侵入するしかないんだよっ
まったく。いやになるよ、最近の世の中は……。何せセキュリティが堅いからね。僕のような人たちにはやりにくいったらないよ。
「はぁ、寒いなぁ。早く終わらせたいなぁ」
そんなことをつぶやきながら、僕はこっそりと一軒家に忍び寄った。
月が輝くきれいな夜。星たちも満開(?)だ。雲はあるし、都会だからあまり星はみえないけどね。
それでも、夜の綺麗さは損なわれない。いい夜だねまったく。何でそんな夜に僕はこんなことをしてるんだろうね。
さてと、周りに人は……いないね。誰かに見られたら大変だ。
ドアが開いてればラッキー、なんて気持ちでドアノブをガチャガチャやってみたけど、やっぱり鍵がかかってる。
昔の家はドアがなかったんだよなぁ。鍵もかかってなかっただろうし。そんな時代に生まれていたら楽だったのに。ま、愚痴っても仕方がないね。
さーて、どうやって忍び込もうかなぁ。
「ま、それが仕事だから仕方がないよね」
さーて、ドアがダメなら、窓でも調べてみるかな。いや、ドアをピッキングっていう方法もあるね。でも、ピッキングは跡が残るし。やっぱり、窓を調べてこよう。
窓は開いてなかった。仕方がない。やはりピッキングでいこうかな。もちろん、ピッキングのための道具は常備してある。仕事のためだからね!
周りに人がいないことを確認してから、僕はドアノブに手をかけた。さあ、実力のみせどころだ。
ピピピピピピピピピ――ッ!
ごめん、失敗しました。
「だから最近の世の中は嫌なんだ! セキュリティが堅すぎるんだよ! こっちの身にもなってくれ!」
それでも警報は鳴り止まない。非常な世の中だね。マズイ。このままじゃ確実に逮捕だ。仕方がないね。逃げる−−だめだ。そんなことしたら金は手に入らない。そうしたら生きていけない。いっそ逮捕されれば生きてはいけるよね。
……こんな状態でつかまったら洒落にならないな。
「くそう、とりあえず強行突破だ!」
僕はドアをぶち破った。ゴメンネ。さてと、今の音は音量的にはそこまででかくないけど、家の中の人は起きてしまっただろう。それにきっと、警察のコンピューターにリンクしている。急がないとね。
……さて。さっきの警報でそろそろ警察は出動したかな? これだと残りの仕事がやりにくいなぁ。
こんな状態でもう一度家(別の家だけどね)に忍び入るなんて頭の悪いことこの上ないけど、それでも僕は侵入しないといけない。仕事だからね。
「ホント、嫌な仕事だよなぁ」
僕はこの仕事に誇りをもってるけどね。
さてと、このあたりの家はセキュリティが特に堅いらしいね。仕方がない。窓から入るかね。穴を開けてね。ぼ、僕はドアのピッキングは苦手なんだ。
まあ、それはともかく。まずいね。何がまずいって、僕が今から忍び寄る家の周りに警察が沢山いるあたりが。
でも、ここでは退けない。何故か? 繰り返していうけど、コレは仕事だ。そして僕はこんな大変な仕事でもそれなりに誇りをもってるし、好きだからね。
んー、どうやって警官の目をかいくぐるかなぁ。どっかほかの家に火でも放ったらそっちに注意がいくかなぁ。でもそれだと罪の上塗りだよね。
仕方がない。普通に突破だ。
警察官が巡回(?)で僕の目標の家から離れていったところを狙って、僕はすばやく、しかし音を立てずに近寄っていった。ドアの鍵が開いていないかなんて最初から確認しない。目標は窓だ!
「さて、まずは窓に穴をあけて……」
僕は道具を取り出し、窓に近寄った。
ピピピピピピピピピ−−ッ!
窓にまでセキュリティがついてるなんて聞いてないよ! というか、今時ってそんな時代なの!? とにかく早くしないと!
またしても強行突破になってしまった。僕はこの仕事に向いてないのかもしれない。でもめげない。さて、次の家だ!
「今度は二階の窓からスマートに侵入しよう」
ブロック塀に足をかけて、二階のベランダに登――うわぁ、足がすべった!
「よし、今度はもう一回ドアにチャレンジ……」
ピピピピピピピピピ――ッ!
「……ドアはやっぱりだめだね。初心に戻って窓にしよう……」
ピピピピピピピピピ――ッ!
はぁ、やっとノルマはあと一軒だ。ここらの警官はさぞかし首をひねっていることだろうね。『何でこんなに連続で近くの家にばかり、警官の警備の前で盗みに入るのか』ってね。
でも、それが僕の仕事なんだ。格好悪いったらないけどね。警報ならしてるし。僕の同僚はうまくやってるけど、僕は下手なほうなんだ。
それでも、大切な仕事に違いない。なんせ、子供に夢を与える仕事だからね。心の中で小さくそうつぶやいてから、僕は赤に白の毛がついたコートを羽織りなおして、プレゼントの入った白い袋を持ち上げて歩き出した。
本当、最近のこの業界はきびしいよなぁ。
『えー、次のニュースです。今日の深夜、赤いコートを羽織り、白い袋を持った男が不法侵入者として現行犯逮捕されました。事情聴取する警察官に、男は「僕はサンタクロースだ。仕事のために入った」と繰り返している模様です。ここ数年、聖夜にサンタクロースと名乗る悪質な不法侵入者が相次いでいる模様で、保護者の方々から「サンタクロースのイメージと子供の夢を汚しかねない」という文句の電話が相次ぎ――』
本当、最近のこの業界は厳しいです。
どうも、バレバレ感満載のこの作品、楽しんでいただけたでしょうか。きっと無理だと思います。次回はがんばります。次回はがんばりますので、何かアドバイスお願いします。