未知なるものとの契約
更新が遅くなってしまい申し訳ありません。
私事で更新頻度が下がりますが今後共よろしくおねがいします。
その言葉がどういう意味を持っていたのか。俺には終始理解できなかった。
雰囲気の変わった双子は俺のよく知るやつの纏うオーラと同等のものとなり、言葉の一つ一つに重みを感じる。さながら魂の契約の如き問いに、さすがに俺は気圧される。
けれど、次の瞬間には俺はうなずいていた。加えて言えば、生唾を飲んだのだが。
軽々しくうなずいて良いものではない。それをわかっていても、俺はうなずくことを選んだ。
なぜなら――
「それで麻里奈の居場所がわかるなら。俺はどんなことだってやってやる」
「「良いでしょう、人の子よ。あなたの決意を認め、あなたの望むものをひとつだけ与えましょう」」
まるで実と穂ではないような話し方だ。
いや、出会ってそう時間が経っていないのだから彼女ららしさなど早々にわかるものではないのだが、少なくとも数分前まで話していた実と穂の話し方ではない。
恐怖すら感じる変わりように言葉を詰まらせそうになるが、どうにか耐えて欲しいものの在り処を問う。
「麻里奈の居場所はどこだ?」
「「契を交わし、永遠の愛を宣誓する場所。別れを告げ、新しい春を迎え入れる場所。汝の因縁深き場所にて、求めるもの有りき。ただし急ぎなさい。その灯火はか弱い」」
なんだかインチキ占いのようなことを言われてもわからないんですが……。
でも最後の一言だけは感覚的にわかるぞ。多分、麻里奈が危ないんだ。言われなくても急がせてもらうよ。
謎を頭で考えるがすぐには答えは導き出せない。ある程度の当たりは付けているのだが、果たしてそこが正解なのか否か。
神聖な雰囲気を纏う実と穂から視線を外した俺に、二人が話しかけてくる。
「「契約は成されました。私たちは譲歩を。次はあなたの手番。くれぐれも忘れることの無きように。人の子よ。世界の終わりはそう遠くない未来で起こります。あなたの成すべきは――」」
「終わらせねーよ」
「「?」」
「世界は終わらせない。俺一人じゃ無理だとしても、誰かの手を借りて絶対に食い止める。だから、心配すんな」
「「ですが――」」
わかってる。きっと今の二人は未来を見通すことができるのだろう。いや、もしかしたら現在過去未来のすべてを見通せるのかもしれない。そうだとしても、俺はそのいつかを否定する。
力不足だとわかっているし、分不相応だと笑われることも知っている。どれだけ呆れられても、どれほど嘲笑われても、俺は終末を食い止めるのだ。食い止めようと努力してしまうのだ。
だって、世界が終わったら、俺の平和で幸せな日々が終わってしまうということだから。
俺はもう人ではないけれど。今の生活を気に入っている。それを邪魔するというのなら、俺は徹底抗戦をする所存だ。
それに、誰かが不幸になる世界を麻里奈が許せるとは思えないから。あいつの正義は揺るぎなく平等であるはずだから。
「わかってるさ。万が一……億が一世界が終わっちまったら、そのときは俺が責任を持ってすべての人を救ってやる。だから安心しろ。お前たちとの約束は絶対に破らないよ」
「「汝の進む道に幸あることを願っています」」
そう言い残すなり、俺の目の前で糸が切れた人形のように実と穂の両名が同時に倒れた。すぐに近づいて様子を見るが、どうやら大丈夫そうだ。
こうして考えてみると、先程の二人は何かに操られていたような気がしないでもない。おそらく、この二人には特別な力があるのだろう。そうでもなければ、颯人の義妹になどなりえないのだが。
ともかく、二人の言葉を信じるなら、さきほど提示された謎を解くことで麻里奈の居場所がわかるようだ。しかし、自慢できるほど頭がよろしくないため、一人では解き明かすことは難しい。それに、倒れた二人をこのままにしておくわけにも行かない。
二人を担ぎ上げて、俺は絶対に重いなどと口にしないように注意しながら自室へと戻っていった。





