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ドワーフの娘 焔の旅鍛冶-旅立ちとドワーフの宝  作者: ま〜ち


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6 ドワーフの宝がある部屋にて

 リコと話しているうちに、通路の奥の門に着いた。


 門は、もともとは黒だったんだろうなと思う。

 いたるところに色が剥げて灰色になっているけれど、ドワーフ王国の技術のおかげか、門は立派にそこに立っていた。

 まるで「お前らはここまでだ」と言わんばかりの圧を感じる。

 門には何か文字が書かれているみたいだったけど、よく見えなかった。

 多分私が知らない言葉。古い言葉で書かれているみたい。


 「開けるよ、ミーシャ」


 私の方を見て、硬い口調でリコが言った。

 その顔も、どこか緊張していたけど、楽しそうだった。


 「うん。行こうか」


 心臓の鼓動がかつてないほど、早くなる。頭に鼓動が響いて、目がチカチカする。

 リコが門に手をやり、少しずつ押して開けていく。恐れの門か、それとも希望の門か。

 どちらなのか分からないけど、胸がざわついた。

 嬉しいのか、それとも怖いのか。


 だけど、私はこういう冒険したかったのだ。


 金属が地面とこすれる音とともに、リコが片方の門を押し開けた。門を開けた音が反響して響き渡り、空気がより一層、冷たくなった気がした。

 開けちゃいけない宝箱を開けたような、そんな雰囲気がした。

 門の先には、広間が静かに広がっていた。

 私が一歩踏み込むと、土と鉄の臭いがした。

 入った瞬間、体中の毛が逆立つような寒さと圧がのしかかった。

 部屋の奥には台座があり、その台座に一振りの剣が突き刺さっている。

 両脇には青白く灯る炎。部屋の光源は、その炎だけのようだった。

 炎は右に左に不規則に揺れていて、時折火の粉を飛ばす。

 青白い炎をみた時、まるで鞴で炉の温度を上げた時の熱気が脳裏をよぎった。

 少しの間、ゆらゆらと揺れる青白い炎を見ていたら、小さいころの記憶が急に鮮明に蘇る。


 あれは遠くから親方の鍛冶仕事を見ていた時だった。


 親方に「綺麗だね、この青白い火」と言ったら、真剣な顔でこう言われた。

 「火を灯せ、ミーシャ。たとえそれが暗闇の中、一人でいたとしても。闇を恐れるな。暗闇の中、火の光を頼りに前へ行け。ドワーフの教えだ。覚えておけ」

 あのとき、私はなんて返したっけ。

 「うん」だったか、「へえ」だったか。

 もう遠い記憶だから覚えていないけど、親方が教えてくれた言葉は覚えている。

 あの時はなんとなく聞いていたけど、今だったら少し分かる気がする。

 誰に何を言われようと、どんな状況であっても、私は冒険がしたい。世界をみて、多くのものを見てみたい。

 だってこの胸の高鳴りが、そう言っている。私の胸の中から炎が出てくるみたいに体が熱くなる。

 視線を炎から剣へと戻す。

 灯りはその青白い炎だけで、余計に剣が映えて見えた。

 

 「あの剣が、ドワーフ王国の宝……なのかな? 試練があるって言ってたけど、謎解きのことだけだったのかな」


 リコは遠い先にある剣を見つめ、周囲を見回しながら何かほかに試練があるんじゃないか、罠があるんじゃないかと探しているように見えた。

 そんなリコを横に私は黙って、一歩前へ足を踏み出した。暗闇の中。

 少しでもドワーフの宝の近くへ、前へ。

 最初はゆっくりと。少しずつ歩調を速めながら。


 「ちょっと待ってよ、ミーシャ!危ないよ!」


 後ろからリコが焦ったように言っていたけど、気にしない。

 ただ、前へ。

 リコが小走りに追っかけてきている音がする。

 私は歩調を落とさずに、剣のもとへ向かった。


 気づけば、いつの間にか剣の前に立っていた。


 青白い炎に反射する両刃の片手剣をじっと見る。

 右へ、左へと視線を移しながら。

 綺麗な刃だな、とか、柄は地味な形だな、とか。

 別にどこでも売っているような剣だった。刃も衛兵さんが持っているような長さ。


 握りは動物の皮で作られていて、鍔もどこにでもあるような形をしていたけど、

それでも綺麗だなって思った。無駄な装飾もない、地味な剣かもしれないけど、私は好き。親方もこんな剣を作るし。

 この部屋の雰囲気とか青白い炎がそう見せていたのかもしれないけど。

 壁画の女神様が持っていてもおかしくないくらい。


 「勇者の剣です!」って言われても、私は信じる。


 「綺麗な剣だなあ」

 ため息とともにそう言った。

 後ろから歩いてくるリコの足音が聞こえてくる。

 この剣がドワーフの宝だよって教えないと。

 リコが来るまでもう少し。

 静寂を占めた広間で剣の前で再びため息をついた。


 「ありがとうよ! ねえちゃん! 久しぶりに言われたぜ!」


 台座の剣から場の空気を破るような明るい声が返ってきた。

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