わせる為です)
(私にも2人の念話が聞こえる、えっ、ずっと?、いいの、やったー)
「イリーナさん、念話のまま表情を出したら、周りからは危ない人に見えますから注意して下さい、人のいる所でやったら他人のフリしますから話しかけないで下さい」
「大丈夫よ、やらないわよ」
(こいつは絶対にやるから、街中では最小限しか繋がない事にする)
「えー、酷いー、父さんが意地悪するー」
「イリーナさんの天然は好きですが、今みたいなぶりっ子は気持ち悪いのでやめて下さい」
「はーい」
(ホントに皆が毒舌だな、皆が受け入れてるから楽だが、何だかなー)




