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異界漂流者の物語  作者: hachikun
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マサユキのその後

 異世界に行く、送られる、漂流する話は数多くあり、多くの民が異界にわたっている。

 だが、彼らの全てが目立つ活躍をするわけではない。むしろ目立たぬようひっそりと生きるのが大多数であるが、それでは物語として地味だし、何よりこの手の異界物語を好む子供たちにウケが悪いのだ。たとえ非常識だろうとバカだろうと、危険に自ら飛び込んで死にかけるような者がそういう物語では王道とされている。

 では、そうじゃない異界漂流者はどうなのか?

 ここに、そんな人物のひとりを紹介しよう。

 彼の名は、正行(まさゆき)。異界漂流者である。


 


 ◇ ◇ ◇


 


 所属ギルドを移籍し、順調に冒険者としての日々を正行は送っていた。

 正行の仕事をひとことで評するなら「安全第一で確実に」。

 採取関係の仕事なら、輸送や保管、後日の再採集のことまで配慮した手順を組み。

 護衛仕事なら、万が一を考えて手配を行う。

 さらに、日々の生活の中で自然と強くなるのではなく、必要な時にそなえて訓練も欠かさない。

 そんな正行は信用され、いろいろな仕事を依頼されたり任されてきた。

 

 だけど、その全てが良い仕事ではなかった。

 たとえば、パーティを組んだ仲間たちが、危険を感じた彼の警告を無視して危険な仕事を勝手に受注、死ぬ気はないのでそのパーティを抜けたが後日、彼の言葉を無視してその仕事にいった元仲間たちが実際に全滅、そのせいでこっちにはなんの落ち度もないのに陰口を叩かれたり。

 たとえば、所属支部のギルドマスターが貴族と癒着して正行を無理やり隷属、私兵化しようとしてきたのでギルド本部と王都の上級貴族に話をつけ、これを逆襲して潰したり。

 そういう、なんとも言えない「人災」を正行は何度か経験していた。

 

 そして今回もまた、そういう「人災」のケースとなったようだった。

 

 

 きっかけは、ギルド依頼で行っていたひとつの仕事。まぁ新人教育である。

 本来なら大勢でやるのだけど、その新人チームは協調性に乏しく周囲から浮いており、昇任試験を受けるには問題があった。それどころか現状のままだと冒険者として続ける事についても問題視されていた。

 このための正行への「見極め依頼」だった。

 なのだが。

「マサユキって俺たちより若いのにギルド仕事なんてやってんのか?なんでまた?」

 協調性を問題視されるだけあって、いろいろと問題があるようだった。

 そも、ギルドからの依頼であり正行も「依頼側」なのは言ってあるのに、タメ口どころか完全に下に見ているのが態度からありありとわかる。

 見た目で判断されると確かに正行は日本人顔で若く見えるのかもしれないが、それにしてもひどい。

 無言で彼らメンバーを観察していた正行だったが、さすがに苦言を呈する事にした。

「君は、これが見極めと理解して発言しているのか?」

「はぁ?」

 何を言いたいのかわからない、という顔だった。

「おまえ、いくらギルドからの依頼だからって偉そうじゃねえか?雑魚のくせによう」

「誰が職業の話をした?そもそも、俺は依頼側の者だと言ったのが聞こえなかったのか?」

 おまけに装備でひとを判断し、さらに斥候職を下っ端と見ているらしい。

 これはひどい。正行は内心ためいきをついた。

「俺は君たちの行動を見ている。依頼を果たすために何を見て何を聞いて、そしてどんな話をしているか。役割分担はどうしているか、周囲への警戒はどうしているか。依頼を受けるために受付窓口に立ったその瞬間からな。

 つまり俺は君らの見極めを行っているわけだが、君には、君らにはその自覚があるのか?」

 普通、見極め中にそんな助言をするのはルール違反である。

 でもあまりにもひどいので、正行はついつい言ってしまった。

 だがそれに対する反応は、そんな正行の予想よりもさらにひどかった。

「……おまえこそ何いってんだ?俺たちゃ試験免除のエリートチーム様なんだぞ、わかって言ってるのかおまえ?」

 おいおい。

 これが試験だというのは言われているはずだが、聞いてなかったのだろうか?

「ほう、エリートチーム?」

 この時点で正行は「これはダメだろ」と思っていた。

 しかしそれでも何かの誤解ならと、一縷(いちる)の望みをたくして質問してみた。

「そんな話は初めて聞いたな。君らに対する説明にも、そして君らについて俺が受けた説明にもな」

「へ、そりゃおまえごときに教える必要ないって事だろ?」

「そうよそうよ、私たちは試験なんかなくても上位クラスにいけるって断言されたんだから!」

 それは「君たちに試験は必要ない」つまり、試験を受けても無駄だと言われたんだろう。

 ひどい勘違いだなぁと正行は心底呆れた。

 正直、もうこれ現時点で不合格だろと。

 しかし、さすがにここでいきなり帰るのもなんなので、ひとこと言ってやる事にした。

「ほほう。じゃあ今、君らが受けている試験はなんなんだい?」

「試験?」

「ああ、しかもただの試験じゃない、前代未聞の落ちこぼれのためにわざわざ温情で行われている追試験なんだぞ?」

「……はぁ?」

 ひとりの男が怪訝そうな顔をしたが、別の男が言い放った。

「ははあなるほど、おめえの追試験ってことか。だろうなぁ、いかにもマヌケそうだし」

「だなぁ、ぎゃははははっ!」

「ウフフ」

 どうやら正行の試験だと勘違いをしているようだ。

 いや、厳密にいうと眉をしかめたり渋い顔をしているのも二人ほどいるが。

 だがその者たち……ひとりは正行と同じシーフ系だ……は何も言わない。

 しかしさっきの発言からいって、このチームで直接戦闘力の低い者は公平な扱いを受けていないのだろう。だからその意見も尊重されないのだろう。

 正行はためいきをついた。

  

 ──こりゃあ問題外でしょう、ギルドマスター。

 解散させれば二人くらいは拾えるかもだけど、他は論外だわ──

 

 引き受ける前に物陰から全員を見た時の印象だが、まさにそのとおりだったなと正行は内心、ひとりごちた。

 

 チームによっては、ここから指導に移るのもありである。

 実際正行は過去に、やはりこの手の依頼で、へっぽこだけど良さげなチームに遭遇したことがあった。彼らはおバカチームだったが実に個性派ぞろいで、また、一番大切な「安全に常に気を配ること」って点がうまく働いていた。

 だから、これはこれでいいチームになるだろうと思ったものだ。

 ちなみにその個性派チームは今、王都で上位チームとして頑張っているらしい。

 

 しかし今回のチームには、そういう見込みも感じられなかった。

 確かに個別なら剣も魔法も多少使えるのだろう。そして彼らは同郷という事だから、気心が知れていて今までやってこられたのだろう。

 だがこの先は違う。初対面の他人や他のチームと協業するべき時も出てくる。

 そんな時に、戦闘職がないからと冷遇したり、ランクの低さや武装などで相手を見下す態度をとったら?

 ──いくらなんでも、これは話にならない。

 

「話にならんな」

 ためいきをついて正行は言い切った。

「協調性ゼロ、やる気もゼロ、おまけに非戦闘職を公平に扱うこともせず、さらに状況を把握しようという意思もない。

 なるほど、こりゃあ試験で門前払いを食うのもうなずける」

「……なに?」

 男たちが眉をしかめたのを見て、正行はハァ、とためいきをついた。

「俺の言葉も理解できないのか。わかった、はっきり言ってやる。

 チーム名『無双の牙』。

 今回のおまえたちの見極めは現時点をもって完全に不合格となった。

 おまえたちは、昇格試験以前に、そもそも冒険者として今後やっていくのに不適切であると評価された。ゆえに昇格試験は門前払いで、さらに今後も続けていくうえでの資質を見るという意味で今回の依頼と、俺という見極め役がついたわけだが──」

 そこまでいうと、正行は大きくためいきをついた。

「これでも今まで、百を超えるチームの見極めをやってきたが……正直、こんな悲惨な評価は初めてみたぞ。よく今まで冒険者やってこれたなおまえら。

 まぁ、やめて田舎に帰れとまでは言わん。

 だけど現状のおまえらじゃ、どう転んでも上位職に行くのは無理だ。試験以前の問題だ。

 というわけでチーム名『無双の牙』。

 おまえらは先日ギルドから話があったように、今後無期限で昇格試験の受験資格を失うことをここに宣言する」

「……なに、いってんのおまえ?」

「まだ理解できんのか。試験はもう終わりといったんだよ。

 ま、この依頼をちゃんと最後までやれば、それはそれでポイントになるから無理に帰れとは言わんがな」

 そういうと、正行は背伸びした。

「これで俺は帰らせてもらうわ。あばよー」

「って、ふざけんなこの野郎!」

 メンバーのひとりが激怒して抜剣、斬りかかってきた。

 それを見た一部のメンバーが、アッと声を出した。

 その男は完全武装の戦士で、正行は革鎧すらろくに装備してない。しかも速い。

 次の瞬間には正行が斬り殺されるだろうと思われたが。

「な」

「!?」

 正行は簡単に身をかわすと男の腕をとり、そのまま勢いを借りて床に叩きつけた。

 鎧と床がぶつかる、硬質な音が響き渡る。

 男の腕をとり逆に引っ張り、悲鳴を挙げさせた。

「話にならん」

 正行は息もついていなかった。

「現状を説明しただけでこれか、確かにこれじゃ昇進試験なんか論外だわな。

 しかも、なまじオマケ程度でも力があるから始末におえん」

 そういうと、身体の下でイタタタ、は、放せと言っているが正行は平気なかおだ。

「だいたいギルドマスターもセコすぎるだろ。こんな野盗崩れに再試験なんて無意味だっつの」

 そういって、ふうっとためいきをついた。

 周囲の仲間たちが殺気立ち、戦闘モードに入ったのに気づいたからでもあった。

「ほほう、やる気なのか?

 警告しておくが、俺の立場はただの冒険者じゃない、準だがギルド職員の扱いになっている。つまり、現時点でおまえたちはギルド職員に対する殺人未遂という事になるんだぞ。

 それでもなお、警告に従わず俺を害するつもりか?」

「ふざけないで!キールを開放しなさいよ卑怯者!」

「おいおい、七人がかりで『雑魚の斥候職』ひとりを囲んでる奴らのセリフとは思えんねえ」

 挑発するように正行は笑った。

 もちろん、斥候職を下に見ていることをわざと皮肉っている。

「!」

 その正行の発言に何かを感じたらしい者が、ふたりほど武器をおろした。ひとりはおそらく斥候職の少年で、そしてもうひとりは、弓を持っているが回復職らしき少女だった。

 おそらく日頃、直接戦闘力が低い事で色々言われているのだろう。

 正行は、そのふたりが戦意喪失した事をきちんと確認したうえで、さらにそれ以外の者に告げた。

「それで?きくが本当にやる気なのかい?」

「……決まってるじゃねえか。手前の屁理屈が通じるかどうか、冒険者らしく決めてやんよ。この剣でな!」

 カッコイイつもりなのだろうか?

 安物の剣を掲げて陶酔しているさまは、あまりにも滑稽(こっけい)だった。

 男のひとりがニヤニヤ笑った。自分たちの勝ちを確信しているようだ。

「おめえシーフだろ。たかがコソドロ(・・・・)の分際で、本物の戦士様や魔法使いに歯向かって、生きて帰れると思ってんのか?ああ?」

「はいはい、雑魚の寝言はもういいから、やるならやんなさい、お・馬・鹿・さん?」

 正行は首をふり、そしてバカにするように、いや完全にバカにした口調で言い切った。

 そしてそれが、すでに武器を抜いていた五人を怒り顔に変えた。

「いい度胸だ手前(てめえ)!」

「おう安心しろ、おまえを殺して迷宮に食わせたら、マヌケな斥候野郎はひとり粋がって雑魚モンスターに殺されたって報告してやるからよ!」

「そうそう、俺たちがせっかく全力で援護(・・)したのにってなぁ!」

「ぎゃははははっ!」

 そういうと、ひとりが動き出した。

 大剣もおぼしき大きな剣を豪快に振り回すその男は、そのまま服ごと正行を真っ二つにせんと斬りかかったのだが。

 

「──っ!?」

 

 斬りつけたはずの場所に正行はおらず、正行に押さえつけられていた戦士に全力で叩きつけられた。

「ぎゃあああっ!」

 戦士の鎧は簡単には斬れない。

 だが、そもそも大剣とはその大質量も武器だ。斧やハンマーほどではないが、軽金属の鎧なんぞ凹ませてしまう事もある。

 それがまともにヒットした。

 戦士の鎧は一撃で凹み、しかも骨が砕ける鈍い音までした。

「いぎゃあああっ!」

 仲間のあげるものすごい悲鳴に周囲は一瞬、混沌に陥ったが、それも長くは続かなかった。

 なぜなら。

「ぎゃっ!」

「いぎっ!」

「こ、この、ぐぉっ!」

「ぎゃあああ、痛い、痛い痛いいたいぃっ!」

 二秒とたたないうちに四人が攻撃され、倒れ、動けなくなった。

「……あ……あ……」

 ひとりの女戦士は攻撃を受けなかったが、へなへなと床に崩れ落ちた。

 そしてその下から、臭気を伴う液体が床を流れた。

 

「ふう、やれやれ」

 正行はためいきをついた。

「ま、これくらいにしといてやるよ。そんなんでも一応はまだ、同じ冒険者だからな」

「……まだ?」

 さっさと帰り支度をはじめた正行に、さっきの回復職の女の子が声をかけた。

 斥候職の男の子もいっしょだった。

 正行は「ん?」と彼らの方を見て、そして言った。

「君らが初級ランクから上にいこうと思ったのはなんのためだい?」

「あ」

 そう。

 初級の依頼をこなしてるだけではお金もなかなかたまらないし、それに初級用の依頼は、いかにも冒険者という華々しいものが皆無なのだ。

 おそらく、戦闘職メンバーが望み、彼らはそれに逆らえなかったのだろう。

 正行はもちろん、そういう弁護めいたことは言わない。

 でも女の子は正行の言わない部分を察したようだ。

「あ、はい、そうです。上に行きたいという声があがりまして」

 自分は言ってないですとしっかり主張している。

 その、かすかな主張を心地よいと感じ、正行は微笑んだ。

「なるほどね。で、原則として二度と上に上がれないって言われて、それでも君たちの好戦的なお仲間は冒険者を続けると思うかい?」

「それは……無理でしょうね」

「だね」

 少年と少女はためいきをついた。

「君らの中に、もしかしたら俺やギルドを見返したいって気持ちがあるかもしれない。あるいは俺に対する私怨とかもね。

 だけど、俺はそれこそオススメしないな。

 そんな事してるくらいなら冒険者なんてやらないで、それぞれの適職にきちんと着くべきだよ。それがお互いのため、みんなのためさ」

「適職、ですか?」

「ああ」

 正行はうなずいた。

「彼らに冒険者の適性がないのは事実のようだけど、それぞれに適性は別にあるんだぜ?

 俺がざっと見たところだけど……衛兵、狩人、ああ、そこの彼は商才があるね。それから」

 正行は、鎧を壊されて苦しんでいる男を指さした。

「そこの彼には神官の資質がある。知ってた?」

「キールがですか?まさか?」

 首をかしげる女の子に正行は言い切った。

「神聖魔法の気配がするんだよ。

 たぶんだけど、彼は気付いてないけど主神に声をかけられているはずだよ。だから魔法も使ってないのに神聖魔法の気配がするのさ。

 そこまでの素質があるのに、もったいないじゃないか」

「そうなんですか……そういうのって、わかるもんなんですか?」

「どうやって調べてるのかは内緒だけどね」

 正行は肩をすくめた。

「というわけで俺は帰るよ。ここからなら彼らでも、じきに回復して自力で戻れるだろうしね。君らはどうするんだい?」

「僕らは」

「連れてってください!」

 少年は躊躇していたが、かわりに少女が言い切った。

 正行はふたりを見て、そして言った。

「もしかして離脱を考えている?」

「私たちなんて、この人たちには大した戦力じゃないでしょうから」

 その皮肉めいた顔が、今までの彼らの扱いを物語るようだった。

「仲間なんだろう?」

「同郷の仲間でした(・・・)……でも」

 少女は言いかけたが、そこで少年が肩を叩いた。

 そして少年の方が言った。

「冒険者になってからこっち、僕たちの関係は対等ではなくなりました。最初は対等な仲間だったのに。

 いつのまにか戦闘力の低いものには分前を減らす、なんてことが問答無用に決められて。文句を言うと武器で脅されたりしました。

 気がついたら、僕らは武器の整備やら細かいお金でせいいっぱいって感じになって……さらにパシリまでやらされてました」

「……」

「この間なんか、酔っ払ったこいつらがエメに服を脱げって言い出して。

 僕が逃したんですが、ふざけんなって歯が折れるまで殴られました」

「……そうか」

 予想と大差ない、いやもっとひどい話に正行は眉をしかめた。

「わたしたち……この先どうなるにせよ、この人たちと一緒はもう無理です」

「そりゃそうだろうな」

 正行は少し考え、ためいきをついた。

「それ、そのまま帰ったら受付かギルドマスターに伝えればいい。内輪のことだから犯罪として立件するのは難しいだろうけど、移転の理由としては充分すぎるほどだからね」

「そうなんですか?」

「そうだよ……だって『意見の相違』とか『不平等な分前』っていうのは、それだけでチームの機能が阻害されたり、大事な局面で死人すら出るんだぜ?

 だからギルドでは、そのあたりをきちんと法整備してある。

 これは誰のためでもない。

 君たちも、ギルドも、そして、そこに寝ている彼らも含めた全員に良かれと決められた事なんだ」

「そうなんですか……」

 実のところ、対人関係処理はギルドの大事な仕事のひとつだ。

 とくにメンバー移転はよくモメる。そして、少しでも生き残りを増やし、仕事を円滑にすすめるためには、揉め事の調整は必須。

 素材ひきとりや市場との調整と並び、ギルドの重要な仕事のひとつである。

 そしてきっぱりと言った。

「いろいろ事情も結論もあるだろうけど、ギルドは君たちの決断を尊重するよ。我々と、君たちと、そして、そこにいる君らもふくめ、全てのよりよい未来のためにね」

「はい」

「はい」

 潰れている連中は返答しなかったが、二人は明快に返事した。

「よし、じゃあ君らふたりは責任もって俺が受付まで送り届けるから、あとは受付さんに従ってくれ。いいね?」

「はい」

「はい」

「よし、いこう」


 


 ◇ ◇ ◇


 

 

 マサユキの名前は後年にはほとんど残っていないが、彼の生きていた時代のギルド史には散見できる。いくつかの支所の閉鎖や立ち上げに関わっているからだ。

 また、初心者の育成や見極めのしごとを依頼されることもよくあった。特に晩年はそういう仕事が増えて、彼のいる支所ではヒヨッコのチームにも爺さんと慕われていたという。

 また、マーカス支部で長年受付をやっていた女の子が事実上の妻であったという説が有力だが、救護員のシスターととりあっていたという話もあり、どちらが正しいかは不明である。


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