9話 開放
1つあたり直径5mほどの黒水晶に似た石が凝縮された結果、直径30mほどの大きさとなって形勢されていた。
その先の部分には男が呑まれていた。
発見された当初は当然今のように見える状態ではなかったが、遺跡の発掘作業のように周りを削り取って全体が見えるようになっていた。
「なんと言えばいいか、内部の構成がどんどん変わっているような感じというか」
「ん!!!」
「とーちゃんどうした?」
「あの石、落ちるぞ」
「え?」
「ええ!?」
「今まで落ちたケースなんてありませんよ!?」
「いや落ちる」
言い切った途端、藤島が指摘した当たりが爆発したように砕け散った。
「爆発したー!?」
爆発したように砕けた黒水晶は当たりにすごい速度で回りに飛び散ったが、咄嗟に義男が前面に出て防御をしたのでA班に被害は出なかった。
切り離された龍のあご先は男を抱えたまま、予め開放された人間を受け止められるように敷設してあったショック吸収マットの上に落ちて静止した。
「ああああ、どうしよう、どうなってる!?やばいやばいやばい」
「大谷さん、落ち着け」
無理な話である。この先、コミュニティの資金を大幅に押し上げてくれる予定の物が自分の管理担当の時に傷物になったとしたら、、、、想像したくもなかった。
自分のキャリアもここで潰えるかもしれない。
中に飲まれてる人物の命の尊さなど微塵も思考をはさむことは無い。
そう思った時には大谷は掛けだしていた。
「ちょっ大谷さん、まだ危ないかもよ?」
はっきりと聞こえていたが、聞く耳持たず。
「あの落ちた先の内部、まだ動いていますよ」
たまらず藤島も声を張った
「んむ」
言うや否や義男が掛けだし、間近にたどり着いた大谷の前へ出た。
その直後、今度は男を飲み込んでいて、そのまま落ちた部分が爆発して飛び散った。
まさに爆散!
「とーちゃん!!!」
普段ははっきりと見える視界もこのときは飛び散った黒水晶が生み出した土ぼこりによって、義男達の周辺が見えなかった。
「とーちゃん!」まだ煙が残っている状態にもかかわらず、恵は掛けだしていた。
「大丈夫だ」
「とーーちゃーん」半泣きである。
煙が落ち着いてくると現状がわかった。
あごの先の大きさがあった場所から下半分に掛けて爆散によってえぐれていた中で、防御の為に全身に[力]をまとった義男が立っていた。
自分の体格よりも少し大きめに防御の[力]を放出して、後ろに居た大谷にも黒水晶が届かずに居た。森の番人健在である。
その時、爆発した中心部の丁度真下部分から声が聞こえた。
「痛ーーって」
そこにはだぼだぼの服を着た、14、15歳くらいの少年が上半身を起こして嘆いていた。
大谷の嘆きも続く
「良かった。本当に良かった生きてたぁ」
「とーちゃん怪我はない?」
「んむ。大丈夫だ」
「相変わらずかてーな」
「んむ」
親子が生存確認で感動のハグをしている横で
「なんか着る物ない?これ穴だらけで動けないんだよね」
今起きたことなど関係無しといった具合で声をあげる。