2話 石に呑まれた人々と発掘と
しばらく書き貯めていた分を連続で投稿します。
15年後・・・・・・現在
土、砂、岩、そしてかつては文明の証として聳え立っていた、ビルの残骸達。
あの日、天変地異と呼ぶには生ぬるい地球規模の異変によって地上はおろか数百m程の地下も変わりすぎていた。
15年前からの生き残り組には地獄かもしれないが、あの日以降に生まれた者にとってはごく当たり前の生活がそこにはあった。
変わらず地球は自転しているし、
太陽の周りを公転も続けていた。
南極の氷が溶けるわけでもなく、
雨季になれば雨も降るし、
海も川も健在だ。
そこに住む人間以外の生物はだいぶ様変わりしたが。
地球の意思によるものかはたまた神の天罰か知る術は無いが、
とにもかくにもダーウィンが存命だったならば、(いや、逆に大喜びするかもしれないが)
卒倒間違い無しの生物の変化と新種が発生していた。
もちろん以前のままで生息している生物も多い。
牛や馬や豚もほぼ以前のままで生存していた。
とてもとても気性が荒くはなっているが。
易々とは人が飼いならすことができない程度には
神経質で臆病で敵愾心がとても強くはなっていたが、同じ姿で暮らしていた。
毒を持った種も発見されていないので、ご安心を。
野生の牛や馬を捕らえて食用とするためにはかつての人類がマンモスを命がけで狩っていたと同様に中々の経験と命の重さを教えてくれるのであった。
この時代にもちゃんと銃火器は残っていたが、
何故か火薬や爆薬などが従来のままでは以前の威力を発揮することができなかった。
火薬爆薬に限らず、火をかつての発火材等で安定して使うこと自体が困難な世界に変わっていた。
生き残った科学者先生達がものすごく頑張ってくれていたが、原因究明にいたらず。(後述)
よって、牛や馬に向かって従来の銃器を発砲しても
弾がまともに発射されるほどの威力がないので、
引き金を引いて出てくる音と弾は
「ぼふっ」というなんとも情けない音としょぼい光と煙であって、
弾頭は10cmも飛んでくれない。
超至近距離で、たとえ、人に向かって発砲したとしても痛くも痒くも熱くもない。
ではどうやって狩猟するかと言うと、
弓矢やクロスボウといった投擲武器が一般的にも普及していた。
当然ながら石も投げるが。素手で投げる場合もあるし、スリングショットのようにそれようの投擲具も活用されていた。
必然としてハンターという職業が大々的に復活していた。
社会的地位もそれなりに高く、子供たちが憧れる(あこがれる)職業の上位にもランクインしていた。
この当時の国的なコミュニティとして、日本における戦国時代のような
小さな国がひしめき合う状態になっていた。
日本と呼ばれる島に複数の小さな国がひしめき合っていた。
これは日本に限ったことではなく世界中で同様の区分けとなっていた。
旧北米大陸の中でも数十の国・コミュニティが存在していた。
ここは、かつて埼玉県みつや市みつや駅前地区だった場所で、
今は大々的な発掘の前線基地として中々の賑わいであった。
発掘現場近くには自然と人が集まり、定食屋、飲み屋、博打、風俗等が軒を並べていた。
各地から集まった発掘屋で毎晩大騒ぎであった。
発掘の為の穴は大きい物で直径30m~50m程で 、地下200m近く掘られている大穴もあった。
なにを発掘しているかというと云うと、15年前のあの日に石に飲み込まれた人々である。
人々は石に呑み込まれた後になんと奇跡的に生存していた。
発見された時はほぼ例外なく睡眠状態となっており、
石から伸びた概念的な触手を直接体内に打ち込まれて、
そこから栄養分を体内へ送り込まれていた。
排泄は排泄専用の石の管が用意されていた。便利設計。
研究によりどうやら地球は最初から人類を変化させることを突発的に画策したのではなく、
最初から人間の栄養分となりうる材料を予め準備しておき、
それぞれの石のベッドを発生させる予定地の近くに
貯蔵所を備えていたという結論を導き出していた。
さらに驚くべきことにその人達は石から「特殊な能力」と「知識」を付与されていた。
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