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あなたと夢見しこの百合の花  作者: 五月雨葉月
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9.目覚め

 目が覚めると、そこは見知らぬ部屋だった。

 はじめはぽけ~っと天井を見つめているだけだったのだが、カリカリとペンを走らせる音が聞こえてきて、そっちを向いた瞬間、一瞬にして目が覚めた。


 ガバッ!!


「……あら、清歌さん。おはよう」

「す、すみません!! わたし、わたしっ」


 そこにいたのは五行先輩だった。わ、わたし泣きつかれて寝ちゃった!?

 とかあわあわと混乱していたら、更にわたしを混乱させる言葉を五行先輩が放った。


「いいのよ。それよりも、もう遅いから今日は泊まっていきなさい」

「……ふえぇぇええっ!?」


 と、とまって!?

 どういうことっ!?

 待って、いま何時!?


「……もう八時よ? 相当疲れがたまってたのね。今日はうちでゆっくりやすみなさい」

「でも、ご迷惑だし、お母さんとかお父さんとかにも聞かないと……」

「ご両親になら、うちの母から連絡してもらったわ。許可はとったから大丈夫よ」

「でも、でもぉ」


 さらに断ろうとあれこれ考えるわたしの思考を、一気に止めさせる一言を五行先輩は言った。


「……私があなたのそばにいたいの。だめ、かしら?」


 小さな声で、恥ずかしさを必死に押し止めようとしながら言う五行先輩。

 ……か、か、かわいいっ!!

 あう、ど、どうしよう。こんな顔をされたら、断れない……。


「わ、わかりました」

「本当!? ありがとう、清歌さん!」


 きゅっと抱き付いてくる五行先輩。

 ふわっと漂ういい香りが……。


「あわわ、五行先輩!?」

「……その呼び方」

「ほえっ?」

「五行先輩っていう呼び方……」

「が、どうかしましたか?」

「なんか他人行儀でいやだわ。これからは、姫奏って読んでくれないかしら?」


 えええっ!?

 な、名前でっ!?


「……。……か、せんぱい」

「えっ、聞こえないわ?」

「ひめか、せんぱい」

「……ん~?」

「姫奏せんぱい!」

「よく言えました♪」


 本当に嬉しそうに、にっこり微笑むと、わたしの頭をそっとなでなでしてくれた。

 ……きもちいい。


 五行先輩――じゃなくて、姫奏先輩の手、やさしくて、あたたかくて、とっても幸せ……。


「あの、じゃあ姫奏先輩も、わたしの事を清歌、って呼んでくれませんか?」

「……? もう呼んでるじゃない?」

「呼び捨てで、できませんか……?」

「よ、よびすてっ!? い、いいわよ。こほん。……清歌」

「はい、姫奏先輩♪」


 名前を呼び捨てで呼んでもらうのが、こんなに嬉しいだなんて。


「清歌」

「姫奏先輩」

「清歌」

「姫奏先輩」

「清歌」

「姫奏先輩」

「清歌……」

「姫奏せんぱ……むぐっ!?」


 ちゅっ♪


 突然唇に感じる、ほんのり甘くて、暖かい感触。

 姫奏先輩にキスされた。そう理解したのは数秒後のことだった。

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