私の、
高校二年生。2Bとなった私は、親友の豚饅頭と一緒になり、安心した。人見知りというほどではないが、やはり初対面の人間と接するのは疲れる。
「ゆっこ!」豚饅頭がいつも通りの快活な笑顔で私のものへ駆けてくる。
豚饅頭とは、私がつけたあだ名だ。本名は桜庭真紀。決して見た目が豚なわけでも饅頭なわけでも、ない。豚饅頭とは小学校からの付き合いで、二人の家の近くにあるカミオカ商店で売っている豚饅頭というセンスのかけらもない名を持つ肉まんを彼女は好んで食べる。気が付いたら高校の友人も真紀のことを豚饅頭と呼んでいる。ちなみに彼女は去年ミスコンの最終候補に選ばれた。正直羨ましい。
おお、豚饅頭、と私は手をひらひらさせてこたえる。
「またゆっこと会えて嬉しいよ」
「おととい遊んだばかりじゃん」
「ふにゃ」
豚饅頭はいつもふにゃふにゃしているのだ。ちなみにカミオカ商店の豚饅頭はガチガチでそんなに旨くない。
「ねぇ、豚饅頭は文系理系どっち行くの」
「まだ二年生になったばかりじゃん」
「いや、今のうちに考えておいたらのんびりできるじゃん」
「あはは、ゆっこらしい」
放課後、私たちはそれぞれの部室へ行く。
豚饅頭はバドミントン部。一度試合を見に行ったが、豚饅頭はあだ名に似つかわしくない華麗な体さばきだった。私は動くのは嫌だけど運動はしたい、という武道の神様に怒られそうな理由で弓道部に入っている。
「よう、直井」
「こんにちは」
先輩だ。相変わらず、かっこいい。
「クラスどこになったの」
「B組ですね」
「へぇ…うえ、B組って八木のクラスじゃん、あいつまじで厳しいから」
「ふうん…まぁ、なんとかなりますよ」
「適当だな」
「それが私なんで」
「悪くない」
「へへっ」