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ドワーフの娘 焔の旅鍛冶-旅立ちとドワーフの宝  作者: ま〜ち


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12/14

12 朝食の場にて

 目を開けると、空が白み始めている時間帯だった。


 ベッドの近くにある窓から朝の光が差し込み、まぶしさに目を細める。

 外の空気は澄んでいて、風もなく、今日も昨日のように良い天気になりそうな予感がした。

 外からは、小鳥たちのさえずりが聞こえてくる。

 ベッドから跳ねるように起きて、腕と足に痛みがないことを確かめた。

 下の階からは、歩く音と何かを焼く音が聞こえてきた。

 今日の朝食当番は親方で、昨日は私だった。

 こんなふうに交代でやることも、明日からはもうないんだろうなと思うと、少し寂しくなる。

 親方が朝食の準備をしている焼く音が次第に強くなり、香ばしい匂いが部屋まで漂ってきた。


 そろそろ行かないと――そう思って部屋を出る。


 いつも通り、毎日やっているように、私は朝食の手伝いをするため、親方のいる台所へ向かった。

 そして、この“いつも通り”の日常が、今日で終わる。

 終わらせたくない気持ちと、新しい門出へのワクワクがぶつかり合って、何とも言えない気持ちになる。

 でも、私は前へ進みたい。


 台所へ向かう途中、そう思った。


 「おはよう、親方」

 「おはよう。おい、皿取ってくれ」


 窯の前でフライパンと木べらを持っている親方。

 肉を焼く音と匂いがした。卵も片手に持っているから目玉焼きを作ってくれるみたい。

 「うん。はい」

 戸棚から皿を二枚渡すと、親方が少し渋い顔をした。

 どうしたんだろうと思っていたら――


 「もう一枚だ」

 あ、そうか。リコの分も必要だった。

 いつものように、二枚だけ用意してしまっていた。


 居間に行くと、そこにはリコと、壁に立てかけられているアークがいた。

 リコはすでに座っていて、私の姿を見た途端、立ち上がって周囲を見回していた。

 “何かしなくちゃ”という雰囲気が伝わってくる。

 「な、何か手伝おうか?ミーシャ」

 私に近寄ってくるリコの気遣いは感じたけど、もう運ぶだけで、手伝うことは何もなかった。

 「何もないよ。座ってて」――そう言おうとした瞬間、それを遮る声が響いた。


 「いいから座ってろよ!人族の少年!オタオタしてるなって!!お前が手伝っても邪魔なだけだって!」

 うるさい剣だ。

 私は剣の方を睨むと、剣もそれに気づいたのか、刀身を少しこちらに向けてきた。

 こいつ、自分で少し動けるのか。そういえばあの広間にいた時も少し動いてた気がした。あれは気のせいじゃなかったのか。


 「なんだよ、ねえちゃん。そんなに熱く見つめるなよ!俺に惚れたのか?照れるぜ」

 「リコ、座ってて。もう持ってくるだけだから」

 無視してやった。


 「そんな、愛想がないねえちゃんもまた良い!」


 本当に炉で溶かしてやろうか、こいつ。だけど少し笑ってしまった。


 「朝から騒がしいな。ほれ、ミーシャ。お前も座れ」


 親方が台所から私の分の皿を持ってきて、手渡してくれた。

 みんなが席につき、朝食を食べ始めた頃、私はリコに目をやった。気づけ、と気持ちをこめながら。そしたらリコが私の目線に気づいた。


 「ミーシャ、どうしたの?」

 「私も行くから」


 またぶっきらぼうに言ってしまった、リコに悪いことしたかな。でもきっとリコなら気にしない。


 私は冒険者になる。前へ進む。


 違う町に行って、違うものを見て、珍しい遺跡やダンジョンに行ってみたい。

 そして、親方が幼いころに話してくれた物語を、今度は私が親方に語ってみたい。

 昨日、ベッドで天井を見ながら眠くなるまで考えていたら、そうしたいと思うようになった。


 「…うん。分かった」

 「そうか。荷物は玄関にあるからな。あと剣は研いでおいたが、確認しておけ」


 リコが静かに私に伝えたあと、親方は間を置かずに応えた。

 私の荷物を準備してくれていたみたい。

 きっと昨日、私の部屋を出たあとに用意してくれたんだろうなと思う。

 私が眠った後、皮の背嚢を玄関に置いたあと、私の剣を研いでくれたんだ。


 あの大きくて無骨な、職人の手で。


 そう思ったら心の中心から、温かいものがじんわりと染み渡ってくる。

 少しずつ、緩やかに、暖かくなっていく。

 しばらく、みんな黙って朝食を食べていた。

 外からは、さっきよりも多くの小鳥の声が聞こえてきて、一日の始まりを告げていた。


 今日も一日、穏やかな日になるんだな――そう思った。


 私の焔は、昨日の冒険で灯された。

 今日からは、その灯りを頼りに、暗闇を歩きはじめる。

 そんな気がした。


 「えー、ここで余興として、一曲歌ってもよろしいでしょうか!!」


 この場を壊すような明るい声が響いて、私はまた剣を睨んだ。

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