「俺は二人とも平等に愛せる!」と言われましても
私は目撃してしまった。校舎裏、婚約者のマタドリーが女性とハグしているところを。ハグどころか、唇と唇を重ね合わせている所を。餌を与えられた魚のようにパクパクと。
「……マタドリー様、何をされているのですか?」
私の声にビクリと飛び跳ねるマタドリー。彼は急いで女性から離れる。一緒にいた女性はクラスメイトのルカだった。ルカは特に悪びれた様子もなく「ごきげんよう」と私に言った。
「ち、違うんだ!」
「一体何が違うと言うのですか?」
「これはその、体調が悪くなった彼女を助けてて」
「体調が悪くなった人を助けるのに接吻が必要なのですか!?接吻などしていないと言い張るおつもりですか!?」
「それは、その」
しどろもどろなマタドリー。面倒くさそうに私たちを眺めるルカ。
「とりあえず、我が家へ婿入りの件は考え直させていただきます」
「そ、そんなこと言うなよぉ!俺は二人とも平等に愛せる!愛せるからぁ!」
「……二人とも平等に愛せる、ですか」
「そ、そうだよ!俺は二人の事を本気で愛しているんだ!」
言い訳を繰り返し、あろうことか浮気を止める事もしないなんて。呆れて物も言えない。私はこんな男と婚約をしていたなんて。
「承知いたしました。――でしたらなおさら婚約破棄はしないといけませんね」
「へ?どうして!?」
「だってルカ様とマタドリー様は婚約されていないではないですか?――平等にするとおっしゃるのでしたら、前提の条件も整えるべきですわよね?」
「そ、それはその……」
「それにルカ様は別にハロルド様という婚約者がおられますよね?なので私も他の方と婚約いたしますわ」
「なっ!そんな事するな!だって婿入り出来なきゃ俺は――」
「ですが、平等に愛するのでしょう?言ったのはマタドリー様ではありませんか?」
「……そ、そんなに言うなら好きにしたらいいじゃないか!俺はルカと婚約することにするから!」
マタドリーは顔を真っ赤腫れ上がらせて、そう怒鳴った。好きにすればいいじゃない、と私が言う前に、彼の隣で黙っていたルカが口を開いた。
「嫌ですわよ。あなたはあくまで遊び相手。私はハロルド様と婚約いたしますし。――こんな面倒な事に巻き込まないでほしいわ。もうこの関係も終わりにしましょう」
「――そ、そんなぁ!」
「では、私もルカ様に習って別の方と結ばれることにいたしますわ」
「――そ、そんなぁ!待ってくれよ二人とも!」
マタドリーは情けない声を上げ、とりあえず近くにいたルカの肩をつかんだ。ルカは鬱陶しそうに振り払うが、何度も何度もマタドリーは手を伸ばす。
私はそんな彼らからゆっくり距離を取る。
「――そうそう、ルカ様にも一つ。ここ、二階のあの位置から丸見えでしてよ。今も誰かこちらを見ておりますし。……ってあれ?もしかしてルカ様の婚約者、ハロルド様ではありませんか?これは大変ですわね。では私はこれにて失礼いたしますわ」
私の台詞に「早く言いなさいよ!あんたは早く離せよ!」と怒鳴り声を上げるルカ。その怒鳴り声にも負けず食らいつくマタドリー。案外お似合いカップルかもね。
私は彼らに背を向け、ゆっくりとその場を後にした。
最後まで読んでいただきありがとうございます!少しでも面白いと思ってくださったら、ブックマークと下の☆で評価をしてくださると嬉しいです!
応援宜しくお願いいたします!




