16.臨海&林間学校【初日】その4
宿舎につくと、各々自分の荷物をもって事前に決められた、これから三日間過ごすことになる部屋に移動する。
一般生徒は八人で大部屋一つを共同で使うのだけれど、私はこそっと配置の生徒――生徒会の後輩――に頼んで、私と清歌の二人部屋にしてもらった。
元々生徒会役員は普通の部屋に四人または二人で泊まるのだけど、その生徒会役員用の部屋の一つに、今は一般生徒だけれど元会長として入れて貰ったのだ。
“生徒会長”という肩書きはあまり好きでは無かったのだけど、こう言うときには存分に活用させてもらう。
部屋の配置を清歌に伝えた時には、とてもびっくりされたものの、喜んでくれたから良かった。
「よいしょ、ふぅ~。私は用意出来ましたわよ? 清歌はどうかしら?」
「あ、あわわ、もう少し待ってくださいぃ!」
「……ほら、貸して? 手伝ってあげるわ」
「あっ、ありがとうございます……」
嗚呼、この申し訳ないと分かっていながらも、嬉しくて甘えてしまう、という清歌の表情がなんと可愛らしい事。
とまあ、あらかた荷物の整理を終わらせ、水着に着替えるとその上にパーカーを羽織って外へ出る。
……普段あまり気付かなかったけれど、清歌も胸、かなり大きいのね?
私は着替えの時からチラチラと気になっていた事を聞いてみた。
「清歌はどうしていつも、胸を隠すようにして服を着ているの?」
「えっと、あぅ……胸は、見ないで下さい……」
「あら、ごめんなさい」
「その……わたし、昔から成長がはやくて、男の子に胸の事とかでからかわれたことがあるんです」
「あら……それは……」
そっと胸の前で手を重ねる清歌。
「それで男の子がいないこの学校に入ったんですけど、やっぱりそれでも忘れられなくて……」
「それで隠していたの?」
私の問いかけに、こくん。と頷く清歌。
「そうだったのね……。まずは、嫌なことを思い出させてしまってごめんなさい」
「い、いえ。先輩――姫奏には、わたしの全部を知って欲しいんです。だから大丈夫です。……わたし、始めて姫奏を見たとき、羨ましくて」
清歌の言葉に、胸がトクン……となる。
「どうして?」
「そのぉ、堂々と、キリッとしながらいられるのがすごいなぁ、って」
「そう? 普通よ。……あ、そうね。今度一緒に下着を買いに行きましょうか。清歌、締め付けるようなものばかり買ってるでしょう?」
「は、はい」
「体に悪いわよ? サイズも同じくらいだと思うから、いつも私が買っているお店に一緒に行きましょう?」
心の元気を取り戻すには、まず行動が大事よ、とつづける。
清歌ははじめ躊躇していたものの、最終的に頷いてくれた。……デートの約束、完了ね!