4.手紙
次回から姫奏視点に戻ります。
恥ずかしくなって、思わず逃げ出してしまったわたし。
五行先輩のまえでなんてはしたないことをしてしまったのだろう。聞かれた質問にも答えず、急に逃げ出してしまうだなんて。
……せっかく五行先輩と話せる機会だったのになぁ。はぁぁ。
その日わたしは、羞恥に次ぐ後悔で、なかなか寝付けなかった。
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次の日。頼まれて仕上げてきた書類を片手に、学園の門をくぐった。
いつものように校舎に入り、靴を履き替えようと下駄箱の扉をあけたとき。中に一通の白い封筒が、わたしの上履きのうえに鎮座していた。
その手紙を取りだし、中を改めようとした、その時。
「おーい、清歌~。おはよう」
書類を頼まれた娘がこちらに手を振りながら近づいてきた。わたしは慌てて手紙をブレザーの内ポケットに仕舞うと、上履きに履き替えてその娘の方へと歩いていった。
用事も済ませ、夏休み中でもやっているカフェにやって来た。暑い夏だからこそ頼めるアイスクリームと、わたしの大好きなイチゴ大福を頼み、人気のない店内の、更にはしっこに座り、そっと手紙を取り出すと封をあけて便箋を開いた。
そこには、とても繊細で綺麗な文字で
『御津 清歌さま
突然のお手紙、申し訳ありません。
少しあなたとお話したいことがあり、筆をとらせて頂きました。お時間があるときにでも、お話を致しませんか?
いつでもお待ちしています』
と書かれ、さらに地図が付いていた。
差出人の名前はなし。
こんな手紙、誰からも貰ったことがないわたしは困惑した。
(いたずらかな? でも、いたずらにしては丁寧すぎない? ……もしかして、ラブレター!?)
あれこれ考えながらも、今日のスケジュールを思い出して暇があることを確認する。
頼まれていた仕事も、眠れなかったこともあるし、昨日頑張ってほとんど終わらせていた。
わたしは大好きなイチゴ大福を、いつもより早く食べて、アイスクリームを片手に地図を頼りにして歩き出した。