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疲労の敗北者《ver.麻里奈》

 時間にして深夜一時を回ったところ。

 普段なら起きている恭介も、今日は家の片付けなどで疲れがあったようで、そうそうに寝付いていた。問題は、数ある片付けは済む前に、仮眠を取ると自分に言い聞かせて倒れるようにベッドで眠ってしまったので、結局手伝いに来た麻里奈がほとんどの片付けを済ませてしまったことだろう。


 無尽蔵に体力があると恭介に思われている麻里奈も、今日という今日は疲れがピークに達している。本当なら家に帰って疲れを癒やし、明日の学校に向けて支度をしなくてはいけないが、時間的にも体力的にも厳しい状態である。


「さて……片付けは終わったけど、これからどうしようかな」


 見れば、寝息を立てている恭介が目に入る。肌寒い日の深夜は非常に寒い。暖房の一つでもつけたいところだが、今の麻里奈にはそれすら億劫に感じてしまうのだ。

 じっと恭介を見つめていると、一つ小さいあくびが漏れる。そこで自分が想像以上に消耗していることに気がついた麻里奈は、自覚と共に抗いがたい眠気に襲われた。


 生来、何かに集中すると他のことが全てシャットアウトされる麻里奈は、いつの日か集中をすると疲れるということを忘れるようになった。しかし、それは気がついたときに一気に疲れがやってくるということで、一斉にやってきた疲れをどうにかできるほど、麻里奈は図太い性格ではない。

 見た目より華奢にできている麻里奈の体は、その疲れに後押しされるように恭介に近づいていく。


「ちょっとだけなら……良いよね?」


 当然、誰もそれに答える人はいない。加えて、朦朧とした思考では、恭介が眠るベッドで暖を取ろうとする自分の行動が正しいのかさえも判断が付いていない。

 やがて、疲れに敗北した麻里奈は、恭介が眠るベッドの中に入っていき、多少汗の染み込んだ服を布団の中で脱ぎ捨てると、柔肌を擦り付けるように恭介にからませていく。


「ふぅ……あったかぁい……」


 そして、冷たかった肌が少しづつ温もりを得ていくのを感じながら、朦朧としていた意識がゆっくりとフェードアウトしていった。


 ただ、誤算があったとすれば、本当に仮眠を取ったいただけの恭介が麻里奈のベッド侵入を経て起きてしまっていたことと、掃除を全く手伝わず遊び歩いていたタナトスと、麻里奈の命令で家から追い出されていたカンナカムイが一部始終を見ていたことだろう。


 裸の麻里奈に抱きつかれた恭介が鼻血を出しながら出血性ショックで気絶するまで麻里奈の体の柔らかさを確かめていたことや、麻里奈の弱みになり得るこの行為をメモっていたタナトスに散々弄り倒されること、羨ましさで怒り狂ったカンナカムイが恭介に再び勝負を挑むことなど。

 この後様々な事件が起きるが、このときの麻里奈は知る由もなかった。

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