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センメンキ・ラヴ  作者: プリティーお魚
高校二年生
3/24

人生は、

四月ももうすぐ終わりだ。今日も豚饅頭と話してから部活に行く。

部長が集合をかける。試合が近いということもあり、今日は自主練習のかたちを採るらしい。

我が高校の弓道部は、昔、入って間もない新入部員が暴発してけが人が発生したことから、的前、つまり実際の的を使う前に、矢を番えず射の形を練習する素引き、的ではなく藁をまとめたもの、巻き藁に向かって近距離から射る巻き藁練習の期間が異様に長い。OBのおかげでとんだ迷惑だ。

とんだ迷惑の中でもとびきりの迷惑は、後輩がいつまで経っても的前で練習できないことだ。こう見えてスタメン入り(補欠であることは気にしてはならない)している身である私は、この自主練の時間を有意義に使いたい。しかし的前に立てない後輩を指導する=自分も的前で練習できないということになる。後輩の事が嫌いではないものの、試合が近い時期ぐらいは的前でしっかり練習したい。

「直井先輩、指導お願いしますん」

出た。後輩の田村正毅。壊滅的に上手でない子だ。同期が巻き藁をやっている中彼だけは素引きの前段階の弓すら使わない徒手練から卒業できないでいる。ちなみになぜか語尾に「ん」がついてしまう癖があり、スマブラでサムスを愛用することから二年はサムスンと呼んでいる。

「いいよん」私は返事をした。


やはりうまくない。私は私らしからぬ熱い指導をする。良いのは返事だけだ。

「弓道って難しいですねん」

「そうだねん」

「僕、下手ですけどこのさきうまくなりますかねん」

「なるよ。サムスン君なら大丈夫だよ」

「おい田村!」一年生が遠くから田村を呼ぶ。

「どうしたん」

「先輩スタメンなんだから別の先輩に指導お願いしろよ、すんません、こいつ阿呆で」

補欠の分際でスタメンと呼んでくれるのは逆に恥ずかしい。

いいよ、とひらひらと手を振り、一年生に笑いかける。彼の名前は大城とか言ったか。

今日はゆっくり風呂につかりたい気分だ。

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