10死闘とその後
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アースは統率している上位種を倒すため、上位種がいるであろう方向へ走った。
(このチリチリした感覚は場所なんか正確には分からないんだよ、まったく)
(おおよそ分かればいい、他とは違うゴブリンだ、見つかるだろ)
首の後ろに感じるチリチリが強くなる。
(あの辺の集団の中に居るはず、・・・おかしいな見当たらない)
(まさか見分けが付かないなのか、時間をかけるのは不味いぞ、このままだと囲まれる、
見える範囲のゴブリンだけでも100匹以上は居る、
こいつらの他にも上位種の隠れている集団を相手している間に、どんどん周りから集まって来たら対応しきれなくなる)
(分かってるよ、ん、・・・居たー!、他のゴブリンの後ろに隠れて、たまにこちらを覗き込ん出る奴が居る、
神眼の魔眼でも魔力は他と大差なし、鑑定は、駄目だ、かける前に隠れる、エーイ、あいつがそうだと思うのに、それなら)
後ろから覗いていた奴が後ろに隠れたと同時に方向を変えた、しかしゴブリン達は移動方向を変えるのがワンテンポ遅れてから付いて来た。
次はこちらを見てる間は同じ事をすると即座に反応してきた。
(やっぱりあいつだ、あの後ろに隠れている奴、あいつが統率者だ)
(アース、あいつ隠れてるのではなく盾持ちに背負われている、周りも10匹ぐらい防衛兼乗り換え可能な盾持ちだ)
(そんな〜、それじゃー突っ込んでも仕留める前に止められてタコ殴りにされちゃうよー)
(あいつの気配は掴んだ、煙幕か何かで視界から消え、光学迷彩であいつから逃げるのはどうだ)
(煙幕なんか手持ちに無い、罠魔法の濃霧や土煙は使えるけどに2属性は時間がかかるし風の強い平原では、すぐ消えて役に立たないよ)
(風のみの罠魔法ならすぐ作れるか、属性強化の風の方向も下から上にに変えれるか?)
(どっちもできるよ、罠も1属性ならすぐできる、でも2つ同時は無理)
(なら我が強化で纏っている風の方向を担当するから、アースは風で吸い込み一気に吐き出す罠を仕掛け、罠の上に土を被せろ)
(アッ、何をするのか分かったよ)
アースは進路を上位種がいる方からライスの外壁へUターンし、風ボムの罠を設置しながら飛んでくる魔弾や槍や石を転げ回りながらも避け近付くゴブリンは斬り殺しながら逃げた。
(やっぱり、統率ゴブリンは、魔法感知おっ、持っ、てるね、罠魔法に近付かない、よしこれが最後の罠だ、もうそろそろ、うわっ、罠の、作動時間、なん、だけど、どう?)
(回避に転げ回っていい具合の土煙になった、タイミングバッチリだな)
罠魔法が一斉に作動し辺り一面が土煙に覆われ、統率者の方に風を吹かし土煙に見事に巻き込まれた。
それと同時に周りから一斉に魔弾、槍、石が飛んで来た。
(感知系は当然持っているだろうな、他にも音、匂いの感知も持ってるはずだ、それを全て使えなくなっただろー、
流石に気配感知を持っていたらお手上げだが、気配感知は勇者で、マップ魔法は魔王の時に我が手に入れたユニークスキル、この2つで丸見えだー、ハーハハハハ)
(父、楽しそうだけど、僕、ボロボロだからね、
咄嗟に盾を出して防いだけど、右太ももに槍が刺さって魔弾と石も何発もくらったからね、
まぁ、弓矢は使えるからやるんだけど、新しい弓を出してっと、頭を狙って、ホイ、
アッ、当たった、あっ、気配も消えた、こっちを見るために顔出してて当たったのか、マヌケだなー)
(槍を抜いたら、魔法で傷を治しながら奴の魔石を収納して森に行くぞ)
(えっ、なんで?、正直、かなりシンドイんだけど)
(うまい具合に、ゴブリン達が散り散りに逃げ出した、英雄のアースは最後の攻撃で死んでゴブリンにお持ち帰りされた事にする)
(そっか、そうだね、流石にイリーナを逃し親玉を倒し生き延びたは、厄介ごとを背負い込むね、よし、土煙に隠れながら森に逃げよう)
(ゴメンね、イリーナ)
イリーナの泣き叫ぶ声が聞こえだが振り返らず森に入った。
私は生きてダンジョン都市ライスに戻ってこれた。
ウィートの街から逃げる時、ここまでの旅で仲良くなっていた仲間は次々と殺されいき、私も何度も死にかけた、
傷を負い森へ逃げ込んだが隠れた穴に生き埋めになり動けずに死を覚悟した、
その時に彼は現れ助けてくれた。
見た目は年下なのに、私より修羅場を見て来たのか、大人びた3歳年下の男の子、アースくん。
彼は実力者だ、そのチカラが厄介ごとを押し付けられるのを知っていた、私の今の現状がそうだ。
今回の調査依頼は冒険者ギルドマスターから、特務実力者への直々に降りた強制依頼だった。
確かに成功率が高いメンバーだったが、私に言わせて貰えば、数撃ちゃ当たるの1つにさせられた感じだ。
現に、ライスに帰るまでずっといつ死んでもおかしくない状況だった、
私が生きて戻れたのは、彼が私の助けになるために、契約を持ちかけてくれたからだ、
他者に見せたくない実力を私には見せてもいい様に、
私を見捨てなくてもいい様に、
間違って話しても、彼が助ける実力がある事だけ忘れる、私には損がない契約、
冒険者ギルドのギルドマスターが私に無理に聞き出そうとすれば聞き出す情報が消える、私に優しい契約だった。
移動で私にかかる負担は信じられないほど無かった。
戦闘は最初の数日と最後の2日だけ、移動のほとんどはただ歩くだけ、夜は熟睡、馬車での移動より楽だった。
後で請求すると言われた食事も豪華だった。
朝夕は暗い時間だけど暖かい食事、昼は移動中なので、中に色々な具が入った一口大のパンを幾つかと果実の飲み物、
どれも冒険者の移動中の食事とは比べ物にならないほど美味しかった。
[インベントリ内に収納した食材を創造錬金魔法で加工調理したものですbye父]
夜は会話ができた。
風の魔法で防音してるから安全だと言い、いろんな話をした、
本来なら話してはいけない冒険者ギルドの裏話やギルドマスターの悪口だ。
それを聞いて、「神殿の大神官長に相談すれば解決するよ」、と言われた、「なぜ」、と聞いたら「ギルドマスターがイリーナ達を騙しているからだよ」と言われた。
何を騙しているのか分からなかったが、報告は大神官長様の立会いの上でしようと思った。
後少しでライスに着き2度と会えなくなるかもしれないと思い、思いきって告白した、
結果は保留、いいえ違う、私が森で足手纏いではなくなれば考えてくれる、
イコールOKよね、なんて浮かれていた。
死がすぐそばに来ていたのに。
彼はいち早く待ち伏せに気付き私を逃がしてくれた。
援護するから包囲される前に抜けろと言われた。
私は、必死に走り前を塞ぐゴブリンを斬り殺し走った外壁の兵士に助けを求めながら。
前に味わった、あの槍がそこらじゅうから降り注ぐ状況、しかし、彼の援護で私には一本も飛んで来なかった。
信じられなかった、彼にも槍が飛んで来てるはず、弓矢で援護しているなら受けることはできない、全てを華麗に避けながら援護しているの?
でも違った、こちらに必死な顔で来る兵士は、彼を見ている、私より彼の方が危険な状況という事だ。
私は兵士に護られて振り返り、彼を見た。
ゴブリンに囲まれ土煙を上げながら槍や魔法に石を必死に避け、避けて転がり、当たって倒れても立ち上がり、必死に足掻き援軍を待っていた。
彼を見た最後の姿は、目くらましで逃げるためなのか大量の土煙を上げ、姿を隠し・・・そこに無数の槍、魔法、石が降り注ぐ光景だった。
私は頭の中は真っ白になり彼のいた場所へ走った。
辿り着いた場所には大量の血痕と壊れた弓が残されていた。
その後の事は覚えていない、気が付いたら神殿の治療院にあるベットの上だった。
事情を聞きに来た兵士長に聞いた所、私は大量の血痕が在る場所で気を失ったそうだ。
ゴブリンは土煙が晴れる前に逃げ出し、彼の死体はゴブリンに持ち出されたらしく見つからなかったそうだ。
兵士長に軽く説明をして、大神官長様に報告したいと言うと、「分かった」と言い出て行った。
横になるといつの間にか寝てしまった。
起きるとそこには大神官長様とライス領主様、そして、縛られ震えながらひざまづいで居る、冒険者ギルドのギルドマスターがいた。
ウィートの現状とゴブリンの獣軍の軍編成を話していると、ギルドマスターは「知らなかったんだー」と喚き、無理矢理退室させられた。
領主様が教えてくれた、
本来、ギルドの強制依頼は不意の獣軍の襲撃の時のみで、普通は獣軍の情報が入り次第領主に報告、各地方の領主と神殿騎士長で話し合い対応するのが当たり前の処、
ギルドマスターが領主様に恩を売るために独断で私達を送ったそうだ。
ギルドマスターとその関係者は命の危険にさらされる場所での外壁作業を年齢の半分の時間を契約で強制されるか、嫌なら全都市の指名手配により入れなくなり、入いると激痛が走る契約の二択を迫られ、それすら拒否した場合は死罪とのことだ。
助けてくれた彼に関しては契約で話せないと説明し、前によるに話した打ち合わせ通りに、
生きていれば、ケガで隠れている子供を迎えに行き連れてくるはずだと説明した。
アースくん、これで私を迎えに来ても問題無いからね、
アースくんなら必ず生きていると信じてる、
迎えに来た時に置いて行かれないように頑張るから、
信じてるから私に会いに来て下さい、・・・お願い。




