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センメンキ・ラヴ  作者: プリティーお魚
大学一年生
24/24

成長していくんです。

「あ、こんにちは」

あの事件から一週間後。学内を歩いていると田村先輩がいた。いつもそうだがいつも以上に挙動不審だったため少し大きめな声で挨拶してやった。

「おっ、おう、おう、直井か」

そういえば田村先輩は私に会ってすぐ「ん」を言わなくなった。弟とおんなじですね、と笑ったのが心にキてしまったのかもしれない。それならば申し訳ない。

「何してるんですか」

「見ればわかるだろ」

分からないから聞いているのだ。

「誰かに追われているようにしか見えないんですが」

「あながち間違いではない」

少し鼻息を荒げ話す。興奮している田村先輩とは対照に話に興味がなくなってきた私は「そうですか」と言い立ち去ろうとする。

「ちょ、ちょっと待ってよ」

「なんですか」

「話を聞いてくれよ」

話を聞いたから立ち去ろうとしているのだ。

「なんなんですか」

「弟が来てるんだよ」

「えっ、サムスン君が」

「そう、正毅が。なんか学校見学か何からしくてさ」

「で、探していると」

「逆なんだよ、見つからないようにしてるんだよ」

田村先輩はどこか楽しそうだった。男の子特有の探検ごっこのような感覚でいるのかもしれない。

「俺、正毅に嘘ついててさ、いつも大学では彼女といちゃいちゃしてるって言ってるんだ」

「でも本当は」

「人生で彼女できたことが無いん」

「じゃあ私が彼女役やってもいいですよ」

「ぼ、僕が直井といちゃいちゃするのかん!?」

「少しなら別に良いですよ。あ、今度ご飯奢ってくださいね」

「それはダメだん!」

「なんでですかん」

「…あまり言いたくはなかったが正毅は君の事が好きだったん」

「えっ」

ただ素直に驚いた。高校時代の後輩の大城も私の事が好きだったようだし、どうして私は年下にモテるのだろうか。嬉しいが、そうではないのだ。

「田村先輩、私もお供します」

私はそれから一日中見えざるサムスン君に見つかるまいと隠れ続けた。恥ずかしいのもあったが、

…いや、恥ずかしい以外の何物でもなかった。

しかし彼氏ほしいな、と少し思いもした。

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