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センメンキ・ラヴ  作者: プリティーお魚
高校二年生
5/24

楽しいですが、

「シャーーッ!!」

「良い射」の略らしい。私の弓道で納得いかない事ランキングで上位に食い込む。

試合当日。試合は男女別で、現在は男子の番であるが、控えの私は道場の後ろで見学している。道場内は私語厳禁のため先輩カッコイイ!や、先輩頑張って!などという応援はおろかくしゃみすら許されない緊張感が漂う。

応援席から部員たちが見守る。

先輩は、五人中三番目に射る。

一人目。中り。二人目。中り。三人目。外れ。四人目。中り。五人目。中り。

どんなに上級者でも外すときは外す。次頑張ればよいのだ。

おかしい、と思ったのは先輩が三本目も外したときだ。

明らかに先輩の顔に焦りの色が見える。弓道において、焦れば焦るほど沼にはまる。五人の合計的中数で競う団体戦では一本でも多く的中させるのが一人一人の役目だ。


拍手がおこった。一番目の秋山先輩が皆中、すなわち四本すべてを的中させたのだ。皆中を出した選手は、学校関係なくすべての人間から賞賛の拍手が送られる。しかし、私は拍手をするのを忘れており、隣で観戦していた同期の女子から小突かれて遅れて拍手をした。

二人目の村田先輩は三本的中だ。そして先輩は。


一本も中てられなかった。


結局合計本数は五人合わせて13本。次の大会に進めるベスト3にわずか1本足りなかった。

先輩のことを責める人間は誰もいなかった。先輩はしきりに選手やほかの部員に謝っていたが、私のもとには謝りに来なかった。

おそらく帰り道が私とほぼ一緒で、気まずい空気になると判断したのだろう。

私は腹が立った。別に先輩以外にも外した上級生はいるのに、なぜ先輩が謝るのか。


「私、悔しいです」

帰りの電車、二人きりになったタイミングで話しかけてみた。

「補欠だったこと?」

デリカシーのない先輩だ。冗談のつもりだろうが、目を合わせてくれない。

「先輩は、何も悪くないです」

「そうか」

「そりゃ、負けた責任はありますけどそんなのみんなおんなじです。村田先輩だって一本外してるし」

「あのさ」

「はい」

「そろそろ泣くのやめてくんね」

「あ、すみません」

気が付いたら涙が出ていた。理由は自分でも分からない。

「まぁ、でも、直井の言いたいことは分かったよ」

「はい」

「ありがとう」

「どうも」

「やっぱりなんかお前さっぱりしてるな」

「それが私なんで」

「悪くないな」

「へへっ」

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