これから、
次の日、豚饅頭は学校に来た。私はなんとなく声をかけづらく、豚饅頭の教室の前で立ち往生してしまっていた。
ふと横を見ると三崎がいる。豚饅頭の冴えない彼氏だ。昨日は席に座ったまま何もリアクションをしていなかった。三崎の前には溝口がいる。
「溝口」
「ん?誰ですか」
「隣のクラスの三崎と言います」
「ああ、はい」
「桜庭の彼氏です」
場が凍りついたのが分かった。豚饅頭もこちらを振り返り驚いた様子だ。
「お前なんかが?」
そうだ。 豚饅頭は彼氏はいることも今まで言ってなかったし、三崎の名前など私以外に一度も出していなかったのだ。
「そうだ」
「冗談はやめてくれ」
「そうだよ、三崎くんが私の彼氏だよ」
豚饅頭が大きな声を出す。溝口は面食らったような顔をし、何も言えない。
「お前が誰かに命令したんだろ、黒板にああ書け、と。桜庭の机にゴミを置け、と。お前は力がある。子分を引き連れていい気になってる王様ゲームだ」
「なんだと」
「真紀に謝れ!」
三崎はそう叫んだ。今まで声すらほとんど聞いたことなかった。
「まあ、そうだな。確かにあれはすべて俺がお願いしてやってもらったことだ。だが王様ゲームは酷いんじゃないか」
その時、溝口の顔が物理的にゆがんだ。三崎が思い切り殴ったのだ。溝口は動揺し、後ろへ飛ばされる。続けて三崎が殴る。たまらず溝口はしりもちをつき、そこに対し蹴りを入れる。慌てて近くの人間が止めに入る。溝口も激昂し、三崎に殴ろうとするも止められる。
数分して場が収まったころに豚饅頭が二人の間に立った。
「溝口」
「あ?」
「私はヤリマンじゃねーよこのくそヤリチン野郎が!」
とても女子の発言とは思えないが豚饅頭はそう言い放ち溝口へビンタする。
その衝撃で溝口は鼻血を出し、また場がざわつき始めたと思ったら先生がやってきた。
全ての原因は三崎、豚饅頭が溝口に喧嘩を振ってきたと周りから証言があり、二人は三崎は一か月、豚饅頭は二週間の停学処分を下された。溝口には注意だけで済まされた。
私はただ立っているだけで、なにもできなかった。




