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伝説の武器に名前をつけましょう

今回から幕間です。

二章更新は来年からとなります。二章更新の日時は追って活動報告でお知らせします。

 日も高くなっているこの頃。麻里奈の「ダーインスレイヴとか鳴雷なるいかずちとか呼びにくくない?」という途方もない言葉で、俺と麻里奈、呼びにくいと言われた当人二人に、特別サポーターとしてタナトス、カンナカムイを迎え入れて、《第一回 伝説の武器に名前をつけましょうの会》が開かれることとなった。


「でもさ。名前を付けるにしたって、もう名前があるわけだろ?」

「だって、呼びにくいのは本当でしょ? 町中でダーインスレイヴって叫んでたら、お笑い者だよ?」

「そもそも、ダーインスレイヴを叫ぶ事自体無いと思うんだけど……」

「こないだ買い物に連れて行ったら、見事に迷子になってたけど?」

「……」


 反論のしようもない事態である。

 ダーインスレイヴに視線を向けると、小首をかしげたダーインスレイヴが俺の方を眩しい瞳で見つめていた。どうも自分が迷子になっていたという事実すらわかっていないようだ。ダーインスレイヴは戦闘に関してはしっかりものだが、こと日常生活に至っては見た目通りの幼女なのだ。常識などこの際考えないほうが良いかもしれない。


 しかしながら、鳴雷に関してもそうなのか言えばそうではないだろう。むしろ、下手をしたら我が家に蔓延る駄神よりも真面目なまである。まあ、多少カンナカムイに対して毒舌なところは否めないが。

 そこのところはどう考えているのか、麻里奈に尋ねてみる。


「ダーインスレイヴは……まあわかるけど。鳴雷は迷子になんてならないだろ?」

「ダーインスレイヴに名前をあげるのに、鳴雷には名前をあげないの?」

「……へ?」


 そもそも、新しい名前が欲しいのだろうか。

 鳴雷にそれとなく視線を向けると、キラキラと光る瞳が俺を射抜いた。……欲しいんですね、名前。

 しかし困った。他人に名前を付けるなど、あだ名を付ける以上の大役だぞ。しかも、ここでキラキラネームなんてつけてみろ。呼ぶ方も呼ばれる方も恥ずかしいなんてものじゃない。本物の一生の恥になりかねない。


 とりあえず、本人たちの名前の要望なんかを聞くところから始めよう。


「ちなみに、どんな名前が良いんだ?」

「わたしはかっこいいなまえがいいです!」

「わ、私はいただけるならどのような名前でも……あ、ですが、要望が通るのなら、その……お、女の子らしい名前が……いいです、ね」

「かっこいい名前と……女の子らしい名前、か。……うぅむ」


 要望を聞いた上で話し合いが始まるのかと思ったが、麻里奈は自分の武器の名前くらい自分で考えなさいと言いたそうに席を立って、キッチンに全員分のコーヒーを淹れに、タナトスは最初から戦力外だと思って頭数に入れておらず、仕方なくカンナカムイに打診してみるが……。


「武器に名前だと? ふんっ。武器は武器だ。名前なんぞ、適当でいいだろうに」

「そうですね、負け犬」

「なに!? 貴様――」

「喧嘩はしないよ、カンナカムイ?」

「ぐぅ……」


 というふうに、一向に当てにならない。

 ゲームでも主人公の名前を《NONAME》なんて適当につける俺だ。人に名前を与えるなんてできるはずもなく、困り果てていると話を聞いていなかったらしいタナトスが俺の目の前に浮遊してきた。


「ん? 彼女たちの名前を考えればいいのかい?」

「あ? ああ、そうだけど?」

「なら、イヴと奈留なるっていうのはどうだい?」

「……へ?」


 唐突に飛び出した名前を聞いて、俺はタナトスを凝視してしまった。

 見られることを嫌がったタナトスが浮遊したまま離れていくと、名前の説明をし始める。


「ダーインスレイヴだからイヴ。鳴雷だから奈留。ほら、簡単だろう? しかもこれなら、要望も満たせていると思うけれど?」

「た、確かに……。イヴはどことなくかっこよく聞こえるし、奈留も女の子らしいけど……。それでいいのか、二人共……?」

「わたしはきにいりましたよ!」

「まあ、主人マスターの全面的な考えでないのは悔しいですが、確かに響きはいいですね」


 なんと。戦力にすらなりそうになかったタナトスが、この難問を一瞬にして解き明かしてしまうとは。

 ホント人は……神は見た目に寄らないというかなんというか。

 二人の名前が決まったと同時に、六つのマグカップを持った麻里奈がリビングへと戻ってきた。


「イヴちゃんと奈留ちゃんかぁ。いいね。呼びやすくなったよ。じゃあ、名前も決まったし、みんなでコーヒーブレイクでもしようか」

「わたしはみるくとさとういっぱいです!」

「私はブラックですね」


 こうして《第一回 伝説の武器に名前をつけましょうの会》は、あっけなく終わりを迎え、各々マグカップを手にして平和な日常の中に溶けていった。

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