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異界漂流者の物語  作者: hachikun
47/95

暗躍する人形師

 空はただ晴れていた。

 見知らぬ異世界の空だけど、こうして見上げるのはオレはわりと嫌いじゃない。憎んでも憎んでも飽き足らない存在を、この目に入れないですむんだから。

 だけど今、オレは前を向いていた。

 

 オレたちが立っているのは、小高い丘の上。

 この世界で最後の大国『ユフステロ聖教国』の聖都『シャンカス』を見下ろす場所であり、オレの眼下には今、防衛態勢に入って城壁やその周囲を動き回る人、それに並ぶ兵士たちが見えている。

 

 たぶん最初で最後の本格的な戦いが始まろうとしていた。

 

 対するオレたちの陣営といえば、数はそう多くない。

 ただし、質はいくらか違っている点があった。

 たとえば鎧などは統一されているもののデザインはバラバラで、あきらかに各地からかき集めたものだし、装備している武器はというと逆に統一性こそあるものの、まるで昔の工業製品のように無骨で、しかも、そっくり同じデザインが目立つ。

 そしてさらに言うと。

 うちはいわゆる杖をもつ魔法師がおらず、代わりに明らかに銃っぽいカタチの杖をもつ者が多くいた。

 また、その大型のもの──どこか地球で言うバズーカに近い外見の魔道具を持つ集団もいて、それを守るように配備された守護兵団もまた、杖のデザインだけはやっぱり銃っぽいもので統一されていた。

 そして。

 オレの軍にいる者は、誰ひとりとしてその目には喜怒哀楽は見えず、表情もひたすらに穏やか。

 そう。

 まるで人間そっくりのロボットと言われても納得しそうな『兵たち』だった。

「ご主人様、戦闘準備、完了いたしました」

「おつかれ、アーデルハイト」

「……」

 何も言わず、アーデルハイトは静かに頭をさげた。

 

 彼女は、オレの最古の『部下』だ。

 オレがこの世界に投げ出されたその日の夕方、貴族間の陰謀ってやつの犠牲になり盗賊に襲われ命を落とした、元上位貴族の令嬢だった者だ。

 え?間違ってる?いいや間違ってないよ。

 彼女は死者だ。

 リビングデッドといって、まぁ簡単にいうと不完全な蘇生魔法で肉体は復活したものの、魂の抜け殻になってしまった、いわば生きた肉塊。

 

 え?喋ってるだろって?

 いや、しゃべってるけど生きてないんだ。

 

 彼女の脳は働いているが、その中にある心は人間のものではない。

 たしかにその身体は生きている。

 だけど、肉体を制御しているのは人間の魂ではなく、別の何かなんだ。

 

 オレの固有スキル『人形師』。

 戦いがまるでダメダメなオレの唯一のそのスキルは、死んだ人間の『肉体』を蘇らせることができる。

 そう、肉体だけ。魂は戻ってこないんだ。

 失われた魂の代わりに別のもので補った結果、彼女たちは人間の身体をもつ別の何かになった。

 最初は本当に、ただ命令した事を行うだけだった。

 でも、まがりなりにも人間の脳を使っているためか学習能力が高くて、まるで高度な人工知能のように賢くなっていった。

 そして彼女らの力で、オレは生き延びてきたんだ。

 

 そしてオレは、自分のやるべき戦いをはじめたんだ。

 

 オレの自軍に人間はいない。

 というより、この世界にオレ以外の人類は存在しなかった。

 アーデルハイトたちは『この世界の人間族』ではあるものの、それは見た目だけだった。彼らはオレたち異世界人を、神がくれた便利な道具としか思っておらず、とても相容れない存在だった。

 そしてオレは、傷ついても共存を求めるどこかのお姫様みたいにはなれないし、なりたくもないし、ならない。

 悪意には悪意をもって返す。

 そうした果てが、今日のこの日だった。

 

  

「魔法部隊、前へ」

 大型の銃もどきを持つ部隊が前に出た。

 彼らは既に一発目の充填を終えているので、かまえて準備する。サポートの兵士がスカウトのようについているのが、なんか自衛隊の演習などを想像させる。

 だけどこれは演習じゃない。

「構え、狙いは眼前の城壁。アーデルハイト、ターゲット魔法で位置示せ。魔法部隊はターゲット同期せよ」

 アーデルハイトの目が光り、それを受けた兵士たちが銃の向きなどを調整する。

 ここで焦ってはいけない。

 見た目は機械的な動きに見えるが、実は兵士の能力にはバラつきがあってターゲッティングも結構時間がかかる。なので、急いでいない限りは全員からOKの報告が出るまで辛抱強く待つ。

 そして。

「ターゲット完了しました」

「発射よぉーい、三、二、一、撃て!!」

 掛け声をかけた瞬間、彼らの銃もどきから大きなエネルギーが一斉に放たれた。

 下手な砲弾よりずっと速く飛び、敵兵団の頭上を越えて城壁に向かって伸びていった。

 そして。

「障壁に命中、揺らぎます」

「二射目準備!一陣は後退、三陣は二陣のサポートへ!」

 第一陣は城壁手前の障壁に命中した。

 ここまでは予測していたのだろう、敵軍は城壁を振り返る事なく、こちらに向けて前進を開始した。

 オレたちが城壁を破れないと確信しているだろう。

 だが。

「二射目、ターゲット同期開始!」

「報告。魔弾、三割消失。残りの七割が回転しつつ障壁にダメージを与え続けています」

「よし、効果が出ているっぽいな!」

 打ち込んだ魔弾はオレの最新作だ。

 帝国の防壁を破るのに苦労した事の反省から改良を重ねた、名付けて『ドリル魔弾六号』。

 え?そのまんまだろって?いいじゃん、わかりやすくてさ。

 

 魔力障壁を効率よく破る方法はいくつかある。

 その中で最もわかりやすいのは、力を限りなく細く一点集中する事だ。この世界の攻撃は物理にしろ魔法にしろ『面』の力がほとんどであり、例外的にある『点』の力は槍による突きなど、その強さに限度があった。

 でもオレは、それにピッタリの『点』のアイデアがあった。

 ……そう、ドリルだ。

 

 キリやネジ釘など、地球には回転力を使ってねじ込んだり、締め込む技術がたくさんある。

 でも、この世界ではそういう技術が皆無ではないが、どうにも遅れていた。

 たぶん、魔法による接合などが発達してしまったせいか、純粋な物理で働く『ねじ』に関する技術が遅れているんだと思う。特にドリルのような道具は鍛冶職人のための特殊な道具類にはあるが、一般には全くもって知られていなかった。概念すらなかった。

 それを利用する。

 結界魔法は強力なものが多いが、そんな強力無比なものを、しかも、いつ来るかわからない攻撃のために常に張り続ける事などできるわけがない。

 ならば、どこで手を抜くか?

 護りに手を抜くのは自殺行為なので、こういう場合、力の種類を変える事が多い。

 具体的には今回のように、実際にはありえないような『点』の大きな力への対応を切り捨て、そのぶんを結界の強さと燃費の両立のために使うわけだ。

 だから、オレの作った「にわか」戦力でも破れるってわけだ。

  

「二射目、狙いがつき次第撃て!!」

 今度は一斉でなく、次々に加勢するように魔弾が着弾していく。

 するとついに、音もなくキラキラ、ピシピシッといった感じで、都市全体の外側に光の筋のようなものが走り始める。

「よし交替、三射目ターゲット急げ!

 一陣、魔石で再装填した者から三射目の後ろにつけ、急げ!」

 計算だと、一分以内にもう一撃見まえれば、障壁は吹っ飛ぶ。

 これにより最低一分、運が良ければ永久に障壁は消え去る事になるわけだが──。

「三射目ターゲット完了しました」

「三射目、発射用ぅーい、三、二、一、撃て!!」

 再び、一射目と同様の激しいエネルギーが障壁に叩きつけられた。

 その瞬間、都市を覆う障壁全体に激しい光がまたたいた。

「!?」

 その途端、前方から来る敵兵たちに動揺が広がりだした。

 そりゃそうだろう。

「一陣、狙いがつき次第撃て!!」

 指令から五秒とたたないうちに、最初の一発が都市に向かって放たれた。

 その一発は、さっきまで障壁のあったところを普通に通過すると都市を覆う城壁の壁にぶちあたり。

『!?』

 そのまま、城壁に丸い穴をあけ、そのままぶち抜けて中に飛び込んでいった……。

「よし!そのまま二陣まで順次撃ち続けろ!

 三陣目からは通常弾頭に変更して再装填!

 狙いは法王殿の異世界召喚魔法陣!!おわり次第、他も習って車座で攻撃を続けろ!!」

 しばし後。

 嵐のような攻撃が城壁を吹き飛ばし、もはや遮るもののない破壊の牙が都市に襲いかかった。

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 オレはいわゆる召喚者というやつだ。

 数年前、突然に呼び出されたわけだけど、お城とか神殿とかでなく、何もない街道に投げ出されちまった。

 なんで召喚ってわかったかって?

 そりゃあ、よくわからん魔法陣がいきなり足元に開いて、向こうに何か偉そうなジジイどもが見えてたからな。

 あれはたぶん、オレを呼び寄せて隷属させるつもりで……だけど何かの理由で失敗したって事なんだと思うよ。

 

 オレは何とか市井にまぎれて生きようと、言葉や習慣などを調べようとした。

 ところが、ワケもわからず情報収集を続けるうちに、その考えが甘いことを思い知らされたんだ。

 

 まず、この世界の人間族は、自分たち以外を、そもそも人類と考えていない。

 差別なんて甘いものではなく、神から与えられた道具としか考えていなかった。

 しかもオレみたいな黒髪黒目はこの世界にはおらず、魔力の雰囲気も異なっている。つまり、どこにいっても何をしても、すぐに異世界人とバレてしまう。

 そして、子供ですら異世界人というだけで牛馬未満を見る目を隠しもしないし、それをおかしいと思う者も誰もいないありさま。

 これダメじゃん。

 最初から詰んでいると思い知らされた。

 

 オレはどちらかというと平和主義者だ。

 だけど同時に、戦争しなければ自動的に平和が手に入ると信じている種類のお花畑でもなかった。

 この世界の人間族に自分を対等と認めさせる?

 ばかばかしい。

 

 それって向こうからすれば、魔女狩り旋風が吹き荒れる中世ヨーロッパに宇宙人がUFO降り立って『同じ人間です仲良くしましょう』と言うのと変わらないよ。

 あっというまにUFOは取り上げられ、見世物小屋にでも売られて終わりだ。

 だいいち、オレだってごめんだ。

 こんな最低メンタリティの遅れた種族と手を取り合いたくないと、知ればしるほど心底思った。

 

 そんなオレに望みがあるとすれば、それは一つだけ。異世界召喚なんてふざけた真似を二度とできないようにするってことだ。

 だったらやる事は話し合いではない。

 よその世界から人を呼ぶなんて技術が、そこいらの野良魔法使いでも簡単にできるわけがない。もしできたら、そこいら中に異世界奴隷が溢れているはずだがらな。

 高度な知識が必要?ならば、書物を焼き捨てて継承者を消せばいい。

 特定の施設が必要?ならば、その施設をすべて打ち壊せばいい。

 とんでもない難事業に見えるだろうけど、そうでもないとすぐにわかった。

 なぜなら、この世界の識字率は昔のヨーロッパ程度しかなくて、庶民に学はなく、宗教関係者と貴族がそういうのは独占していたからだ。

 一部階層が全てを掌握しているのなら、その階層を消せば文明は崩壊する。

 地球でも、今では失われた多くの文明で同じ事が起きている。

 短期間でやるのはたしかに難しいけど……オレでもできそうな対策があったしな。

 

 む?

 珍しいな、アーデルハイトたちが敵兵をとらえたらしい。

 殺さずにとらえたのは何でだろうって、ああ、あちらの聖女様とやらが乗り込んできたのか。

「なんで、なんで浄化が効かないの!?」

 は?浄化?

 ああ、そうか。

 うちの兵たちをアンデッドと勘違いしてやがるのか。なるほど。

「アーデルハイト」

「はい」

「せっかく捕らえたところ悪いけど、あれはいらないぞ」

 今回の目的は聖国首都の破壊だけだし。

 でも。

「お言葉ですが、放置しておけません」

「あー……そういうこと?」

「はい」

 ここで助けてしまうと、後日に犠牲者が出るおそれのあるヤツってわけね。

 しょうがないな。

「わかった、そいつは殺せ」

「了解しました」

 ヒッという声と共に聖女は逃げようとしたけど、どうすることもできず押さえつけられた。

 致死魔法がかけられたようで、急速に生気を失いはじめる。

 もう動けないだろうけど、死ぬまでは少し時間があるはずだ。

 ぐったりとなった聖女様にオレは声をかけた。

「ひとつ聞きたいが、なんでウチの連中に浄化がきくと思った?

 うちはそもそも生きた人間ばかりで、せいぜい雑用にちょっとゴブリンがいるくらいだ。

 浄化なんか効かねえよ」

「え?生きた人間?」

「知らなかったのか?うちの兵は死者もモンスターもいないぞ?」

 この世界のゴブリンはただの亜人種族だ、もちろん浄化なんて効かない。

「それは」

「あー……あれか、こっちを悪の軍団とか適当に刷り込まれたクチか?」

 絵に描いたようなバカだな。

「まさかと思うが、オレを倒せば元の世界に帰れるとか言われて参戦したのか?」

「……」

 おいおいマジかよ。

「少しはおかしいって思わなかったのか?」

「だって、あなたはどこも召喚してないって。自分で世界を渡ってきた化物だから、帰る方法も知ってるはずだって」

「あのなぁ」

 オレは頭をかいた。

「オレも召喚されたんだよ。召喚元は潰したがな」

「そ、そんな」

 聖女様の声が掠れて細いのは、もう死が近いだけだろうか?

「だいいち、オレが知ってるってんならオレを殺しちゃ帰れないだろうが。アホか?」

「……」

 聖女は目を丸くした。

 そして、半分泣いているような顔で笑った。

「……あたし、すっごいバカ」

「ああそうだな、すごいバカだ。

 けど喜べ、ひとつだけいいことがある」

「え?」

 オレは聖女様だった女の子の横にしゃがんで言った。

「おまえはもう死ぬけど、ひとりぼっちじゃない。

 このオレが……同じ人間で同郷者のオレが見送ってやる。

 あまり見栄えのいい見送りじゃないが、ひとりぼっちで果てるよりはマシだろ?

 それに。

 もう知らない土地で、ひとりぼっちで泣かなくていいんだ」

「……!」

 女の子はオレを見て。

 そしてその顔が、みるみる安らいだ、年相応の女の子の笑顔になって。

「……うん」

 小さくうなずいて。

 そしてそのまま、眠るように死んでいった。

 

「この娘を埋葬してやってくれ」

「人形にしないのですか?」

「ああ、しない。

 盗賊に掘り起こされないよう墓石はなしで。

 埋め終わったら教えてくれ」

「わかりました。では埋葬に回します」

「任せた」

 

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 彼の名前については伝わっておらず『ケンタ』なる偽名のみが残っている。

 古い時代の魔王として今に語られているが、実は魔王らしい戦いをやった記録などほとんど残されていない。今回、再現を試みたのは唯一記録が残っている、当時の聖国に攻められて反撃を行った時のそれを元にしている。

 ケンタについて判明している事のひとつが、戦闘技術など全くなくて、お姫様のように守られていたということ。

 平素の彼の素顔は魔法の研究家だったとされるが、詳しいことはわかっていない。

 

 ちなみに、よく物語などで語られるケンタの容姿については、だいたい史実通りらしい。

 ただし、いつも装備していた闇魔王のナイフは邪悪な魔術を使うものではなく、手ずから野営地で酒のつまみを作るのに使っていた事がわかっている。魚料理を特に好んだ。

 まさかの料理用!?

 驚きの事実である。

 

 そんな彼であったが、彼が魔王と恐れられ伝説になったのは、ケンタの真価が武器戦闘ではなかったからに他ならない。

 

 たとえば流通経路の破壊。 

 彼は戦争というわかりやすい手段をとらず、むしろ情報を掴ませず暗躍する事を好んだ。

 また、別人の名前で飲料水に混ぜるだけで容易に使える避妊薬・堕胎薬を開発し、当時の薬学方面に絶賛されているが……その時の彼の目的は、子供の数を減らす事にあったという。

 事実この時代の都心部では、生まれる子供の数が前の時代の百分の一まで激減した。

 理由は簡単で、彼の避妊薬は相手にばれないように簡単に処方できたから。

 つまり夫婦などで片方が子供を望んでいても、片方がこっそり薬を処方して妊娠を避ける、そんな用途に頻繁に使われたという。

 恋人や夫婦の間で子供がほしいと同意したとしても、男女間で温度差があるなんてのはよくある事だ。

 たとえば、夫がすぐにも子供を望んでいても、妻が、今はまだいらないとか、この夫で将来大丈夫かしらとか考えていた場合。表面的には夫に従いつつ、こっそり避妊薬を処方する。

 あるいは男女間では問題なくても、他家に抱き込まれて主君夫婦に薬を所望するメイド。

 本来なら避妊なんて無理なシチュエーションでこっそりと避妊が広がっていった結果、出産数が都市部を中心に激減。

 しかも当時は出産数などの統計が行われていなかったので、原因が判明した時には実に数十年が過ぎていたのである。

 しかも同時代、まるで狙ったように、望まない妊娠の悲劇などを描いた物語がたくさん作られヒットして、これも子供数の減少に拍車をかけた。

 これにより、一組の夫婦から平均で五人以上生まれる事も珍しくなかったこの時代に、全く子供ができない夫婦が大量発生するという未曾有の異常事態にまで陥った。

 この影響は以降、長く続き、さまざまな分野に悪影響を与えた。

 結果。

 この世界がかつての魔法文明を取り戻すには、実に2800年以上がかかってしまった。

 理由は、出産数激減の影響を最も受けたのが王侯貴族だからだった。

 魔道士や研究者には貴族が多かったが、敵対者同士の薬の盛りあいで出産数が激減してしまった結果、なかなか子供ができなかったり、流産の果てに子供が産めなくなったり。

 そうした果てに魔法の研究を行える者が減りすぎ、失伝するものがたくさん出た。

 そした結果、魔法技術は千年単位で遅れる事になった。

 現在も当時行われていた方式の異世界召喚法については、今もなお原理すらもまったく判明していない。

  

 たしかにケンタ自身は戦闘スキルなどまったく持っていなかったし、派手な活躍をして誰かをやりこめた話も伝わっていない。それは事実だ。

 だが人類は確かに彼に追い詰められ、後に千年以上にわたる『冬の時代』に飲み込まれる事になったし、それを見破った一部の者たちに魔王と恐れられた。

 

 そして我々は今もなお、彼の持っていたスキルすらつかめていない。

 謎の多い人物なのである。

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