14.臨海&林間学校【初日】その2
「こっちよ」
「あっ……。はい」
そっと手を引っ張って、私が乗ろうとしていたバスに清歌と一緒に乗る。
「ここに座って?」
「はい……」
私は奥の方の席に清歌を誘導する。そして、カーテンを閉めて窓側に座らせると、私は通路側に座った。
あら、向かいはマノンじゃない。
「おっ、姫ちゃんに清ちゃん」
「あらマノン。清歌の事知ってるの?」
「うん? まあ。色々あってな? それよりもまぁ、二人がデキてたなんて、誰も想像で――」
「せ、先輩! ちょっとだけ静かにしてくださいっ」
「ん? 何かあったん? ……あぁ、そういうこと」
マノンは清歌に言葉を遮られた事を気にするもなく、ドアからひょこっと顔を覗かせた女子生徒の顔を見ると、納得した顔で頷いた。
……どう言うことかは分からないけど、体をもっと縮こまらせた清歌と、マノンの反応からあの娘が清歌を追いかけているのだ、と分かった。
「あの娘なの? 逃げていた相手って」
「は、はい。色々あって知り合ったんですけど、しつこくて……」
小声で答えてくれる清歌。
と、話している間にも、その娘はだんだんと近寄ってくる。
「ひぅっ!?」
足音で気配を感じたのか、清歌が私にそっと抱きついてきた。かわいい……。
ハッ! いけないいけない。私は立ち上がり、やってくる生徒に厳しめに声をかける。
「そこの貴女、そろそろ出発時間なのだから、席に座りなさい」
「げっ、五行姫奏……先輩。それに河瀬先輩も……」
「ほれ、怒られたくなかったらはよお戻り」
私たちの顔を見て、ひきつった表情を見せてくる女子生徒。……はじめて貰う反応に、私は内心で当惑していたものの、表には出さずに、いつもの表情を保ち続けた。
「は、ハイ! ソウシマス……」
ひきつったまま、そろそろっと忍び足をして出ていく。完全にバスから降りた事を確認してから、私は席に座った。
「ありがとうございます、姫奏先輩。助かりました……」
そう言って、ほわっ♪ と一気に緊張を緩ませて微笑んでくる清歌。はぁぁ、かわいい……。
こほん。そう、あの娘との関係をしっかり聞いておかないと。




