二人は勇者。その4
二人の勇者はとーっても強くて簡単に三人を助けられたとさ。
めでたし、めでたし。
こんな感じで終われたらいいのになぁ……。
だけど人生ってやつはそんなに簡単では無い。
「おい! 動くなよ! 動いたらこの女がどうなるかわかるよなぁ!」
リーダーは咲を掴み上げ、首にギラリと光る鋭利な物体を当てる。
「やめろっ! 咲に触るなっ!!」
鋭利な物体とは……もちろんナイフだ。
大切な家族がピンチなのに、動けなかった。
人質を取られているのもあったが、怖かった。
そんなとき、雷が俺の耳もとで囁く。
「優。何か重たくて、いらないもの持ってるか? 」
「水が入ったペットボトルぐらいだ。」
「十分だぜ。優、俺に任せろよ!」
雷はペットボトルを天井に向かって投げた。
リーダーの視線も自然とペットボトルに移る。
雷はタイミングを見計らい、走った。
俺も人質の三人の元に走り、夢と咲の口のテープを外す。
「うおぉぉぉぉ! リーダーっ!!」
「!! クソッ!!」
雷は地を蹴り、リーダーにパンチを放つ。
リーダーは、ナイフを振り上げる。
ゴキャッと気味の悪い音が倉庫内に響いた。
永海が視線を彷徨わせながら、呟く。
「嘘……嘘……絶対! 嘘よ……」
夢と咲は同時に叫ぶ。
「「何でっ……こんなことになっちゃうの!?」」
「あ……あ……あ……」
「「「「雷っ!! 返事して!!」」」」
俺たちの前には、カッターシャツを紅に染め、地面に倒れる雷がいた。
雷が投げたペットボトルが落ちてきて、その場の空気を震わせた。




