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「俺は二人とも平等に愛せる!」と言われましても

掲載日:2026/06/23

 私は目撃してしまった。校舎裏、婚約者のマタドリーが女性とハグしているところを。ハグどころか、唇と唇を重ね合わせている所を。餌を与えられた魚のようにパクパクと。


「……マタドリー様、何をされているのですか?」


 私の声にビクリと飛び跳ねるマタドリー。彼は急いで女性から離れる。一緒にいた女性はクラスメイトのルカだった。ルカは特に悪びれた様子もなく「ごきげんよう」と私に言った。


「ち、違うんだ!」

「一体何が違うと言うのですか?」

「これはその、体調が悪くなった彼女を助けてて」

「体調が悪くなった人を助けるのに接吻が必要なのですか!?接吻などしていないと言い張るおつもりですか!?」

「それは、その」


 しどろもどろなマタドリー。面倒くさそうに私たちを眺めるルカ。


「とりあえず、我が家へ婿入りの件は考え直させていただきます」

「そ、そんなこと言うなよぉ!俺は二人とも平等に愛せる!愛せるからぁ!」

「……二人とも平等に愛せる、ですか」

「そ、そうだよ!俺は二人の事を本気で愛しているんだ!」


 言い訳を繰り返し、あろうことか浮気を止める事もしないなんて。呆れて物も言えない。私はこんな男と婚約をしていたなんて。


「承知いたしました。――でしたらなおさら婚約破棄はしないといけませんね」

「へ?どうして!?」

「だってルカ様とマタドリー様は婚約されていないではないですか?――平等にするとおっしゃるのでしたら、前提の条件も整えるべきですわよね?」

「そ、それはその……」

「それにルカ様は別にハロルド様という婚約者がおられますよね?なので私も他の方と婚約いたしますわ」

「なっ!そんな事するな!だって婿入り出来なきゃ俺は――」

「ですが、平等に愛するのでしょう?言ったのはマタドリー様ではありませんか?」

「……そ、そんなに言うなら好きにしたらいいじゃないか!俺はルカと婚約することにするから!」


 マタドリーは顔を真っ赤腫れ上がらせて、そう怒鳴った。好きにすればいいじゃない、と私が言う前に、彼の隣で黙っていたルカが口を開いた。


「嫌ですわよ。あなたはあくまで遊び相手。私はハロルド様と婚約いたしますし。――こんな面倒な事に巻き込まないでほしいわ。もうこの関係も終わりにしましょう」

「――そ、そんなぁ!」

「では、私もルカ様に習って別の方と結ばれることにいたしますわ」

「――そ、そんなぁ!待ってくれよ二人とも!」


 マタドリーは情けない声を上げ、とりあえず近くにいたルカの肩をつかんだ。ルカは鬱陶しそうに振り払うが、何度も何度もマタドリーは手を伸ばす。

 私はそんな彼らからゆっくり距離を取る。


「――そうそう、ルカ様にも一つ。ここ、二階のあの位置から丸見えでしてよ。今も誰かこちらを見ておりますし。……ってあれ?もしかしてルカ様の婚約者、ハロルド様ではありませんか?これは大変ですわね。では私はこれにて失礼いたしますわ」


 私の台詞に「早く言いなさいよ!あんたは早く離せよ!」と怒鳴り声を上げるルカ。その怒鳴り声にも負けず食らいつくマタドリー。案外お似合いカップルかもね。

 私は彼らに背を向け、ゆっくりとその場を後にした。

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貴族子弟ってまわりに家人が居ることが多いから他人の視線に緩いのかね〈中庭での逢瀬
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