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初めてのおつかい

 小学生のような背丈の赤みがかった髪の少女がいた。

 彼女の名はダーインスレイヴ――命名イヴ――。いわゆる伝説の武器の擬人である。そんな彼女は現在、片手にお弁当箱を持って道路を歩いていた。周りには登校している中学生や高校生、社会人などが忙しく歩いているが、その荒波にも負けず、彼女はただ一つの目的のために歩んでいた。


 ことの発端は三十分ほど前に遡る。

 遅刻だなんだと忙しく家を出ていった御門恭介が、こともあろうにお弁当を忘れていったのだ。それに気がついたイヴは、奈留の静止も顧みず、弁当を片手に家を飛び出した。

 そして現在に至るわけである。


 しかしながら、朝から一人でお弁当を持った幼女が町中を歩くという風景は、非常に珍しかったのだろう。周りからの視線が多く見える。鈍感か、あるいは天然のイヴは、ご主人である恭介の言われたとおり服を着ているのに、どうして見られるのだろうかという程度の考えしか及ばない。

 恭介に忘れ物を届けるという重大な任務がある以上、周りの視線など気にしてはいられない。イヴは、不思議に思いながらも恭介を追いかけていた。


 そうしてついに、目的の人物である恭介に追いついたのだが……。


「ますたぁ!」

「おわっ!? だー……イヴ!? お前、どうしてこんなところに……」

「わすれものです!」

「わすれ……それ、俺の弁当か? ……ホントだ、忘れてたんだな」


 カバンの中を確認して、弁当が入っていないことを目視した恭介は、イヴから弁当を受け取ると、お礼と言わんばかりに頭を撫でてやった。

 その横で、呆れたような息を吐く麻里奈が言った。


「時間を見間違えて遅刻だと思うわ、お弁当は忘れるわって……今日のきょーちゃんはダメダメだね」

「し、仕方ないだろ……? 昨日、遅くまで寝付けなかったんだから」

「……? 確か十時には寝てたよね?」

「……」


 恭介がジト目で麻里奈を見るあたり、原因は麻里奈にありそうだが、それはイヴも、まして麻里奈も知りえないことである。

 忘れ物が届けられ、一件落着となろうとしている中。とうとう恭介は目の前の問題に取り組もうと力を入れた。


「ありがとな、イヴ。助かったよ」

「いえ!」

「あー、それとな? その、服を着ろとは言ったが……」

「はい?」

「それは俺の服だ……つまりサイズがまるっきり合ってない」

「……はい?」


 キョトンとするイヴに、目も当てられない恭介。服を着る習慣がないイヴには、恭介の服も、幼児サイズの服も大した違いはないのだ。しかも、それが原因で周りからの視線を集めていたのだ。


 こうして、目的を果たしたイヴは誇らしげでいたが、その後で恭介に妙な噂が立ったのは言うまでもないだろう。

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