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あなたと夢見しこの百合の花  作者: 五月雨葉月
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24. 臨海&林間学校【2日目、3日目】その1

 昨日の姫奏との色々な経験を思い返すと、とっても恥ずかしくてなって頬が赤くなってしまう。

 そのせいで、今日は朝早くから起きてしまい、今は部屋についているバルコニーの椅子に座って、山の裾から朝日が昇る景色を見ていた。


「昨日、本当にわたし、姫奏と……」


 わたしたちの部屋は海とは反対側に面しているもので、バルコニーからはハイキングで利用される小高い丘が見えていた。

 丘といっても、小さな山くらいの高さはあるらしく、そのなかで中学生の女の子が難なく登れるほどのハイキングコースが整備されているらしい。

 昨日海で遊んでいるときに姫奏やマノン先輩、智恵先輩たちと相談して、朝、ご飯を食べてからハイキングに行き、その後山頂でお昼、帰ってきてから再び海というなんとも忙しいスケジュールが出来上がった。


 そしてそのスケジュールに合わせて、少し早めに起きようとは思っていたけれど……。あと二時間、何をしたらいいんだろう。


「ちょっと、散歩でもしてこようかな……」


 このままじっとしていても暇なままなので、火照った身体を冷ますために外へ出ることにした。


「……ちょっとだけ、出てきますね?」


 わたしが寝たところの隣で眠っている姫奏に起こさないように小さく声をかけ、靴を履き替えて廊下へと出ると、そっとドアを閉めた。


 わたしたちが泊まっているのは六階。七階建てのこの建物は、一階に食堂が、その上に生徒用の部屋がある構造になっていて、最上階に昨日行った露天風呂つきのお風呂がある。


 小さな集会場や講堂もあって、新入生合宿や長期休暇中の勉強合宿とかもここでやるそう。わたしも実際、今年の春にここに来て一泊していった。


 初めて姫奏と話したのがここだったな……。

 と思い出したのは、玄関前にあるいくつかのソファーが並んだロビー。入学式のときに初めて見かけ、新入生合宿についてきていた姫奏と話した思い出の場所。でも今はそこを通ってわたしは外へと出る。


 少し歩いて砂浜の方へと向かうと、そこにある木でできたベンチによく見知った人物が腰かけていた。


「あ……智恵先輩」

「清歌ちゃん? おはよう。早いのね?」

「おはようございます。……ちょっとだけ早起きしちゃって。色々と、楽しいことが多くて」

「ふふっ、姫奏先輩とかな? 同じ部屋だもんね。うまくいってる?」


 いたずらっぽい笑みを浮かべながらわたしに聞いてくる。……そういえば、智恵先輩は知ってるんだっけ、わたしたちのこと。わたしは恥ずかしくて、つい声が小さくなってしまった。


「あぅ……。は、はい……」

「そっか! よかったよかった」

「先輩こそ、恋の行方はどうなんですか?」


 智恵先輩にばかり弄られてはたまらない。そう思ってちょっとだけ仕返し。……わたし、智恵先輩が用務の先生に想いを寄せてること、知ってるんですから!


「ふえっ!? ま、まあ、ぼちぼち……かな……」

「へぇ~♪」

「ああっ! そんな顔しないでよぉ……。ん? そういえば……」


 ポッ! と赤くなる智恵先輩。でも、急になにかを思い出そうとするように眉を寄せると、うーん、とうなり始める。


「……昨日の夜さ、消灯時間のあとに外から誰かの、その……えっちな声が聞こえてき気がしたんだけど……」

「ふ、ふえぇぇっ!?」

「その時間、確か清歌ちゃんと姫奏先輩がお風呂使ってる時間じゃなかったかな……って。……もしかして二人――」

「そ、そ、そんなことはしてないでしゅっ!!」


 仕返ししたら、もっと大きな爆弾をもらってしまいました……。あぅぅ……も、もしかして泊まってる人たち全員に聞こえてたのでしょうか!?


「――な~んて、うそうそ♪ ……あれ、どうしてそんなに慌ててるの? ま、まさか本当に……?」

「い、いえっ! そんなわけないですっ!!」


 ひぃぃっ、また騙されてっ!?

 そ、その後、なんとか誤魔化しきれたわたしでしたが、そろそろ起床の時間、というときに隣を歩く智恵先輩から、


「清歌ちゃん……やっぱり姫奏先輩と、もうそんなことしてるんだ……」


 という小さな呟きと共に、日に照らされてよく見えなかったけれど、赤くなっているように感じた頬を隠すかのように少し俯いたのは気のせいだと信じたい。

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