バンドをするという話。(完)
俺たちは舞台裏にいる。
俺たちの出番は次だからだ。あー緊張する。
ちなみに今は六番の人達が歌っている。
正直、一番から六番の人達はめちゃ上手い。
一番は学校のイケメングループのロックバンド。二番は美人グループのアイドル風。
三番は先生達の合唱で、四番はアホな奴らのモノマネ歌。
五番は見事なデュエットだった。
今歌っている六番は、シンガーだ。
そのとき、パチパチと拍手の音が聞こえた。
六番が終わったのだ。
永海は案の定震えている。
「じゃあ、ちっちゃい頃よくやってたあれ、やろうぜ!!」俺は提案してみた。
「いいぜ!」と、雷。
「うん!久しぶりね!」と、咲。
「いいともさ!」と、夢。
「うん……。」と、永海。
俺たちは自然に円になるように並び、円の中心で手を重ねた。
「願え!俺たちはバンドも出来る!」
「願え!」「俺たちは」「バンドも出来る!」
「よし!行こう!!」
このときは、既に永海の震えはなかった。
俺たちが舞台に足を踏み入れたとたんに、
「頑張れー!」「応援してるわー!」
などと、応援の声が聞こえた。凄く嬉しかった。
「1.2.123!」
俺の掛け声と同時に、演奏が始まる。
それぞれの楽器の音が重なり合い音楽となる。
永海も……ちゃんと出来ている。
ここで、咲の歌が入る。
恋というのは
人に生まれた特権で
恋というのは
自分を見つめること
好きな人には「好き」と
伝えることが難しい
でも、俺は言う
「好きだ」
変な奴だと思われても構わない
だってこれが俺の気持ちだから
でも、君は言う
「ごめん」
嫌われても構わない
だってこれが私の気持ちだから
失恋なんて、付き物さ
だから俺は前を向く……
この歌は、親父の曲だ。
小さい頃からよく聴いていた為、歌詞を覚える必要はなかった。
てか、咲のやつ、色目使ってやがる。
「フューッ!!」「最高だぜー!!」
こんな声が聞こえた。
こうして、〝夏休みフェス〟は大盛況の内に幕を閉じたのだった。
片付けをしていると、空音先輩がやって来た。「凄くよかったわ!!あなた達、最高よ!」と言ってくれた。
俺は「ありがとうございます!」と、言い、
咲は「また出たいです!」と、言い、
雷は「最高です!先輩!」目がハート。
夢は「疲れましたー!!」本当は疲れてなさそう。
永海は「またお願いします。姉さん。」と言った。
こうして、この依頼は達成されたのだった。