11.幸せな時間
手をぎゅっと握りあって、私たちは私の部屋へともどってきた。
お互いをみつめては照れて視線を逸らす。
「ひめか……」
「きよか……」
ちゅっ♪
キスをして、微笑みあう。
なんて幸せなひとときなのでしょう。
私たちは時を忘れ、ずっと幸せに浸っていた。
コンコンコン。
「お嬢様、ご友人のお食事はどうなさいますか?」
メイドの声に、ハッとして時計を見ると、もう夜の十時。食事を取るのには少し遅い時間。
清歌をみると、メイドの言葉に反応してか、くぅ~♪ とお腹が可愛らしく鳴った。
「くすっ♪ ……じゃあ、軽くつまめるサンドイッチを用意して頂戴。私も一緒に食べるわ。飲み物は……そうね。清歌、なにがいい?」
「あ、あの……紅茶がいいです」
恥ずかしそうに俯く清歌。そんな仕草も愛らしくてたまらない。
「そう。じゃあ、紅茶をティーセットごとお願いね」
「かしこまりました。では――」
「あ、あの!!」
清歌が突然立ち上がって、メイドがいるはずの扉の方へと勢いよく問いかける。が、口を放した風船のように急に萎んでしまった。
「はい。なんでございましょう」
「あの、そのぉ……。い、イチゴ大福は、ありますか?」
「はい! ございますよ。そちらも一緒にお持ちしますね♪」
心なしか緩んで聞こえるメイドの声。そして、静かに足音が遠ざかっていった。
……分かるわ、とっても分かるわよ。清歌が可愛くて。私もつい口許がゆるんでしまうんですもの。
「はぁ~。緊張しました……」
「あら? どうして?」
「わ、わたしはその……人と話すのが苦手で……。あっ、姫奏先輩は別ですよ?」
「こらっ。姫奏、でしょ?」
「は……う、うん。姫奏」
あぁ、いとおしい。
なんて可愛らしいの、この娘は。
私はまたしても抱きついて、キスをした。




