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可愛いは罪

 イヴの初めてのおつかい騒動から四時間が経過した頃。

 イヴのことを見たクラスメイトからの抗議に対して、俺はイヴのことをどう説明するべきか悩んだ挙げ句、妹だと便宜上名乗った。

 しかして、またしても事件が起きたのだ。


「聞いてくれよ!!」

「やだ」


 面倒だった午前中の授業が一段落を迎え、これから楽しみな昼食が始まるというのに、クラスでも群を抜いた騒がしさを持つクラスメイト話しかけられた俺は、引きつる頬をそのままに即座に答えてやった。

 だが、人の話を聞かないクラスメイトに、俺の言葉は届くことはなく。


「実は夢のような現実に出会ってさ!!」


 わけのわからない会話が何故か続く。


 こちとら、授業とか、イヴの弁解とかで疲れ果ててるっていうのに、これ以上疲れさせようっていうのか、こいつは……。

 無駄だとは思ってはいても、とりあえずもう一度否を言ってみる。


「嫌だって、言ったよな……?」

「すんげぇかわいい幼女がいて、どうやったらその幼女と仲良くできるか考えたわけだ」


 もはや会話すら成り立たないレベルである。

 諦めた俺は肘をついて、届けてもらった弁当を突きながら適当に会話に付き合う。


「ただの変態じゃねぇか」

「それで俺は思いついた。今この瞬間はきっと夢なんだってな。つまり、夢の中なら、なんでもしていいってな!?」

「お巡りさ~ん!? ここに犯罪者が――」


 口に入れた弁当を吹き出しながら、本気の叫びを上げる。大手を振って叫ぶクラスメイトは正気の沙汰でなく、どこの誰かはわからないが、くだんの幼女に心を奪われてしまっているようすで。とにかく、警察に突き出したほうが平和になりそうだと思ったが、それは静止された。


「待て待て! この話には続きが合ってだな!!」

「その話に続きがあっても、お前の人生に続きはねぇよ……」

「抱きついてみてやっと気がついたんだ。あっ、今は現実じゃねって。この温かい抱擁はまさしく現実の賜物じゃないかってな!!」

「抱きついたのかよ! ちょ、お巡りさん!? ここに本物の変質者がいるんですが!?」


 やはり、もう手をくれだったようだ。


「バットしか~し! その幼女はもう、一人の男のものだった!!」

「ナチュラルに話を続けてんじゃねぇ!!」


 話の続きは警察にでも聞いてもらえよ、ほんともう!

 スマホで110番をしようとダイヤルの所まで来て、聞き捨てならない言葉が耳に入る。


「……テメェ、いつあんなかわいい幼女とお知り合いになりやがったこの外道!!」

「なっ……てめ、イヴ――俺の妹に手を出しやがったのか!?」


 なんと、騒がしいクラスメイトが心を奪われたのは、今朝俺の妹認定した、イヴその人だったのだ。


 というか、めちゃくちゃ目立ってたイヴに抱きついたのか、こいつ……。ある意味勇者じゃねーか。

 いやまあ、やってることは犯罪なんですが……。


 その後、喧嘩が始まった俺たちを見て、クラスの女子が麻里奈を召喚し、飛び出てきた麻里奈によって、更にボコボコにされた俺は、あえなく保健室送りになった。

 騒がしいクラスメイトと言えば、圧倒的なまでにボコボコにされる俺を見て正気に戻ったらしく、今まで何をしていたのかわからないとかいう始末だ。


 ……ホント、かわいいってのは罪だと思うよ。可愛い女の子が歩くだけで、俺がボコボコにされるとは思わないだろ……?

今日で、第一章幕間と今年の更新を最後とさせていただきます。

なお、二章の更新は、追って活動報告のほうでお知らせいたします。

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